喘息の原因
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 20時12分
喘息の原因とされる"個体因子"と"環境因子"
喘息の原因は、図に示す通り個体因子と環境因子に大別されます。
個体因子には、遺伝子素因、アレルギー素因、気道過敏性、性差などがあります。子どもの喘息は男性に多いといわれていますが、大人になってから発症する喘息では、男女比は1:1程度であり、特に性差はありません。しかし、喘息による死者は男性の方が圧倒的に多く、性別による社会的、家庭的な立場も関係しているのではないかという見方もあります。
遺伝子素因についてはこれまで多くの原因遺伝子(関連があると考えられる遺伝子)が提示されているものの、まだ特定の遺伝子の確定には至っておらず、現在も研究が行われています。
また、環境因子は、発病因子と増悪因子に分けられます。発病因子には、アレルギー原因物質(アレルゲン)、ウイルス性の呼吸器疾患への罹患、屋内や屋外の大気汚染、受動・能動喫煙、食品や食品添加物を摂取することによるもの、寄生虫への感染、薬物(アスピリン内服によるアスピリン喘息)などがあります。
増悪因子には、アレルギー原因物質(アレルゲン)、屋内や屋外の大気汚染、呼吸器感染症への罹患による悪化、運動(特に寒中での)やそれに伴う過換気、喫煙、気候の変化、食品や食品添加物の摂取、薬物(アスピリン内服)、激しい感情表現やストレス、過労、煙や臭気・水蒸気などの刺激物質などがあります。女性の場合は、月経や妊娠、肥満やアルコールなども、喘息の増悪につながると考えられています。
発作が悪化する原因としては、風邪症候群などの呼吸器感染症が最も多く、次いで天気や気候の変化、運動後となります。
喘息の原因となる室内環境とは
喘息の原因となる室内環境に、2つに大別されます。
喘息の原因となる室内環境:ハウスダスト
1つ目はハウスダスト、ダニです。近年では、建築技術が上がったことにより、室内が密閉化されるようになりました。サッシがアルミサッシになったり、木造建築物から鉄筋コンクリートの建築物が増えるなどの変化です。また、冷暖房化が進み、窓を開閉する機会も少なくなりました。室内家具が増え、畳やフローリングの床よりもカーペットを敷いて過ごす家が多くなっています。さらに、小型犬や猫など、室内で動物を飼育する家庭が増えたことや、こまめに大掃除をする機会が減ったことなどから、室内のハウスダストやダニは増え、これらも喘息の原因となっていると考えられています。
特に寝具は、室内で最もダニに汚染されている場所であり、家庭内で過ごす時間の多い場所であることから、睡眠中にダニアレルゲンを吸い込むことが喘息の原因となっていることも考えられます。
喘息の原因となる室内環境:室内飼育動物
2つ目は室内飼育動物です。アレルゲンとなるものは主にイヌ、ネコ、ハムスター等となります。近年室内で動物を飼う家庭が増え、アレルゲンとなる動物と密閉された室内で過ごすことが多くなりました。これも喘息の原因の一因となっていると考えられています。特にネコを飼育している人で喘息となっている患者が多いようです。
しかし、成人以降に喘息となった場合は少し違います。成人では、アレルゲンの吸入による喘息の割合が極めて低いため、成人以降に喘息に発症している場合はアレルゲンについては参考程度となります。
高齢者の喘息の原因として多いのは?
高齢者の喘息患者さんの場合、成人期以降で発症しているケースが非常に多くなります。この原因は、受動・能動喫煙によるたばこの煙、大気汚染や空気の汚染された環境で長期間過ごしている、風邪症候群などの呼吸器感染症によるもの、ストレスや疲労、気候の変化など、アレルゲン物質とは関係のない場合が多くなります。
成人期以降や高齢者が喘息を発症する原因は、乳幼児期から小児期にかけて発症する"小児喘息"とは違い、血液検査等の結果からは、炎症反応が強いものの、アレルギー反応はあまり起きていないことが分かります。つまり、呼吸器関連の感染症の罹患、環境要因や免疫力の低下、強いストレスや疲労などにより、気道の炎症が改善せず、気道が狭窄した状態が継続することで、喘息症状があらわれるようになると考えられます。
また、高齢者の場合は、呼吸器とは一見関連が無いような合併症を抱えていることも多く、これらのような様々な要因が複雑に関連することが、喘息の原因となっているようです。