高齢者の心筋症
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年2月 1日 20時33分
高齢者の心筋症の症状
心筋症とは、心臓の筋肉が変形してしまうことで、心臓のポンプ機能の低下をきたす疾患の総称です。心筋症には大きくわけて「拡張型心筋症」「肥大型心筋症」があります。拡張型心筋症は特に40歳から70歳の男性に多いとされています。心筋症を発症すると、ポンプ機能の低下により、全身に血液を送りにくくなってしまうため、以下のような症状が起きます。
- 動悸
- 呼吸困難
- 浮腫
- 不整脈
- 胸痛
- 息切れ
- めまい、失神
高齢者の心筋症の原因
心筋症で多い「拡張型心筋症」「肥大型心筋症」、ともに発症の原因は不明となっており、現在も研究が進められています。
一方で、拡張型心筋症は25から30%、肥大型心筋症は約半数が家族性だということがわかっています。そのため、血縁の家族の中で心筋症の方がいる場合には、発症するリスクが上がるために注意が必要です。
高齢者の心筋症の診断
心筋症では、以下の検査を行います。
- 聴診にて心臓が収縮する際に、雑音が聴取できます
- 心電図にて、特徴的な心電図波形が見れる
- レントゲン写真にて、心臓肥大や胸水が確認できる
- 心臓エコーにて、左室の拡大、壁運動のびまん性低下
- 心臓カテーテル
これらの診断内容を総合的に判断し、心筋症と診断されます。
高齢者の心筋症の治療
心筋症の場合、根治治療としては心臓移植のみとなっています。そのため、高齢者の場合はこれ以上心臓の負担をかけず、心筋の機能を低下させないようにする対症療法が行われます。
具体的な対症療法としては、次のことがあげられます。
生活習慣の改善
心臓に負荷のかかる水分、塩分、飲酒を制限し、タバコは禁煙。規則正しい生活を送り、ストレスを避けるようにします。
心不全に対して
心筋の機能が衰えることで、心不全を併発します。そこで、心不全の治療に準じて、薬での内服治療が行われます。
血栓、塞栓症に対して
心筋の機能が衰えることで、血液の流れが悪くなるため、血の塊である血栓ができやすくなります。血栓が血管の一部をふさいでしまうことで、心筋梗塞や脳梗塞など、生命にかかわる重篤な症状を引き起こす恐れがあるため、血液が固まりにくくなる抗凝固作用のある薬を内服し、血栓ができないようにする治療を行います。
不整脈に対して
心臓の筋肉が弱ってしまうことで、不整脈が起こりやすくなります。特に注意したいのが「重症徐脈」と呼ばれる状態で、必要な回数以下の脈拍しか起こらないために、脳が酸欠状態となり、突然意識がなくなってしまうといった症状が出現する恐れがあります。これらの症状を予防するために、不整脈を改善する薬を使用したり、ペースメーカーを埋め込んで脈拍を機械の力によってサポートする必要があります。
高齢者の心筋症の予後
拡張型心筋症の場合は、進行性の病気なため、肥大型心筋症に比べて予後不良となっています。
20年ほど前まで5年生存率が約50%とされていましたが、最近は心筋症の早期発見や少しでも心臓の筋肉の負担を軽減するための様々な治療法が進歩してきたことにより、約80%と改善傾向にあります。特に高齢者の場合はリスクが高いことから、根治治療である移植治療は除外されます。そのため、上にあげた様々な対症療法を取り入れることにより、生存率を上げる必要があります。
肥大型心筋症は、予後としては拡張型心筋症に比べ良いとされている一方で、肥大性心筋症が原因の突然死が見られることがあるため、突然死予防のためのアプローチが積極的にとられています。
高齢者の心筋症の看護・ケア
拡張型心筋症、肥大型心筋症ともに日常生活の管理が非常に重要です。若い方の場合は心臓移植も視野に入れた治療となりますが、高齢者の場合は根治治療である移植は適応外となるため、対症療法がメインの治療となります。そこで重要となるのが「いかに患者さんご本人が対症療法に長く取り組めるか」という点です。
心筋症の場合、心臓に負荷をかけないために、食事や水分、運動の制限を受け、様々な種類の薬を内服する必要があります。これらの治療を長く続けていくためには、患者さん本人のやる気はもちろんのこと、周囲のサポートが必須となります。