喀痰・咳嗽(かくたん・がいそう)
公開日:2016年7月26日 23時00分
更新日:2019年8月 5日 16時42分
喀痰(かくたん)は一般に痰と呼ばれています。咳嗽(がいそう)は咳のことです。
喀痰・咳嗽の症状
喀痰は主に咳をしたときに喉のほうから出てくる粘液状のものです。一言で痰といってもいろいろな性状があります。
いろいろな喀痰
- 粘液性:白くねばねばした痰
- 膿性:黄色い色で強い粘りがある
- 粘膿性:粘液性と膿性が混じった痰
- 漿液(しょうえき)性:水のようにサラサラで無色透明
- 漿液粘膿性:漿液性と粘液性と膿性がまじった痰
- 粘性線維素性:粘りがあり、透明感のある鉄さびのような赤茶色の痰
- 血性:血の混じった痰(痰はなく血だけが出てくるのは喀血(かっけつ)と言います)
咳嗽
咳嗽は肺や気道から強制的に空気を排出するために起こります。気道内に喀痰や異物があると反射的におき、体を守っています。
- 乾性咳嗽:乾いた咳、空咳などとも表現される、痰がからまないコンコンといった咳
- 湿性咳嗽:痰のからんだ咳、ゴボゴボといった咳
喀痰・咳嗽の原因
気道はいつでも濡れた状態にしておくために分泌液が出ています。気道が乾くとウイルスなどに感染しやすくなるからです。(ですから空気が乾燥する冬に風邪をひきやすいのです。)この分泌物はウイルスや細菌、異物などが気道に入ると量が増え、病原体をくるんで外に押し出しやすくしています。気道の表面は肺からのどへ向かって常に細かく運動しており、分泌液にくるまれた病原体がその運動によってのど、そして口から外へ排出されます。これが喀痰です。
咳嗽は気管やのどの表面が刺激されると反射的におきます。たとえば乾いた空気や冷たい空気を吸い込んだりして咳が出ることもあれば、気道に炎症があってその刺激で咳が出たり、喀痰などを早く排出するために出ることもあります。
喀痰や咳嗽の原因となる代表的な病気は以下の通りです。
喀痰を伴う咳嗽(湿性咳嗽)
- 風邪
- インフルエンザ
- 気管支炎
- 気管支拡張症
- 肺炎
- 肺水腫
- 副鼻腔炎(ちくのう)
喀痰を伴わない咳嗽(乾性咳嗽)
- 気管支ぜんそく
- 間質性肺炎
- 肺結核
- 気胸
- 肺がん
- 喫煙者
- 心因性(緊張などによる咳)
喀痰・咳嗽の診断
喀痰が排出されるような病気では、咳の反射が低下するような基礎疾患がない限り咳を伴います。そのため、まずは咳の期間である程度原因を予想します。
3週間未満の咳は急性咳嗽といい、ほとんど感染が原因です。特別な経過やほかに特別な症状があれば、必要に応じて胸のレントゲンやインフルエンザの検査などを行います。
3週間を過ぎ、8週間未満の咳は遷延(せんえん)性咳嗽といいます。遷延性咳嗽であっても多くは感染後の名残であることが多いのですが、症状がだんだん強くなったり通常の経過と異なることがあればレントゲンで経過をみたり、喀痰の検査で細菌や悪性細胞の有無をみる検査を行うこともあります。すでに咳止めが出ているのに改善しない場合はアレルギーや胃酸逆流などを考え、薬を変えて反応をみることもあります。
8週間を過ぎた咳は慢性咳嗽といい、感染以外の原因が考えられます。頻度が多いのは咳喘息やアトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症などです。これらを診断する検査は特殊なものが多いため、検査を行って診断するのではなく、症状から疑われる病気に対して効果のある薬を使用し、その反応で判断する診断的治療が行われます。
また、高齢者で忘れてならないのは結核です。典型的な肺結核はレントゲンでもわかりますが、レントゲンでは診断のつかない結核もあるため、痰を採取して遺伝子検査や培養検査を行ったり、血液検査で結核感染後に出る反応の有無をみることもあります。結核は場合によっては診断に2か月以上かかることもあります。
喀痰・咳嗽の治療
治療は、3週間未満の急性咳嗽の場合は症状を抑える薬を主に使います。鎮咳剤(咳止め)や去痰剤、気管支拡張剤や抗アレルギー剤などです。細菌感染が疑われるときには抗生剤を併用します。
3週間を超える咳嗽では診断的治療を兼ねて可能性の高い疾患に合わせた薬に変更することもあります。
症状が改善しても病気によっては長期の治療が必要です。たとえば咳喘息の場合は一部の人が喘息になるため2年ほど治療を継続することが勧められています。肺結核の場合は半年程度の治療が必要です。
喀痰・咳嗽の予防、ケア
咳や痰の原因を診断するには咳や痰の性状や経過がとても重要です。咳が出始めたころ発熱はあったのか、のどの痛みはあったのかなど一緒にみられた症状や経過はメモをして受診するととても参考になります。
咳や痰は程度によっては体力を奪ったり睡眠を妨げることがあり、そのような時には薬による治療が勧められます。しかし咳も痰ももとは病気から体を守る反応であり、特に咳は止めないほうがいい時もあります。咳止めの使用については医師と相談しましょう。
タバコを吸っている人はタバコを止めるだけで咳や痰が改善することがあります。これは本人が吸っていなくても周りの人が吸っている場合も同じです。
高齢者では逆に咳反応が低下していることもあります。このような場合は、時に咳を増やす薬を使用することがあります。誤嚥などによる肺炎を予防するためです。