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糖尿病性網膜症

公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年4月 2日 17時35分

糖尿病性網膜症とは

 糖尿病性網膜症とは、糖尿病の進行に伴って進行する網膜症で、「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」と並び、糖尿病三大合併症の一つとされています。進行すると、視野の一部が見えにくくなり、最終的には失明するリスクがあります。網膜症の進行状況は、糖尿病と診断される際の指標の一つとなっています。

糖尿病性網膜症の症状

 網膜症は、発症してもある程度進行しなければ、自覚症状がありません。そのため、症状が出ている場合はある程度進行してしまっている状態だといえます。

 症状としては、本来ないはずの小さな虫のようなものや、黒いカーテンが全体的にかかっているような症状が出現します。症状がさらに進行すると、視力低下や視野が狭くなり、最終的には失明の危険もあります。

糖尿病性網膜症の原因

 糖尿病性網膜症の原因は、「糖尿病によって高い血糖値が持続すること」です。糖尿病によって通常よりも高い血糖値で経過すると、余分な糖分は徐々に全身の血管を痛めつけ、ボロボロにしてしまいます。その結果、眼の中にある細かい血管が破けたり、詰まってしまうことで起こります。

 眼の血管は血液の流れを確保しようと新しい血管を作ろうとするのですが、新しいが故にとても脆いため、簡単に破けてまた作って、を繰り返してしまいます。この働きにより、本来はクリアでいなくてはいけない硝子体に新たに一枚膜ができ、この膜が網膜をはがしてしまうことで、視力が低下したり、最悪失明する恐れがあります。

糖尿病性網膜症の診断

 網膜症には、症状は現れていないが、網膜にむくみや出血が見られる「単純網膜症」、網膜内の血流が低下する「増殖前網膜症」、自覚症状が出現し、進行すると失明の危険もある「増殖網膜症」の3段階に分けられます。

 それぞれの段階によって見られる病態は、表の通りです。

表:糖尿病網膜症の進行
単純網膜症増殖前網膜症増殖網膜症
病態 網膜のむくみ、出血 網膜の虚血(血液が足りない状態) 硝子体への血管新生

 網膜にむくみや出血があるだけではまだ自覚症状は見られないため、診断のためには眼科受診が必須となります。糖尿病の患者さんには、基本的に1年に1回、定期的に眼科へ受診してもらい、網膜症の進行がないかどうかチェックするように勧められています。

 また、糖尿病の診断時に「小さな虫が飛んでいるように見える」「黒いカーテンが全体的にかかっているように見える」といったような、糖尿病性網膜症の所見が見られた場合には、糖尿病と診断される確率が飛躍的に上がります。

糖尿病性網膜症の治療

 糖尿病性網膜症の初期段階である網膜のむくみや出血が見られた場合は、「単純網膜症」と診断されますが、この段階では血糖コントロールに重点を置き、これ以上進行しないようにする治療が行われます。1年に1回でよかった眼科での定期健診は3~6か月ごとになり、より慎重に進行が見られていないか確認していきます。

 症状が進行し、網膜内の血流低下が認められた場合は、「増殖前網膜症」と診断され、光凝固療法を行い、これ以上の出血や新たに出血するのを防ぐ治療が行われます。

 さらに症状が進行し、血流を補うために新たに細い血管ができては出血を繰り返す状態となる「増殖網膜症」と診断された場合には、硝子体手術を行いますが、一度低下した視力を元に戻すことはできず、あくまで失明を防ぐための治療となります。

糖尿病性網膜症の看護・ケア

 糖尿病性網膜症は、「初期段階では自覚症状がない」という部分がポイントとなり、特に長期間にわたって糖尿病を放置している患者さんにみられる症状です。自覚症状がない分、患者さん本人にも深刻さが伝わりにくいのですが、糖尿病にかかっている方のうち約40%は網膜症を発症しているとされ、毎年3000人以上が糖尿病性網膜症によって失明しているとされています。

 糖尿病を未治療で放置した場合、7から10年で約50%、15から20年で約90%が網膜症を発症するとされているため、糖尿病と診断された時点で「最悪失明するリスクがある」こと、そして「定期受診の必要性」を指導する必要があります1)。

参考文献

  1. 病気がみえるVol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第3版 メディックメディア社 2012年 P68 

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