メタボリック・シンドロームとは
公開日:2016年7月25日 09時00分
更新日:2023年8月 2日 11時23分
メタボリック、日本語に訳すと「代謝」
太っている人の代名詞として、メタボリック・シンドロームやメタボというカタカナことばが新聞やマスコミ等によく登場します。メタボリックってなんだろう?メタボってなんだろう?
じつは、メタボリック・シンドロームを日本語に訳すと「代謝」。これも一般にはあまり使われることばではありません。
代謝とは
いきものは、昨日とまったく同じからだではありません。食物から栄養素を取り出し、生きて活動していくために必要なエネルギーを取り出して利用していきます。また、必要な成分を作り出し、体を維持・成長させていきます。
このようなしくみを「代謝」、英語でいえば「メタボリズム」というのです。たとえば、糖や脂肪を分解して、活動のためのエネルギーを得ています。また、余ったエネルギーは脂肪の形に変えられて、飢餓に備えて貯蔵されるのです。
代謝の安定性が壊れてきた状態がメタボリック・シンドローム
私たちは1日に2,000kcalくらいのエネルギーを食物から得て、2,500mlの水を飲み、それらを使って活動しています。ということは、1年間になんと70万kcalのエネルギーを食べ、1,000lの水を飲んでいるのです。
しかし、1年前の自分とあまり変わらないのではないでしょうか?体重もあまり変動がないのが普通です。このように、生体の「代謝」機構は、生体をできるだけ一定に保とうとしているのです。
メタボリック・シンドロームはこの代謝の安定性が壊れてきた状態を指します。体重が増加する、脂肪や糖などを一定に保つしくみに変調をきたす、さらには水分代謝等も乱れ、血圧にも悪影響がでてくる。こんな状態のことをいいます。
脂肪細胞の断面像をご覧ください(図)。食べすぎ・運動不足になると、余ったエネルギーは「中性脂肪(トリグリセライド)」となって、脂肪細胞のなかにシッカリ貯め込まれます。脂肪細胞がどんどん増えてくると、ぺらぺらに圧迫された細胞質からさまざまな物質が放出されるようになります。
たとえば、TNF-αという物質はインスリンというホルモンの働きを阻害し、糖尿病をおこしやすくするものです。そのほか、血圧をあげるものやコレステロールを高くする物質など、さまざまな作用をもつ物質が放出されます。
メタボリック・シンドロームの判断基準
このようにして、内臓脂肪がふえると、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)になりやすくなり、これらの状態が重なることによって最終的には心筋梗塞や脳梗塞の危険度を高めるのです。
メタボリック・シンドロームの診断基準を表に示しました。あなたのウエストまわり、だいじょうぶですか?
診断項目 | 基準値 | |
---|---|---|
必須項目 | ウエスト周囲径 (内臓脂肪面積 男女とも≥100cm2に相当) |
男性≥85cm 女性≥90cm |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 高トリグリセリド血症 かつ/または 低HDLコレステロール血症 |
≥150mg/dl <40mg/dl |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 収縮期(最大)血圧 かつ/または 拡張期(最小)血圧 |
≥130mmHG ≥85mmHG |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 空腹時高血糖 | ≥110mg/dl |
- ウエスト径は立位で軽く息を吐いた状態で、おヘソの高さではかる。
- ヘソが下方にさがっている場合は肋骨下縁とこし骨の中間で測定。
- 高脂血症、高血圧、糖尿病に対する薬物治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める。
- 女性の場合、ウエスト周囲径が73cmを超えると、要注意であるともいわれている。