ロコモティブシンドロームの原因
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2024年2月 8日 10時05分
ロコモティブシンドロームの原因には、「加齢や生活習慣による運動器の機能低下」によるものと、「運動器疾患の発症」によるものとがあります。
加齢や生活習慣による移動機能の低下とは
年をとると、立つ、歩く、座る、走るなどの移動機能を支えている筋肉や骨の量が低下していきます。骨量のピークは男女ともに20~30代であり、それ以降はだんだんと下降していきます(グラフ1)。
また、運動に関与する骨格筋の量は基礎代謝量※1の低下に比例します。基礎代謝量は、男性は15~17歳、女性は12~14歳児をピークとし、それ以降は低下していくことから、筋肉量も10代をピークとして減少していくことがわかります(グラフ2)。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~2歳 | 730 | 660 |
3~5歳 | 920 | 840 |
6~7歳 | 1,020 | 910 |
8~9歳 | 1,140 | 1,040 |
10~11歳 | 1,330 | 1,240 |
12~14歳 | 1,550 | 1,350 |
15~17歳 | 1,570 | 1,270 |
18~29歳 | 1,520 | 1,180 |
30~49歳 | 1,520 | 1,140 |
50~69歳 | 1,380 | 1,100 |
70歳以上 | 1,230 | 1,030 |
骨や筋肉は10~30代をピークに低下していくことから、若いうちから骨や筋肉を丈夫に保つためには、適度な運動を行い、栄養バランスの整った食事を摂ることが大切です。運動と食事をおろそかにした生活習慣では、40~50代で身体が衰え初め、60代以降には移動機能が低下して、日常生活に支障をきたす可能性があります。
また、肥満では関節にかかる負担が増大し、反対に痩せすぎでも骨がもろくなったり、筋肉が弱くなったりするために筋肉や骨への負担が大きくなります。過度なスポーツや準備運動の不十分、家事や仕事での無理な姿勢や使い過ぎでも、怪我や障害を起こしやすくなり、移動機能の低下を引き起こします。
- ※1 基礎代謝量:
- 基礎代謝量とは、覚醒状態で必要な最小源のエネルギーのこと3)
運動器疾患の発症による移動機能の低下
筋肉や骨は加齢により、だんだん機能が低下していきます。膝や腰の痛みや不調を感じても「年のせい」だと放置しておくと、骨粗鬆症※2、変形性関節症※3、変形性脊椎症※4などの運動器疾患が背景にあった場合には、病状が進行して重篤化していきます。
関節を構成している関節軟骨や椎間板などの組織は、一旦すり減ると、元に戻ることはありません。早めに自分の体の不調に気づき、医療機関を受診して適切な治療を開始することが必要です。放っておくと、運動器疾患のもたらす障害によって、移動機能が低下し、日常生活に介助が必要となるリスクが上がります。
日常生活に介助が必要となる要支援・要介護状態になると、自分で思うように動けないため、外出することが億劫となり、気分も落ち込んで家に閉じこもりがちとなります。そうなると、意欲や活動量が低下し、ますます運動器機能の低下につながってしまいます。
- ※2 骨粗鬆症:
- 骨粗鬆症とは、骨が弱くなってもろくなり、尻もちをついたり、転んだりするだけで簡単に骨折するようになります。「背中が丸くなってきた」、「身長が低くなった」など、大きなきっかけがないまま背骨がつぶれてしまっていることもあります。
- ※3 変形性関節症:
- 変形性関節症とは、関節を保護するクッションの役割をしている関節軟骨がすり減り、関節の痛みや腫れ、曲げ伸ばしの制限などの症状を生じます。膝関節や股関節に多くみられます。
- ※4 変形性脊椎症:
- 変形性脊椎症とは、背骨と背骨の間にある椎間板のすり減りや、背骨にトゲのような骨ができる変形がみられます。変形した背骨に圧迫され、神経が通っている脊柱管が狭くなると、足のしびれや痛み、脱力感などがみられ、歩くことが障害されます。
ロコモティブシンドロームの原因となる要因4)
具体的には、以下のようなことがロコモティブシンドロームを引き起こす原因となります。
- 加齢
- 運動不足
- エレベーターや自動車などの利用による活動量の低下
- 過度なスポーツ、無理な姿勢や使い過ぎによる怪我や障害
- 肥満、痩せすぎ
- 腰や膝などの痛みや不調の放置
- 骨粗鬆症、変形性関節症、変形性脊椎症などの運動器疾患
- 外出機会の低下
参考文献
- 日本整形外科学会ロコモティブシンドロームパンフレット(2015年版)