糖尿病の運動療法とは
公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2020年2月25日 09時37分
糖尿病とは
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度を調節する働きがあるホルモンのインスリンが不足することや、インスリンの作用が低下することによって高血糖が慢性的に続く疾患のことです。
糖尿病の種類
糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病、妊娠糖尿病があります。
1型糖尿病は自己免疫などが原因でインスリンの分泌自体が不足するもので、インスリンの自己注射が必要となります。2型糖尿病は遺伝的な要因に、肥満・食べ過ぎ・運動不足などの生活習慣が合わさることで発症します1)。
また、妊娠糖尿病は妊娠に伴ってみられる糖尿病です。
糖尿病の状況
日本人の糖尿病のほとんどが2型糖尿病であり、厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、糖尿病が強く疑われる者は約1,000万人と推定されており、糖尿病の可能性を否定できない者も約1,000万人と推定されています2)。平成9年以降増加していましたが、平成19年以降減少しています。
糖尿病の三大合併症
糖尿病によって微細な血管が障害されると網膜症・腎症・神経障害の三大合併症を伴うことも多く、失明や人工透析、足の切断など重篤な状態となることもあります。動脈硬化が進行して大きな血管が障害されると、心臓病や脳卒中のリスクも高くなります。糖尿病の初期は自覚症状のないまま進行し、重篤な合併症を引き起こすため、糖尿病の発症前の予防と早期発見による血糖コントロールや合併症予防が大切です1)。
糖尿病の運動療法
2型糖尿病の治療は運動療法・食事療法・薬物療法が基本となります。食事療法と運動療法をともに行い、肥満の解消や血糖コントロールの改善、血圧や脂質代謝の良好なコントロール、合併症の予防、治療や進展の抑制を目標とします3)。
骨格筋のエネルギー源として糖質と遊離脂肪酸が使われるので、運動は全身を使う有酸素運動が適しているとされています。運動開始から10分以降に糖質がエネルギー源として利用され、15分以降で遊離脂肪酸が利用されるので、20分以上の運動時間が必要です。運動強度は糖質と遊離脂肪酸の両方が骨格筋のエネルギー源として使われる中等度の運動強度(「ややきつい」と感じる程度の運動で、心拍数は1分間に100~120拍)が適しています。糖尿病患者の糖代謝の改善は運動後12~72時間持続するので、運動頻度としては週3~5日が必要です。食後1時間後に行うと食後の高血糖が抑えられるとされています3)。
仕事が忙しく、運動の時間が確保できない人は、自動車を利用せずに徒歩・自転車で移動することや、エレベーターやエスカレーターではなく階段の上り下りを行うなど、日常生活の中で運動を取り入れていくようにします4)。
糖尿病における運動療法の効果
有酸素運動を行うことによって血糖コントロール、インスリン抵抗性、心肺機能、脂質代謝が改善し、血圧が低下することが言われています。また、最近ではレジスタンス運動が身体活動に必要な筋力や筋肉量を増強させ、インスリン抵抗性を改善し、血糖コントロールを改善すると考えられています。有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせて行うとさらに効果が得られます。運動療法は食事療法と併用して行うことも重要です5)。
糖尿病の運動療法の種類
有酸素運動とレジスタンス運動が2型糖尿病患者に対する血糖コントロールに有効で、併用することでの効果も示されています5)。
有酸素運動はウォーキング、ジョギング、サイクリングなどがあり、レジスタンス運動は、自体重やチューブ、ダンベル、マシンを用いて行う筋力トレーニングがあります。運動前後には準備運動、整理運動を行うようにします5)。
運動の到達目標としては、できれば毎日運動することが望ましいとされますが、少なくとも1回につき20~60分間の中強度の有酸素運動を週に3~5回実施し、1週間で150分以上運動することがよいとされています。運動習慣のない人の場合には、日常生活の中で通勤時や買い物時に歩行を取り入れることなどから開始し、段階的に運動量、運動強度を増やしていきます5)。
糖尿病の運動療法の注意点
1型糖尿病で尿ケトン体陽性時(インスリンが欠乏して身体のPHが酸性に傾いているとき)は、運動は禁忌となります。運動療法を開始する前には、合併症の有無や程度などをメディカルチェックによって評価することが大切です。血糖コントロールの状態によっても注意が必要のため、主治医に運動の可否、運動の種類・運動強度・運動時間・運動頻度の指示を受けましょう。
インスリン注射や経口血糖降下薬を使用している場合は低血糖に注意が必要です。インスリン注射を行っている場合は運動や薬の量の調整が必要となるので主治医に確認しましょう。運動前、運動中には補食を行い、血糖が下がり過ぎないような工夫を行いましょう。運動を行う際は足に合った靴を選び、運動前後は足に異常がないかをよく観察します。体調がすぐれないときは運動を中止し、無理のないように運動を継続しましょう。
参考文献
- 日本臨床増刊号 身体活動と生活習慣病 糖尿病運動療法の実際 押田芳治 391-396p 日本臨床社
- 糖尿病診療ガイドライン2016 運動療法 日本糖尿病学会