脳血管疾患のケア
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年6月20日 17時23分
脳血管疾患のリハビリテーション
脳血管疾患の多くは、ある日突然発症し、様々な後遺症が残ることが多い疾患です。そのため、機能回復と維持を目的としたリハビリテーション(以下:リハビリ)が重要な役割を果たしています。リハビリは早期から適切に行われれば、ある程度まで機能を回復できることが多いといわれています。
一方で、以前まで特に成人の脳の機能は変化せず、損傷を受けた場合は完全な回復は望めないと考えられていました。しかし研究が進むにつれて、一度失われた機能もその周囲の脳が新たに活性化することで、再び機能が回復する可能性があることがわかってきました。
そのため、今まではあくまでできなくなってしまった機能の代わりに残っている機能を使うというリハビリが行われてきましたが、それが機能障害そのものの改善を目指すリハビリへと切り替わってきています。
高次機能障害
脳血管疾患の中でも特に「みえない障害」と言われているのが「高次機能障害」です。高次機能障害は、身体障害は軽度であることが多い一方で、自身でも障害を認識することができにくく、また入院中よりも日常生活で出現しやすいため、医療従事者であっても気づきにくいことが特徴としてあげられます。
主に起こる症状は、以下の通りです。
記憶障害
記憶は「記銘」「保持」「想起」の3段階を経て行われています。記憶障害は、この3段階のうちのいずれかが障害されることで起こります。そのため、覚えるべきことを何回も繰り返し復唱したり、すでに知っていることと関連付けるなどをして覚える訓練を行ったり、メモやカレンダーに記入し、忘れてしまったとしても再び思い出せるように習慣づける訓練が行われます。
社会的行動障害
人が社会の中で生きていく上で、感情を周囲に合わせて適切にコントロールする必要がありますが、うまくコントロールすることができず、不適切な行動をとってしまう状態を指します。
具体的には、感情を抑えきれなくなり突然怒り出してしまったり、他人に対して全く興味を示さなくなったりします。
リハビリとして、感情的になりやすいときには、一度自分の行動を振り返る癖をつけられるようにするとともに、周囲の人たちへ理解を求め、トラブルとならないようにあらかじめ予防策をとってもらうなどの対策が必要となります。
遂行機能障害
人がなにかを行う際には、様々な過程を経なくてはいけませんが、その過程が自分の中で整理できず、物事を行うことが難しくなってしまう状態を指します。
例えば、料理を行う際は、買い物にいって食材を購入し、帰宅後それらの食材を調理器具を使って調理する必要があります。しかし、遂行機能が障害されているために段取りが悪くなり、途中で何をすればよいのかわからなくなってしまい、物事を進行することができなくなってしまいます。
リハビリとしては、物事を一度に行おうとせず、一つひとつ確実に行うようにするほか、わからなくなってしまったら周囲に質問し、指示を仰ぐようにする癖をつける訓練を行います。
失語
「読む」「書く」「話す」「聞く」などといった、言語に関する機能が失われた状態であるため、言われたことがわからなかったり、言いたいことが相手に伝わりにくくなってしまいます。
そのため、リハビリによってジェスチャーや絵など、言語以外でコミュニケーションを図れるようにしたり、短い文や単語で、ゆっくり話すよう訓練を行います。