健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

静脈栄養の適応と管理

公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 20時11分

静脈栄養の目的は?

 静脈栄養には中心静脈栄養法と、末梢静脈栄養法の2種類があります。

 中心静脈栄養法は、鎖骨下静脈などの中心静脈にカテーテルを留置し、高カロリー輸液などの完全な栄養を、静脈的投与することを目的とします。生命活動や成長に必要な5大栄養素である炭水化物、タンパク質、アミノ酸、脂質、ミネラル、ビタミンのすべての栄養素を、中心静脈から点滴により注入します。

 一方の末梢静脈栄養法は、末梢静脈にカテーテルを留置して行われる静脈栄養法で、主に水分電解質の補給、10%ブドウ糖液やアミノ酸製剤、脂肪乳剤を使用します。1日あたりおよそ1,000Kcal程度のカロリーを投与することを目的としています。

静脈栄養法の特徴は?

 中心静脈栄養法は、主に長期間の生存や成長が、経口摂取や経腸栄養を投与しなくても可能となることが特徴です。また、中心静脈栄養は、末梢静脈栄養と比較すると、長い期間に渡ってカテーテルを留置することが可能です。

 一方、末梢静脈栄養法は、簡易的に静脈栄養法を施行できるということが最大の特徴です。主に電解質や糖質の輸液、アミノ酸製剤や脂肪乳剤などを投与することができます。組み合わせにより1日あたり1,000Kcal~1,200Kcalのエネルギーの投与が可能となるものの、それ以上のカロリーを確保できる輸液製剤を投与すると、血管炎を起こす可能性があるため、推奨されません。

静脈栄養法の適応は?

 静脈栄養法の適応の大前提は、中心静脈栄養法、末梢静脈栄養法ともに、

  • 様々な状況によって消化管が使用できない
  • あるいは使用すべきではないと医師が判断した場合
  • 使用できても不十分な場合がある

という判断基準があります。その上で、中心静脈栄養法を適応する場合は、栄養管理をする期間が7~14日以上と長期にわたるときです。一方の末梢静脈栄養法は、7~14日以内の栄養管理となる場合に適応されます(図)。

図:栄養療法の選択の基準における静脈栄養を選択するフローチャート。静脈栄養が7日から14日以内の場合は末梢静脈栄養法を、7日から14日以上と長期になる場合は中心静脈栄養法を適応します。
図:栄養療法の選択の基準と、静脈栄養の選択1)より作図

 近年では末梢静脈に専用のカテーテルを挿入する、PIカテーテルが認められてきており、長期間の栄養法や高カロリーの栄養を、PIカテーテルを挿入した末梢静脈から行う場合もあります。

静脈栄養法の管理は?

 中心静脈栄養法では、カテーテルを長期間挿入していることによるカテーテル感染の可能性があります。血管や血液への感染によって、敗血性ショックを起こす可能性もあります。そのため、挿入部の発赤、腫脹、熱感、発熱の有無の観察は、重要な観察項目となります。また、カテーテル挿入部を被覆しているドレッシング材は、週1~2度のペースで交換をするようにしますが、全ての操作を行う上で、無菌操作を徹底させることが必要です。カテーテルを固定するときは、活動範囲に合わせた長さを考慮し、固定をするようにしましょう。

 末梢静脈栄養法では、カテーテルは感染予防の観点から、72~96時間の間に交換することが推奨されます。中心静脈栄養法と同様、挿入部からの感染を起こすことが考えられるため、挿入部の発赤、腫脹、熱感の有無を観察することが重要です。また、体動が多い部位でもあるため、体動によって投与している薬剤が、血管外へ漏出する可能性もあります。挿入部の明らかな腫脹が見られた場合は、カテーテルを抜去(ばっきょ)し、別の血管へ再挿入することになります。

 末梢静脈栄養法は特に活動時に影響が出やすい栄養法です。固定時には必ず、患者の動きを制限せずに、動いても抜けることがない適切な長さで固定します。

 どちらの静脈栄養法も、滴下速度の確認は、管理の上での必須事項です。緩やかに、一定速度で投与されているかを確認しましょう。滴下が明らかに見られない場合は、閉塞している可能性もあります。

参考文献

  1. 静脈経腸栄養ガイドライン 第3版 Quick Reference, 一般社団法人日本静脈経腸栄養学会

無料メールマガジン配信について

 健康長寿ネットの更新情報や、長寿科学研究成果ニュース、財団からのメッセージなど日々に役立つ健康情報をメールでお届けいたします。

 メールマガジンの配信をご希望の方は登録ページをご覧ください。

無料メールマガジン配信登録

寄附について

 当財団は、「長生きを喜べる長寿社会実現」のため、調査研究の実施・研究の助長奨励・研究成果の普及を行っており、これらの活動は皆様からのご寄附により成り立っています。

 温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

ご寄附のお願い(新しいウインドウが開きます)

このページについてご意見をお聞かせください(今後の参考にさせていただきます。)