高齢者の心臓弁膜症
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 20時33分
高齢者の心臓弁膜症の症状
心臓は4つの部屋に分かれており、部屋ごとに「弁膜」が付いています。この弁膜が開閉することで、血液を一定量心臓の部屋に貯め、拍動に合わせて外へ押し出すことができます。
4つの弁はそれぞれ図の「僧帽弁(そうぼうべん:図の1)」「大動脈弁(図の2)」「肺動脈弁(図の3)」「三尖弁(さんせんべん:図の4)」といいます。
弁膜症のほとんどは「僧帽弁」か「大動脈弁」の疾患となります。弁膜症では弁そのものが狭くなってしまう「狭窄症」と弁が正しく閉鎖できない「閉鎖不全症」の二つにわけられます。
狭窄症、閉鎖不全症のそれぞれの症状は次のとおりです。
- 大動脈弁狭窄症:息切れ、失神発作、狭心痛、血圧低下
- 大動脈弁閉鎖不全症:動悸、呼吸困難、狭心痛
- 僧帽弁狭窄症:動作時の呼吸困難、動悸、不整脈
- 僧帽弁閉鎖不全症:動作時の呼吸困難、動悸、息切れ、易疲労感
などが主に表れます。
この章では特に高齢者に発症が多い「大動脈弁狭窄症」について、詳しく解説していきます。
大動脈弁狭窄症の原因
大動脈弁狭窄症は、以下のような原因が考えられます。
加齢に伴うもの
加齢によって動脈硬化が進み、弁そのものが変形する、あるいは一部が石灰化してしまうことで起こります。高齢者に多く、近年増加傾向にあります。
リウマチ性
最近は減少傾向ですが、リウマチ熱に罹患した後の弁膜の炎症により発症します。この場合は他の弁膜症も合併しやすくなっています。
大動脈弁狭窄症の診断
大動脈弁狭窄症では、診察にて、「聴診での雑音聴取」「心電図での異常波形」「レントゲンにて軽度の心肥大」が見られます。
大動脈弁狭窄症が疑われた場合には、エコー検査を行い、確定診断がつきます。
また、中にはより詳しく状態を見るために心臓の内部に直接カテーテルを通して検査する「心カテーテル検査」を行うこともあります。
大動脈弁狭窄症の治療
大動脈弁狭窄症の治療は、まず基本的に症状が出現しておらず、心臓の機能そのものの低下がみられなければ、経過観察を行います。それぞれの症状が出現している場合には、それぞれの症状に応じた薬を使用し、症状の軽減を図ります。
一方で、失神発作、心不全症状あるいは心臓の機能低下が出現した時点で、手術の適応となります。手術は、大動脈弁を人工弁に変更する「大動脈弁置換術」が適応されます。近年、弁膜症への手術件数は増加傾向にあり、特に高齢者に対する手術が増加しています。弁置換術については、一般的に使われている「機械弁」と、高齢者や出血傾向のある「生体弁」があり、高齢者には「生体弁」を使っての弁置換術が行われています。
大動脈弁狭窄症の予後
大動脈弁狭窄症は、狭心痛や失神発作などの症状が出現してからの治療は予後が不良となるため、症状の出現前に診断、フォローすることが重要となります。
予後としては、狭心症が出現しているときは5年、失神発作が出現しているときには3年、心不全が出現しているときは2年となっています。大動脈弁狭窄症による突然死も10~20%見られているため、早期の発見が重要となります。
大動脈弁狭窄症の看護・ケア
大動脈弁狭窄症は、症状が出現することで予後が非常に悪くなります。
そのため、症状が出現する前の対策が非常に重要となります。特に大動脈弁狭窄症は動脈硬化による弁の変性や石灰化によって起こりやすいため、動脈硬化を起こしやすい「高血圧」や「糖尿病」、「高コレステロール血症」の持病がある高齢者の方は、このような病気があるということを知り、これ以上動脈硬化を悪化させないように、生活習慣の改善を目指すことが必要となります。