運動処方
公開日:2016年7月25日 21時00分
更新日:2022年4月15日 11時08分
運動処方とは1)
運動処方とは、健康づくりのための運動について、以下の運動の内容を決定することをいいます。
- 運動の種類
- 運動の強度
- 運動の持続時間
- 運動の頻度
健康づくりのための運動には、全身持久力、筋力、筋持久力、柔軟性が含まれます。体力や身体運動レベルなどは個人によって異なり、安全に、かつ効率的に運動を行うためには、身体的な特性に合わせて、どのような運動をどのくらいの強さで、どのくらいの時間、どれくらいの頻度で行うかということを決定することが必要です。
健康な人が生活習慣の乱れを改善して健康増進を図る場合と、病気を持っている人が疾患リスク軽減のために行う場合とでは、運動の内容も強度、時間、頻度なども変わってくるように、運動の目的によっても運動処方は変わってきます。
不適切な方法や内容の運動によって、筋肉・関節の障害や心臓血管疾患、突然死を招く恐れもあります。現在の身体状況だけではなく、過去の既往や運動の経験なども考慮することが大切です。運動は一定期間の継続が必要であり、個人の嗜好に合った飽きずに楽しく取り組める運動の選択や、安全で効率の良い運動を行うための知識を得るための患者への教育も必要となります。
運動処方の手順
図1の運動処方の手順のとおり、運動処方を行う前に、生活習慣や運動習慣、既往歴などについての問診と、メディカルチェック(医学的検査)※1、体力測定を実施します。健康づくりの目的に応じても必要となってくる運動は異なってきますので、個人に合う運動処方をつくります。
運動処方に従って運動を実施し、運動後の疲労や期間ごとの効果などをみて、運動処方の見直しを行い、必要に応じて運動処方を作成し直します。
運動習慣がない場合にはいきなり目標とする運動を行うと疲労や怪我につながり、運動を継続することが難しいため、徐々に運動量・運動負荷・運動内容・運動時間などを増やしていきます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では、生活習慣病のリスクを減らし、健康寿命を延ばすための運動としては中等度の強度の運動を毎日の生活の中でプラス10分多く取り入れていくことが推奨されています2)。
運動内容としては、有酸素運動に筋力や筋持久力の向上を図るためのレジスタンス運動※2や、身体を柔軟に保つためのストレッチ運動なども行うことで立つ・歩く動作の維持が図れ、生活の質の向上に有用であること、筋肉量が増大することで消費エネルギー量が増え、肥満の予防になることがいわれています3)4)。
- ※1メディカルチェック:
- メディカルチェックとは、診察・血圧測定・血液検査・尿検査・身体計測・心電図・運動負荷心電図・レントゲン撮影などの医学的検査のこと5)。
- ※2レジスタンス運動:
- レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗をかけて繰り返し運動を行うこと。自分の体重を利用して行う方法と、重錘やセラバンドなどで抵抗をかけて行う方法とがあります。
運動療法処方箋とは
「厚生労働大臣が認定する健康増進施設のうち、一定の要件を満たす施設について、厚生労働省が運動療法を行うに適した施設として指定したもの」6)を指定運動療法施設といいます。厚生労働大臣認定の指定運動療法施設では、かかりつけの医師、または指定運動療法施設の提携医療機関の医師の運動療法処方箋※3を提出すれば、運動療法処方箋にもとづく運動療法を実施する際に必要な利用料金は、医療費控除の対象となります。
- ※3運動療法処方箋:
- 運動療法処方箋とは、既往歴や生活習慣、血圧などの基本情報と、運動療法の適応・可否、運動の種類、運動の強度、継続時間、運動の頻度、運動場の注意点などを示している処方箋のこと(図2)。