ノロウィルス感染症
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年6月21日 10時55分
ノロウイルス感染症の症状
ノロウイルスの潜伏期間は1日から2日とされており、吐き気、嘔吐、下痢が主なノロウイルス感染の症状です。腹痛や頭痛、発熱、悪寒、筋肉痛、咽頭痛、倦怠感など風邪のような症状を伴う場合もあります。多くは、特別の治療をしなくても1日から2日で軽快しますが、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者では脱水や嘔吐物での窒息・誤嚥性肺炎に注意が必要です。
ウイルスは症状が良くなった後も、3日から7日間程度、便へと排出されるので二次感染の恐れがあります。
ノロウイルス感染症の原因1)
ノロウイルス感染症の原因となるノロウイルスは、1968年にアメリカの小学校で急性胃腸炎が発生した時に患者の便からみつかり、ノーウォークウイルスと呼ばれてきましたが、2002年に国際ウイルス命名委員会によってノロウイルスと命名されました。
ノロウイルスは主に経口感染によってヒトに感染しますが、以下に示すように、汚染された食品や二枚貝、水などによって起こる場合と、ノロウイルス感染者からの感染による場合とがあります。
一年を通して感染者はみられますが、特に12月から翌年の1月にかけて多くみられます。
- 感染した食品取扱者を介して、食品がノロウイルスに汚染され、その食品を食べることで感染する場合
- 海水中でノロウイルスに汚染された二枚貝を加熱調理が不十分な状態で食べた場合
- ノロウイルスに汚染された水を消毒が不十分な状態で飲んだ場合
- ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物の処理をした際に、便や嘔吐物内に排出されたウイルスが手に付き、口などから侵入して感染する場合
- 家庭内や介護施設などヒト同士が接触する機会が多い場所で、ヒトからヒトへ飛沫感染する場合
ノロウイルス感染症の診断1)2)
ノロウイルスの診断には便を電子顕微鏡で観察する方法が基本となりますが、医療機関では行えず、集団感染や食中毒が起こった時に研究機関や行政機関で原因究明のために行われる検査です。
医療機関では、「ノロウイルス抗原検査」によって、便の中のノロウイルスを検出する方法があります。医師が必要であると判断した場合に、3歳未満、65歳以上の方には健康保険が適用されます。結果は早くわかりますが、ノロウイルスに感染していても陽性反応が出ない時もあります。
ウイルスDNA/RNAを詳細に解析したことによって、高感度にノロウイルスの定量測定が可能となり、新しい診断方法としてリアルタイムRT-PCRシステムが開発されています。
ノロウイルス感染症の治療1)
ノロウイルスに効く抗ウイルス剤はなく、整腸剤や痛み止めなどの対処療法が基本となります。抵抗力や体力が弱い乳幼児や高齢者では、嘔吐や下痢による脱水症状や体力の消耗が起こらないように水分と栄養を十分補給するようにします。重度の脱水症状の場合は、病院で輸液の点滴などの治療が必要となります。
ノロウイルス感染症の感染対策1)
ノロウイルスの感染対策は、食品中のウイルスの感染性をなくすことと、ノロウイルス感染者からの二次感染の予防です。
食品中のウイルス感染性をなくす方法
ノロウイルスに汚染された食品の感染性を失くすためには以下の方法が有効です。
- ノロウイルスの汚染のある二枚貝などは、中心部を85度から90度で90秒以上加熱すること
- 二枚貝の調理の際には専用の調理器具を使用し、使用したらすぐに洗浄と熱湯消毒をして、他の食材への感染を防ぐこと
- 抵抗力の弱い乳幼児や高齢者などは、中心部まで加熱した食材を使用する
ノロウイルス感染者からの二次感染予防の方法
ノロウイルス感染者からの二次感染の予防には、以下の方法が有効です。
- 調理前や食事前、トイレに行った後、患者の便や嘔吐物の処理を行った後は必ず手洗いをします。石けんをしっかり泡立ててウイルスを手から剥がれやすくし、ブラシなどを使用して手指や爪の間も洗いましょう。
- 爪は短く切りましょう
- 調理器具や食器は洗剤で洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)または、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤に浸して消毒します。
- まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオルなどは熱湯(85度以上)で1分以上加熱します。
- 家庭などで、床などに飛び散った便や嘔吐物の処理をする場合は、使い捨てのガウン(エプロン)、マスク、手袋を着用し、ペーパータオルなどで拭き取ります。その後、次亜塩素酸ナトリウムを浸すように拭き取り、水拭きをします。処理に使用したペーパータオルなどはビニール袋に入れ、次亜塩素酸ナトリウムを廃棄物が浸るように入れて、密閉して捨てます。
- 便や嘔吐物が布団のシーツなどに付いた際には、洗剤を入れた水の中でもみ洗いをしたのち、85度の湯で1分間以上洗濯するか、次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。高温の乾燥機やアイロンなどで熱を加えることも有効です。
- オムツを替える場合は手袋をして処置を行い、すみやかにオムツを閉じて、次亜塩素酸ナトリウムを浸した袋に入れて、密閉して処分しましょう。