喘息のケア
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2024年9月 6日 13時38分
喘息予防のケアは治療薬の継続と記録が大切
「喘息予防・管理ガイドライン」では、最も大切な喘息予防のケアは、治療薬の継続と、喘息に関わる自己の記録であると明示されています。喘息は、発作が消失して日数が経つと、完治したと勘違いし、治療を自己中断する人が多い疾患です。しかし、あくまで薬によってコントロールされているものであるということを念頭に置き、治療薬の確実な継続が必要です。
また、薬物療法と併用して喘息にかかる記録をつけることや、ピークフロー(力いっぱい息をはき出したときの息の速さ=速度の最大値)を測定し、自分の現在の呼吸状態を知ることも、ケアの上で大切なポイントです。
喘息の治療や呼吸状態の記録をつけることで、自分の喘息の状態を、季節、時間、随伴症状(発作時にみられる症状)、天候、治療内容、日常生活内容等との関わりの中で、客観的に評価することができます。さらに、診察時に主治医が喘息の記録を見ることで、患者が日常生活の中で、喘息をどのようにコントロールしているのか、今後はどのように指導すべきが分かるとともに、薬の服用時間、量を決める場合の参考となります。
ピークフローの測定は、比較的簡単に行うことができます。市販されている、簡易式の呼吸機能測定器を使用し、息を吹き込むだけで、現在の気管(気道)の状態を、ある程度知ることができます。
自覚症状を記録するだけでなく、ピークフロー値という客観的な情報を記入しておくことで、自分の症状や悪化時の状態を把握することができ、発作予防に役立てることができます。
喘息は、日々の長期管理が、喘息発作を起こさないための重要なケアとなります。高齢者の場合は、介助者が聞き取りを行い、記録をつけるなどの介助も必要となるでしょう。
喘息発作が起こった時のケアとは?
喘息発作が起こってしまった際にも、対処法を理解しておくことで、落ち着いて行動することができます。まず、喘息発作が起こってしまった際には椅子に座る、ベッドから起き上がるなど座った姿勢を取り(起坐位)、ゆっくりと腹式呼吸を行うようにします。その後、医師から処方されている発作時の治療薬を内服します。
治療薬は、短時間作用性β2作動薬という薬が処方されているケースが多いです。その後、暖かい湯やお茶を飲みながら、様子を見ていきます。
高齢者の場合は、これらを全て自己で行うことは難しいケースが多いため、介助者による介助が必要となります。
医療機関受診の目安とは?
小児、成人に関わらず、喘息患者さんがきちんと通院、治療を行っていれば、発作を起こしたときの治療薬を処方されていることが多いです。通常の状態よりも、やや息苦しい、動くと苦しいなどの状態であれば、お薬によるセルフケアでも落ち着くことがあります(表)。
発作の頻度 | 呼吸困難 | 動作 | 対処法 |
---|---|---|---|
喘鳴がある 胸が苦しい |
急ぐと苦しい 動くと苦しい |
ほぼ普通 | 薬物による、セルフケアでの対処可能 |
軽症 (小発作) |
苦しくて横になれない | かなり困難 かろうじて歩ける |
救急外来を受診 |
中等症 (中発作) |
苦しくて動けない | 歩行や会話ができない | 救急外来を受診 |
重症 (大発作) |
呼吸が弱くなる チアノーゼ 呼吸が停止する |
会話できない 動けない 錯乱、失禁する 意識障害が起こる |
救急搬送 直ちに入院し、ICUなどでの管理が必要 |
しかし、喘息発作が起こった時のケアをしても、状態の改善が見られない場合は、重篤な事態となる前に、速やかに医療機関を受診します。特に、「苦しくて横になれない、動けない」あるいは「かろうじて歩ける」という中等度の発作以上のレベルであれば、救急外来を受診する必要があります。
ただし、高齢者の場合は、喘息とCOPDの併発(オーバーラップ症候群)を起こしてしていることもあり、予後不良となる場合が多いです。
実際に、高齢者が喘息とCOPDを併発(オーバーラップ症候群)している割合は高くなり、70歳以上になると、男女ともに50%を超えるという報告もあります2)。そのため、発作時の治療をしても十分な効果が得られない、長期での治療をしていても効果が不十分だと考えられる場合は、速やかに医療機関を受診し、主治医へ相談することが推奨されます。軽度の発作でも、セルフケアを行っても症状が治まらない場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
参考文献
- 成人気管支喘息診療のミニマムエッセンス 日本医師会
- 浅井一久ら:気管支喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS). 日内会誌104 2015年;1082-1088