くも膜下出血
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年6月20日 17時21分
くも膜下出血とは
くも膜下出血は、脳の表面にある動脈の一部が破けて、「クモ膜下腔」と呼ばれる部分へ出血が生じます。くも膜下出血を発症した方のうち、社会復帰できる方、重い後遺症が残る方、死亡する方の割合がそれぞれほぼ同率の1/3であるといわれるほど、発症すると重篤となりえる疾患の一つです。
くも膜下出血の原因
くも膜下出血の原因として、最も多いのが「脳動脈瘤の破裂」によるもので、全体の80%以上を占めます。残りの20%のうち、10%が脳動脈そのものに生まれながらの奇形があるケースであり、残り10%はもやもや病などの病気や、事故による外傷によって引き起こされるものとなります。
くも膜下出血の症状
くも膜下症状の特徴的な症状として、「突然起こる激しい頭痛」があげられます。激しいと感じるには個人差があるため、くも膜下出血を発症した方全員が「激しい」と感じるとは言い切れませんが、頭痛の激しさをバッドや鈍器などで殴られたようだと例える方もいます。
出血量が非常に多い場合には、意識障害から呼吸・心停止に至ることまである一方で、脳梗塞や脳出血に多くみられる片麻痺やしびれといった症状が出現することはまれとされています。
くも膜下出血の診断
くも膜下出血を疑う場合、CTでほぼ診断がつきますが、発症から日時が立ってしまっていたり、出血がごく少量だった場合は、CT上では診断できないこともあります。そのようなときには、脳から腰の骨にかけて流れている「脳脊髄液」を調べるために「腰椎穿刺」を行い、脳脊髄液の中に血液がないかどうかによって、くも膜下出血が起こっているかどうかの診断を行います。
他にも、どの位置の脳血管が破けたか、新たな脳動脈瘤がないかどうかの判定もかねて脳血管造影やMRI撮影などを行うこともあります。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血の場合、治療方針としては「脳動脈瘤の再破裂」と「遅延性脳血管攣縮(れんしゅく)」、この二つを予防することが第一となります。
脳動脈瘤は再破裂が起こると予後が非常に悪くなることから、手術にて脳動脈瘤の根元をクリップで止める「クリッピング術」か、動脈瘤の中にコイルを詰め込んで破裂を防ぐ「動脈瘤内塞栓術」が行われます。2つのうちどちらを選択するかは、動脈瘤の場所や形、全身状態、年齢など、様々な条件を考慮し、決定します。
この2つの治療はあくまで「再発予防」の観点から行われるものであり、すでに症状が重篤である場合には、不適応となる場合もあります。
「遅延性脳血管攣縮」は、くも膜下出血特有の症状の一つで、発症後4日から2週間の間に起こるものです。脳動脈が細くなって脳に血液が行き届きにくくなるもので、神経症状をきたさない軽度のものから、広範囲に脳梗塞を起こし重篤な後遺症や生死にかかわる重度のものまであります。遅延性脳血管攣縮に対しては、脳の血管を広げるお薬を使ったり、血管の中で風船をふくらまし、血管そのものを広げる治療などを行い、対策を行います。
クモ膜下出血の予防
クモ膜下出血の80%は、脳動脈瘤によるものです。脳動脈瘤そのものは自覚症状に乏しく、他の検査によって偶然発見されるというケースも少なくありません。
そのため、現在奨励されているのが「脳ドック」と呼ばれるものです。これは人間ドックのコースの一つとして組み込まれていることもある検査で、症状がない状態で脳血管を調べ、事前に脳動脈瘤がないかどうか確認をすることができます。万が一脳動脈瘤が見つかった場合には、再発防止でもでてきた「クリッピング」か「脳動脈塞栓術」を破裂前に行うことで、くも膜下出血の発症を予防することができます。