健康長寿ネット

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健康を支える社会環境

公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2022年6月24日 11時15分

社会環境の健康への影響

 健康と環境は、切っても切り離せないものであり、社会環境は健康へ様々な影響を及ぼします。空気や水、自然環境といった環境は健康に直接的な影響を与えますし、社会コミュニティや暮らしの状況、経済状況と言った社会的な環境も、健康に影響を及ぼします1)

 特に心の疲れをとる目的、あるいは適度な運動を心掛けるために、屋外へ散歩に出かけたり、スポーツをする方が増えてきている現在では、環境と健康への影響は、特に注目しておくべきものと考えられます。

社会環境が健康へ影響を及ぼす現状と課題

 では、社会環境が健康へ影響を及ぼす現状と、課題を見てみましょう。

 まずは、自然環境についてです。地球規模で見ると、オゾン層の破壊、環境資源の枯渇、酸性雨、地球温暖化などが、問題として挙がっています。地球温暖化が続けば、農作物の収穫量が減り、私たちの食生活への影響が出てきます2)。真夏日が続けば熱中症患者が増え、さらに、日本にはこれまで見られなかったマラリアやデング熱といった感染症が、日本にも上陸すると考えられます。

 また、オゾン層が破壊されると、有害な紫外線が直接地球へ降り注ぎ、皮膚がんや白内障患者が増加する可能性が懸念されていますし、有害紫外線が自動車や工場の排ガスに当たると光化学反応を起こして光化学スモッグを発生させます。光化学スモッグは、目や皮膚、のどなどに影響が出る他、重症例では意識障害を引き起こす場合もあります。

 次に、社会環境です。数十年前と比較し、都市の規模が大きくなればなるほど、地域におけるいわゆる「近所付き合い」が希薄になってきます。さらに高齢化の進行により、高齢者を狙った詐欺などの犯罪が急増してきました。こういった社会環境の変化も、高齢者の健康へ影響を及ぼすものと考えられます。

ソーシャルキャピタルとは

高齢者の健康を支える地域の社会環境を表現しているイラスト。つきあい・交流、信頼、社会参加で構成されたソーシャルキャピタルが注目されており、社会コミュニティや暮らしの状況、経済状況が健康に影響を及ぼすものと考えられ、地域とのつながりが重要視されている。

 ソーシャルキャピタルとは、日本語で「社会関係資本」と訳されます3)。これは現在、さまざまな角度からの研究が進められている分野であり、おおよそは人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織を特徴とし、この構成要素を、つきあい・交流、信頼、社会参加の3本としています。

 例えば、地域の人たちとの付き合いや親戚との付き合い、娯楽や趣味の活動に参加することによる人付き合いは、「つきあい・交流」に該当します。こうした社会とのつながりの中で、友人、親戚、近所の人を始めとしたさまざまな人へ信頼を寄せることが「信頼」です。さらに、地縁(ちえん=住んでいる土地にもとづく縁故関係)的な活動の参加やボランティア活動、共同募金活動などを「社会参加」と位置付けています。

 この考え方は、日本だけでなく、欧州、英国でも用いられている概念であり現在、さまざまな方面からの注目を集めています。

地域のつながり

 日本には昔から「遠くの親戚よりも近くの他人」という言葉がありますが、ソーシャルキャピタルを行っていく上で最も重視されるのは、地域とのつながりです。しかし、普段から隣人と付き合う機会がない、隣人たちとはあまり関わりたくない、自分の住む地域に気の合う人がいないなど、様々な理由によって地域とのつながりが減ってきているという現実があります。

 近年では震災や大雨による自然災害などの影響で、住み慣れた街を離れなければならないという事情ができました。さらに高齢者は、配偶者と死別した後に子どもと暮らす、あるいは高齢者のための住宅へ入居する人たちが増えたことから、地域とのつながりが希薄化してしまっているのも事実です。

 ソーシャルキャピタルの構成要素にも地域とのつながりや信頼を明記していることから今後さらに地域とのつながりが重要視されることが予測されます。

地域とつながるにはどうしたらよいか

 現在の日本では、地域とのつながりが希薄化している一方で、「地域とのつながりが必要だと思う」という人は全体の6割程、「どちらかといえば必要だと思う」人も合わせると、9割程度の方が必要であると考えていることになります(グラフ、表)。

グラフ:地域のつながりの必要性をどの程度感じているかを示す棒グラフ。高齢者の9割が地域のつながりが必要だと感じていることを示している
グラフ:地域のつながりの必要性を感じているか
表:地域のつながりの必要性を感じているか4)
とても必要だと思うどちらかといえば必要だと思うどちらかといえば必要ないと思う必要ないと思う分からない
総数 60.4 33.2 3.8 1.4 1.2
60~64歳 58.6 35.4 3.9 1.4 0.6
65~69歳 60.8 34.6 2.8 1.1 0.7
70~74歳 60.2 33.0 3.9 1.6 1.3
75~79歳 62.9 31.0 4.0 1.3 0.9
80歳以上 60.5 27.8 5.7 1.6 4.4

 特に都市規模が小さくなるほどその重要性を感じており、町村では9割以上の方が、地域とのつながりの必要性を感じています。地域とのつながりを確保・維持するために実践していることとしては、「町内会や自治会への参加」や「近隣の人と挨拶や話をする」ことが多いようです。

 また、これらの結果をその他の問への回答と併せて考えると、次のような傾向があることが分かりました。

  • 年齢層別:80歳以上では各項目の回答比率が低くなる。
  • 同居形態別:単身世帯では各項目の回答比率が低くなっているが、三世代世帯では高くなる傾向がみられる。
  • 現在の収入別:30万円以上の層で、各項目の回答比率がやや高い。
  • 健康状態別:良くない(計)人よりも、良い(計)人の方が各項目の回答比率が高くなっている。
  • 近所付き合いの程度別:付き合いの親密度が増すほど、各項目の回答比率が高くなっている。

 ここで注目したいのが「健康状態別」の回答です。この結果は、健康状態が良い人ほど社会環境に目を向けることができ、何かしらの活動を行っていると考えられます。あるいは、社会環境に目を向け、近隣とのつきあいを大切にするからこそ、健康状態を良い状態で維持できるのかもしれません。

参考文献

  1. 環境と人々の健康との関わりを探る~環境疫学~ 国立環境研究所(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 人間社会への影響 国立環境研究所(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. ソーシャルキャピタル関連資料 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 平成21年度 高齢者の地域におけるライフスタイルに関する調査結果(全体版) 内閣府(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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