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生活不活発病とは

公開日:2016年7月25日 20時00分
更新日:2019年10月15日 10時18分

生活不活発病とは

 写真:生活が不活発でけだるそうにソファに座る男性の写真。

 生活不活発病とは「生活が不活発になった」ことが原因となり、あらゆる体や頭の働きが低下する病気です1)

 生活不活発病は、いったんはじまると悪循環をつくって進行していきます。まず、「動かない(生活が不活発)」ことにより、生活不活発病が生じます。そして、生活不活発病が起こることで、歩くことや身の回りのことなどの生活動作が行いにくくなったり、疲れやすくなったりして、「動けない」、「動きにくい」状態となります。「動けない」、「動きにくい」のでますます「動かない」ようになり、生活不活発病がいっそう進んでいくのです(図1)1)

図1:生活不活発病が進行する仕組みを示した図。動かないことにより動きにくい状態となり生活不活発病が進んでいくことを表す。
図1:生活不活発病進行の悪循環2)

生活不活発病の原因

 生活不活発病は、生活の仕方に変化が生じ、「生活が不活発」になることで起こります。生活が不活発になるきっかけは、人によってさまざまですが、以下のようなものがあります。

  1. 社会参加の低下
  2. 生活動作自体のやりにくさ
  3. 生活動作の量的制限

 心身機能の変化が原因で生活が不活発になることもありますが、心身機能の低下が直接的な原因ではなく、生活動作自体のやりにくさや量的制限が起こっています1)

1.社会参加の低下

することがない

 定年退職・転居・家族との同居・地震や台風・大雨などによる自然災害・親しい友人との別れなどの境遇の変化により、することがなくなった状態。

遠慮

 本当はやりたいことがあるけれども家族や周囲の目を気にして遠慮し、やりたいことをしない場合、本人の関係者が周囲の目を気にして本人が動くことを遠慮する場合。

2.生活動作自体の「やりにくさ」

病気のため

 脳卒中による片麻痺や膝痛などのために生活動作が行いにくいからできない状態。

環境の悪化

 地震や台風・大雨・洪水などによる自然災害によって道や避難所、仮設住宅などの環境が整備されておらず、歩くなどの生活動作が行いにくいからできない状態。

3.生活動作の量的制限

病気の後

 「病気の後は安静にしなければならない」という思い込みで、必要もないのに生活動作を自分で制限してしまう場合。

介護や支援の在り方

 代わりにしてあげることや補完的な介護や支援によって生活動作を自分ですることが減る場合。

季節の影響

 夏は暑く、冬は寒いので外に出ることが少なくなって動く機会が減る場合1)

生活不活発病の症状

 生活不活発病で最初に現れる症状は、長い道を歩くと疲れる、外が歩きにくい、立ちあがりにくい、座っているだけで疲れるなどの「生活動作の不自由さ・難しさ」です。生活動作は多くの心身機能から成り立っており、全身のあらゆる機能の低下が起こります2)

全身に影響するもの

  • 心肺機能低下
  • 起立性低血圧
  • 消化器機能低下
  • 食欲不振
  • 便秘
  • 尿量の増加
    • →血液量の減少(脱水)

体の一部に起こるもの

  • 関節拘縮
  • 廃用性筋萎縮・筋力低下
  • 廃用性骨萎縮
  • 皮膚萎縮(短縮)
  • 褥瘡
  • 静脈血栓症
    • →肺塞栓症

精神や神経の働きに起こるもの

  • うつ状態
  • 知的活動低下
  • 周囲への無関心
  • 自律神経不安定
  • 姿勢・運動
  • 調節機能低下

生活不活発病の早期発見

 生活不活発病は悪循環をきたして進行していくため、早く発見して早めに対応することが重要です。厚生労働省では、生活不活発病が起こりやすい地震や台風・大雨・洪水などによる自然災害災害時に、生活不活発病チェックリストの利用による早期発見・早期対応を推奨しています。

 生活不活発病チェックリストは「屋外を歩くこと」、「自宅内を歩くこと」、「身の回りの行為」、「車椅子の利用」、「外出の回数」、「日中どのくらい身体を動かしているか」、「歩くことなどが難しくなったか」の項目ごとに自然災害前と現在でそれぞれチェックし、自然災害前に比べて現在が1段階でも低下している場合は注意が必要であるとしています。要注意に当てはまる場合は保健師、救護班、行政、医療機関などに相談が必要です(リンク1 参照)3)

リンク1:厚生労働省 生活不活発病チェックリスト(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

生活不活発病の予防・改善

 生活不活発病の予防・改善は「生活を活発にすること」です。生活不活発病は、「社会参加の制約」が「生活動作の低下」を起こし、「心身機能の低下」を起こしたものです。生活不活発病の予防・改善では、「社会参加が活発になればなるほど」、「多くの生活動作を回数多く行うようになり」、「自然に体や頭(心身機能)を使う機会が増える」のです1)

 生活不活発病を改善するには、生活動作を不自由にしている原因のひとつである筋力低下を筋力トレーニングで改善すればよいのではありません。生活が不活発になることから起きているのですから、一日全体の合計の活動量を増やすことが大切です。生活を楽しみ、社会に参加して生きがいのある充実した生活を送ることで、自然とからだや頭を使っている状態をつくることが基本となります1)。人生の目的(社会参加)を持って動くことが大切なのです。

生活不活発病の予防・改善のポイントとして、以下のようなことがあげられます1)3)

生活不活発病の予防・改善のポイント

  • 少しずつでも歩く時間を設けるなど活発に動く時間を増やすこと
  • 杖や装具を工夫して安全に歩ける環境を整えること
  • 家事や趣味・楽しみなど、やりがいや充実感を感じられる役割や生きがい・社会参加の機会を持つこと
  • 安静第一・無理は禁物と生活動作を制限してしまわず、どれくらい無理をしてはいけないのか、どれくらい・どのように動けばよいのかを確認して取り組むこと

参考文献

  1. 「動かないと」人は病む 生活不活発病とは何か 大川弥生 2013年 講談社
  2. 障害保健福祉研究情報システム 大川弥生 生活不活発病に気をつけよう(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 厚生労働省 生活機能低下を防ごう!「生活不活発病」に注意しましょう(PDF:3.0MB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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