高齢者糖尿病の特徴
公開日:2016年7月25日 18時00分
更新日:2019年6月20日 17時08分
生活習慣病の一つとして知られる「糖尿病」。糖尿病は「万病の元」とも呼ばれ、様々な合併症を引き起こす病気としても知られていますが、高齢者の場合はさらに様々な特徴が見られます。特に高齢者糖尿病の方に注意していただきたい点について、まとめました。
高齢者糖尿病患者の割合
平成27年度の厚生労働省の調査によると、「糖尿病が強く疑われる」割合は、男女ともに60歳以降に急増しており、糖尿病患者全体の約半数を占めています1)。
糖尿病は進行すると様々な合併症を引き起こし、日常生活にも障害を及ぼすリスクが高いことから、高齢者糖尿病への対策が急務となっています。
高齢者糖尿病の症状
高齢者糖尿病の症状の特徴として以下の項目があげられます。
症状の進行に気づきにくい
年を重ねると、それまで何事もなくできていたことに対しても、少しずつ支障が出てきます。「物覚えが悪くなってきた。」「手足がしびれるようになってきた。」などの症状は加齢によっても起こりうる症状ですが、一方で糖尿病の方の場合は糖尿病の進行に伴う合併症の疑いもあります。
青年期や中高年期の場合は「もしかしたら糖尿病によるものかも」と思えるのですが、高齢者の場合は「加齢のせいかな」と考えてしまい、症状を放置しがちという傾向にあります。
症状そのものが出現しにくい
高齢者は加齢に伴って、本来なら自覚症状が出てもおかしくない状態であるにも関わらず、症状そのものが出現しにくいという傾向にあります。
特に懸念されるのが低血糖時の症状が乏しいということです。通常、低血糖が起こると冷や汗や手足の震えなど、様々な症状が出現しますが、高齢者はこれらの症状が出現しにくく、対応が遅れがちとなってしまうという特徴があります。
高齢者糖尿病の原因
高齢者に様々な特徴が現れる原因としては、以下のことが考えられます。
加齢に伴う身体機能の低下
人間の身体機能のほとんどは、20代をピークとして徐々に低下していきます。
特に65歳以上の高齢者となると、20代に比べて様々な身体機能が低下しているため、若い方に比べ様々な合併症などが起こるリスクは増加します。
一方で、リスクに気づく機能も同時に低下しているため、自分では全く自覚症状がなかったのに、病院の定期検診によってはじめて合併症の存在に気づくということもあります。
生活習慣改善のむずかしさ
糖尿病の治療の基本は、「食事療法」「運動療法」そして「薬物療法」です。
特に食事と運動は生活習慣の改善が必要となりますが、高齢者の方にとって、それまでの生活習慣を変えるというのは若い方に比べて精神的にも難しいとされています。
そのため、指導を受けてもなかなか改善できず、症状がどんどん進行してしまうリスクが高くなってしまいます。
高齢者糖尿病の合併症
糖尿病の三大合併症
糖尿病の三大合併症として、「糖尿病性腎症」(リンク1)、「糖尿病性網膜症」(リンク2)、「糖尿病性神経障害」(リンク3)があげられます。
三大合併症に挙げられていることは、悪化すると腎不全、失明、足の切断というような今後の生活に大きく左右するような症状を引き起こす恐れがあります。
そのため、症状がなくても定期的に検診を受け、合併症を発症していないか、また発症していてもそれ以上悪化していないかどうかをしっかり検査しておく必要があります。
認知症
特に高齢者の場合、注意したいのが「認知症の発症リスクが増加する」ということです。認知症は、一部の種類を除き、なぜ発症するかわかっていません。しかし、認知症の一つであるアルツハイマー型認知症は、糖尿病を持っていない方に比べて糖尿病の方は有意に発症率増加することが調査の結果明らかとなっています2)。
また、糖尿病によって血糖値が高い状態が続いてしまうと、脳の血管が詰まりやすくなったり、もろくなって十分な血液が行き届かなくなってしまいます。そのため、糖尿病ではない方に比べて脳血管性認知症の発症率も高くなっています。
高齢者糖尿病の方にとっては、「血糖値のコントロールをする」ということは、そのまま「認知症予防」にも効果的であるといえます。