非ケトン性高浸透圧性昏睡
公開日:2016年7月25日 14時30分
更新日:2019年2月 1日 20時33分
非ケトン性高浸透圧性昏睡とは
非ケトン性高浸透圧性昏睡とは、糖尿病による昏睡の中でも特に2型糖尿病の高齢者が多く発症する症状です。
様々な原因によって血糖が高値となり、体内が高度の脱水状態となることで、重篤な合併症を引き起こす危険もあります。そのため、高齢者糖尿病の方は特に注意が必要です。
最近では、昏睡になるまで症状が悪化することは稀であることもあり、非ケトン性高浸透圧性昏睡という呼び名の他に、「高浸透圧性高血糖症候群」と呼ばれることが多くなってきました。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の症状
非ケトン性高浸透圧性昏睡の本態は「高度な脱水」です。
よって、症状としては脱水時と同様に以下の症状があげられます。
- 意識障害
- けいれん
- 皮膚、粘膜の乾燥
- 血圧の低下
- 頻脈
- 尿量の低下
これらの症状がさらに進行すると、意識を消失し昏睡状態となってしまいます。しかし実際には上のような症状が出た時点ですぐに医療機関を受診するケースがほとんどなため、昏睡状態に至るほど重症化するケースはまれとなっています。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の原因
非ケトン性高浸透圧性昏睡になりやすい状態とは
上の二つの状態の他にも、以下のような状態だと非ケトン性高浸透圧性昏睡になりやすいとされています。
- ウイルスや細菌などに感染している状態
- 脳卒中など、脳血管に疾患が起こっている状態
- 利尿剤やステロイドなど、高血糖になりやすい薬剤を使っている
- 手術後
- 心臓に疾患が起こっている場合
特に高齢者でこれらの状態に当てはまっている場合は、注意が必要です。
非ケトン性高浸透圧性昏睡が高齢の2型糖尿病の方に多い原因
非ケトン性高浸透圧性昏睡が高齢の2型糖尿病の方に多い原因として、「高齢による飲料水量の低下」と「身体機能の低下による高血糖状態」の二つがあげられます。
高齢による飲水量の低下
非ケトン性高浸透圧性昏睡は、脱水によって引き起こされやすくなります。
成人期ならば、ノドの渇きを覚えて適度な補水を行いますが、高齢になるとノドの渇きが覚えにくくなります。それに加え、糖尿病によって神経症状が出ている場合、出ていない状態に比べてさらにノドの渇きは感じにくくなるため、ますます飲水量が低下してしまいます。
身体機能の低下による高血糖状態
加齢に伴い様々な身体機能が低下しますが、高齢者糖尿病の場合、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌量の低下や、インスリンの効きが悪くなることに伴い、高血糖に陥りやすくなっています。高血糖の状態が続くと血液の中の水分が足りなくなり、脱水のような状態となりやすくなります。
以上二つの原因から、特に高齢者糖尿病の方は非ケトン性高浸透圧性昏睡になりやすいと考えられています。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の治療
非ケトン性高浸透圧性昏睡は、著明な脱水症状から引き起こされるため、治療としては点滴による補水が重要となります。
このとき、高齢者糖尿病の方の場合には、糖尿病以外に持病を抱えていたり、糖尿病の進行によって腎臓機能が低下していることなどもあるため、より慎重な治療が求められます。
また、非ケトン性高浸透圧性昏睡の場合は脱水が進行することで高度な高血糖状態となってしまうため、補水とともに血糖のコントロールも重要となります。
非ケトン性高浸透圧性昏睡の予後
非ケトン性高浸透圧性昏睡は、高度の脱水によって引き起こされる病態です。点滴による治療にて脱水が改善すれば症状は改善しますが、高齢者の場合心配なのが合併症です。
糖尿病の方の場合、糖尿病でない方に比べて体中の血管が詰まりやすくなっていたり、もろくなっています。その状態に加えてさらに脱水によって血液の流れを悪くしてしまうことで、さらに合併症が起こりやすい状態になってしまうのです。
代表的なものだと脳卒中や心不全、心筋梗塞といった命に直結するような重篤なものがあります。他にも、腎臓機能が低下する腎不全や血の塊が動脈にできる動脈流血栓などもあげられます。
非ケトン性高浸透圧性昏睡だけを見れば予後は良好ですが、合併症のリスクが飛躍的に上がるため、決して軽視できない病気の一つです。