健康長寿ネット

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がんの緩和ケア

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 20時10分

緩和ケアの定義とは?

 緩和ケアとは、終末期における痛みの緩和だけではありません。世界保健機関(以下、WHO)が2002年に発表した、がんの緩和ケアの定義では「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、 心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を改善するアプローチである。」としています。また、WHOでは、緩和ケアとは以下のようなものであるとしています1)

  • 痛みやその他の苦痛を伴う症状を軽減する
  • 生命を尊重し、死を自然なプロセスとみなす
  • 死を早めたり、延期したりはしない
  • 患者のためのケアの心理的側面と精神的側面を統合する
  • 死を迎えるまで、患者が可能な限り積極的に人生を送ることを支援する
  • 家族が、患者の病気や死別後の生活に適応できるよう支援する
  • 患者が事前に明示している場合、死別後のカウンセリングを含む、患者とその家族のニーズに対応するためにチームアプローチを適応する
  • QOLを向上させることで、病気の経過に良い影響を与える
  • 延命を目指す、化学療法や放射線療法などのとも関連し、苦痛を伴う臨床的な合併症の理解と対応に向けた調査研究をも含んでいる

緩和ケアはいつから始めるか?

 例えば、がんの緩和ケアは、がんが進行してからではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものとされています。がんの手術後やがんそのものによる痛みなどの症状、治療による副作用など身体の辛い症状を、薬などを使って緩和することはもちろんですが、それだけが緩和ケアではありません。辛い症状によって食事ができない、睡眠がとれないなどといった、日常生活における辛い側面に対しても、緩和ケアを提供していくことができます。

 その他にも

  • がんと診断されたことによる不安や落ち込み
  • がんによる症状が進行したことによる転移への不安
  • 終末期における自宅療養に対しての不安

などといった精神的な辛さも、緩和ケアを提供していきます。

あるいは、医療費の問題といった経済的な側面や、家族の不安など、あらゆる側面からの"辛さ"を取り除いていくことが、緩和ケアの基本となります。緩和ケアは、どの側面においても、自分または家族が"辛い"と感じた時からスタートします。つまり、緩和ケアを受ける時期は一律には定まっておらず、必要な時に、必要に応じて、必要なケアを始めるのが良いとされています。

 緩和ケアの大きな目的は"自分らしく過ごせるようにすること"です。そのため、あらゆる側面から診て、幅広く支援していくこととなるのです(図)。

図1:全人的苦痛をもたらす背景を示した模式図。全人的苦痛は精神的苦痛、身体的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛のあらゆる側面からもたらされることを表す
図:全人的苦痛(トータルペイン)をもたらす背景

緩和ケアはどうやって受けることができるのか

 現在の緩和ケアは、入院して必要なケア受ける、外来で緩和ケアチームによるケアを受けるなど、様々な方法で受けることができます。

 入院の場合は一般病棟に入院し、緩和ケアチームからの診療やケアを受ける方法と、緩和ケア病棟へ入院してケアを受ける方法があります。外来では、緩和ケア外来を受診することで、ケアを受けることができます。近年では在宅緩和ケアや在宅ホスピスを行う医療者も増えており、以前よりも緩和ケアを受けやすい環境が整ってきています。

 緩和ケアは、緩和ケアチームという専門の医療チームが中心となって担当します。チームの編成は医師、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカー、リハビリスタッフ、臨床心理士など、様々な職種のスタッフで構成されます。

 この緩和ケアチームは、がん診療連携拠点病院などの医療機関であれば必ず存在していますが、中には一般の病院にも存在していることがあります。在宅での緩和ケアは、在宅医や訪問看護師などを中心とした、医療チームにより提供されます。

 また、「家に帰りたい」「慣れ親しんだ家で最期を迎えたい」という、在宅での療養に対する思いがあれば、医療職、看護職、介護職などがチームを組んで、サポートします。

参考文献

  1. WHO Definition of Palliative Care, World Health Organization(WHO) (英語外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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