骨粗鬆症予防の運動とは
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2023年12月26日 10時53分
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症の定義
世界保健機関(WHO)では、骨粗鬆症を「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱(ぜいじゃく)性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である1)」と定義しています。骨の代謝のバランスが崩れて、骨が弱くもろくなり、転倒や打撲、やがては抗重力姿勢をとるだけでも簡単に骨折してしまう状態です。骨粗鬆症は骨の強さや密度を示す骨密度を用いて診断されます2)。
骨粗鬆症のメカニズム
骨は、古くなった骨が破骨細胞によって吸収され(骨吸収)、骨芽細胞によって新たに骨がつくられる(骨形成)新陳代謝のサイクルによって保たれています。新陳代謝のバランスが崩れて、骨の形成よりも骨の吸収が上回る状態が続くと骨がもろくなってしまいます2)。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症は閉経後の女性に多くみられます。加齢によって男女ともに骨密度は減少しますが、女性で特に多いのは、骨を新しくつくる骨芽細胞を活発にするエストロゲン(女性ホルモン)が閉経後に激減することが原因として挙げられます2)。
骨はカルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラルで構成されています。カルシウムやマグネシウムが身体で不足することや、カルシウムの吸収に必要なビタミンDの摂取が不足すると骨の成長が促されず骨粗鬆症の原因となります。運動不足で骨に負荷がかからない状態であることも、カルシウムの利用効率を下げて骨密度の低下につながります3)。
骨粗鬆症の予防方法
骨粗鬆症の予防は食生活の改善と運動習慣を持つことです。
食事では骨の形成に必要なカルシウムを充分に摂取することが重要となります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)の概要」では1日のカルシウムの摂取推奨量は男性30~74歳で750mg、75歳以上では700mg、女性30~74歳で650mg、75歳以上では600mgとなっています。過剰摂取による健康障害を防ぐために摂取上限量は2,500mgと定められています4)(表1-1、1-2)。
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 200 | - |
6~11(月) | - | - | 250 | - |
1~2(歳) | 350 | 450 | - | - |
3~5(歳) | 500 | 600 | - | - |
6~7(歳) | 500 | 600 | - | - |
8~9(歳) | 550 | 650 | - | - |
10~11(歳) | 600 | 700 | - | - |
12~14(歳) | 850 | 1,000 | - | - |
15~17(歳) | 650 | 800 | - | - |
18~29(歳) | 650 | 800 | - | 2,500 |
30~49(歳) | 600 | 750 | - | 2,500 |
50~64(歳) | 600 | 750 | - | 2,500 |
65~74(歳) | 600 | 750 | - | 2,500 |
75以上(歳) | 600 | 700 | - | 2,500 |
妊婦 | ||||
授乳婦 |
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 200 | - |
6~11(月) | - | - | 250 | - |
1~2(歳) | 350 | 400 | - | - |
3~5(歳) | 450 | 550 | - | - |
6~7(歳) | 450 | 550 | - | - |
8~9(歳) | 600 | 750 | - | - |
10~11(歳) | 600 | 750 | - | - |
12~14(歳) | 700 | 800 | - | - |
15~17(歳) | 550 | 650 | - | - |
18~29(歳) | 550 | 650 | - | 2,500 |
30~49(歳) | 550 | 650 | - | 2,500 |
50~64(歳) | 550 | 650 | - | 2,500 |
65~74(歳) | 550 | 650 | - | 2,500 |
75以上(歳) | 500 | 600 | - | 2,500 |
妊婦 | +0 | +0 | - | - |
授乳婦 | +0 | +0 | - | - |
カルシウム・ビタミンDを多く含む食品
カルシウムが多く含まれる牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、小魚、豆腐や納豆などの豆製品、野菜類、海藻に多く含まれています。カルシウムの吸収を促すビタミンDはイワシ・さんま・サケなどの魚やキクラゲやシイタケなどのキノコに多く含まれています5)。
カルシウムの効率的な摂取方法
カルシウムやビタミンDだけでなく、カルシウムの利用効率を良くするためには食事からバランスよく栄養素を摂ることが大切です。1日3食、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂りましょう。メニューには主食・副菜・主菜を揃え、野菜や海藻、豆製品を主菜・副菜で摂り、牛乳や乳製品を適量摂るように心がけましょう3)。
ビタミンD合成のための運動と禁煙
食事とともに運動で骨に負荷をかけて刺激を加えること、日光に当たり、体内でのビタミンDの合成を促すことが骨粗鬆症の予防となります6)。喫煙は骨密度の低下を進めることが言われているので禁煙も大事です7)。
骨粗鬆症予防と運動の関連
骨は長軸方向に物理的な刺激が加わることで骨の強さが増加すると言われています。物理的な負荷が大きく重力がかかる運動の方が、骨密度が増えやすいことも言われています6)。
長期間の臥床が続くことで骨がもろくなり、転倒などで大腿骨や腰の骨などの大きい骨を骨折すると、腰痛や歩行障害をきたすこともあります。運動習慣を持ち定期的に運動を行うことがよいとされています6)。厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」では、運動習慣とは30分以上の運動を週2日以上行うことと示されています。運動器の機能を維持することが骨粗鬆症に伴う骨折の予防につながることから、歩行と同等以上の身体活動・運動に取り組み、身体活動量の維持・向上を目指すことも推奨されています8)。
骨粗鬆症予防のための運動の種類
骨粗鬆症予防の具体的な運動としては、重力が免荷される水中運動よりも重力のかかる陸上でのウォーキングやジョギングなどが適しています。軽いダンベルを持って自分の体重プラスの負荷をかけながらウォーキングを行うパワーウォーキングも効果的であるとされています。ウォーキングやジョギングは体内でのビタミンDの合成を促すために、日中に行うことがおすすめです6)。
筋力トレーニングも腱を介して骨に刺激が加わる運動ですので取り入れていきましょう。最初は自体重での筋力トレーニングから始め、慣れてくればウエイトマシンなどを利用して身体の部位ごとに筋肉を鍛えることもよいでしょう6)。