夏の暑い時の運動の注意点
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2024年2月 9日 14時38分
夏の運動の効果
基礎代謝は一般的に夏に低く冬に高いといわれています1)。夏は冬に比べて、基礎代謝が低いので、その分、身体活動や運動を習慣化してエネルギー効率を上げましょう。
夏の暑い時期は運動すると汗をかきます。汗は、身体の熱を外へと逃がして体温を一定に保つ役割を果たしています2)。運動習慣がない人は汗をかきにくく、身体の中に熱がこもりやすくなります。運動する習慣をつけて汗をかきやすい身体をつくるようにしましょう。
暑い夏は外出する機会も減り、運動不足に陥りやすくなります。室内でも行える運動や夕方の比較的涼しい時間に外へ出るなど、活動時間や場所を工夫して運動を継続しましょう。
夏の運動の注意点
夏の運動では熱中症、脱水に注意が必要です。
こまめな水分・塩分補給
夏の暑い時期の運動では汗をかきます。汗によって身体の外へと出ていった水分を補給することが必要です。運動を行う前にまずコップ1杯以上の水分を摂り、運動中もこまめな水分補給を心がけ、運動後も水分を摂るようにします3)。
血液の中に含まれる電解質成分も汗となって身体の中から失われます。塩分(ナトリウム)は特に多く出ていくので、運動によってたくさんの汗をかくときは、水分とともに塩分の補給も必要となります。塩分の含まれたスポーツドリンクや経口補水液を活用しましょう。スポーツドリンクは、エネルギー補給を目的とした糖分が多く含まれているものもあるため、減量を目的としている方は摂り過ぎには注意が必要です。
高齢者では喉が渇いたという感覚や汗をかく機能が低下します。汗をかいていなくても、喉が渇いていなくてもこまめな水分補給を心がけましょう。
体温を下げる工夫
湿度が高いと暑くても汗をかきにくくなります。汗をかかないと身体の熱がこもりやすくなるのでシャワーを浴びる、水に濡らしたタオルで身体を拭くなど、体温を下げる工夫が必要です。
運動環境に留意
日中の炎天下の時間は避けるようにし、暑さ指数であるWBGT※1を参考にしましょう(関連リンク)。帽子を着用し、通気性のよい服装を選びましょう。風通しの良い日陰で休憩を行うようにしましょう。湿度の高い日は汗をかきにくくなるため特に注意が必要です。休憩を多く挟むなどして体調管理に努めましょう。
関連リンク 環境省熱中症予防情報サイト(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
- ※1 WBGT:
- WBGT(湿球黒球温度)とは、英語のWet Bulb Globe Temperatureの頭文字をとった略語で、気温・湿度・輻射熱の数値による暑さ指数のこと。熱中症予防のために運動や作業の強度に応じた基準値として1954年にアメリカで提案された指標。日本の熱中症予防運動指針では、ほぼ安全(適宜水分補給)、注意(積極的に水分補給)、警戒(積極的に休息)、厳重警戒(激しい運動は中止)、運動は原則中止の5段階で示されています(表)。
WBGT | 湿球温度 | 乾球温度 | 目安 | 内容 |
---|---|---|---|---|
31℃以上 | 27℃以上 | 35℃以上 | 運動は原則禁止 | WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき。 |
28~31℃ | 24~27℃以上 | 31~35℃以上 | 厳重警戒(激しい運動は中止) | WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。体力の低い人、暑さに慣れていない人は運動中止。 |
25~28℃ | 21~24℃以上 | 28~31℃以上 | 警戒(積極的に休息) | WBGT25℃以上では、熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり適宜、水分・塩分を補給する。 激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。 |
21~25℃ | 18~21℃以上 | 24~28℃以上 | 注意(積極的に水分補給) | WBGT21℃以上では、熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の徴候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。 |
21℃未満 | 18℃未満 | 24℃未満 | ほぼ安全(適宜水分補給) | WBGT21℃未満では、通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。 |
- 環境条件の評価にはWBGTが望ましい
- 乾球温度を用いる場合には、湿度に注意する。湿度が高ければ、1ランク厳しい条件の運動指針を適用する
体調管理
運動を行う日は朝食、昼食をしっかり摂り、日頃から栄養バランスの整った食生活を三食摂って、疲れにくい身体をつくっておきましょう。睡眠不足とならないようにしっかりと睡眠をとることも大切です。日頃の体調管理を怠らないようにしましょう。
夏の運動の汗の対処方法
夏の運動の汗の対処方法は、汗を外へと放散させやすい服装を選び、汗をかいたら水に濡らしたタオルでこまめに拭いて身体の熱を下げるようにしましょう。汗が出る分、水分と塩分の補給はこまめに行うようにしましょう。汗をかくような運動を行う時には塩分の含まれたスポーツドリンクや電解質バランスに優れた経口補水液で水分補給を行いましょう。
夏の運動の服装
夏の運動の服装としては、運動によるウェア内の蒸れからウェアと体の間に熱がこもって熱中症になることもあります。汗を身体の外へと放散しやすい吸汗発散機能のあるウェアや通気性の高いウェアを活用しましょう。
また、帽子も熱がこもりにくい通気性のよいものがおすすめです。色は明るい色の方が日光の影響を受けにくくなります。
ボートやヨットなどの海上で行う競技では氷などを装備できるジャケットを着て、運動を行っている筋群以外の体幹部を冷やす方法もあります5)。
熱中症の予防
熱中症は、暑い環境で身体を動かすことにより体温が上がり、汗をかいて身体の中の水分や塩分などの電解質が失われることでめまいや立ちくらみ、足がつる、筋肉痛、汗が止まらないなどの症状がみられます。さらには、頭痛や吐き気、嘔吐、全身倦怠感などがみられるようになり、やがて、身体の中の水分が失われ続けて汗をかかなくなると、体温が上がって脳や身体の臓器がダメージを受け意識障害や痙攣が起こります6)。
熱中症予防5ヶ条
日本体育協会では、スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条を以下のように示しています7)。
1.暑い時、無理な運動は事故のもと
気温が高い時ほど、また同じ気温でも湿度が高い時ほど、熱中症の危険性は高くなります。また、運動強度が高いほど熱の産生が多くなり、熱中症の危険性も高くなります。環境条件に応じて運動強度を調節し、適度に休息をとり、適切な水分補給を心掛けましょう。
2.急な暑さに要注意
熱中症事故は、急に暑くなったときに多く発生しています。夏の初めや合宿の初日、あるいは夏以外でも急に気温が高くなったような場合に熱中症が起こりやすくなります。急に暑くなったら、軽い運動にとどめ、暑さになれるまでの数日間は軽い短時間の運動から徐々に運動強度を増やしていくようにしましょう。
3.失われる水と塩分を取り戻そう
暑いときには、こまめに水分を補給しましょう。
汗からは水分と同時に塩分も失われます。スポーツドリンクなどを利用して、0.1~0.2%程度の塩分も補給するとよいでしょう。水分補給量の目安として、運動による体重減少が2%をこえないように補給します。運動前後に体重をはかることで、失われた水分量を知ることができます。
運動の前後に、また、毎朝起床時に体重をはかる習慣を身につけ、体調管理に役立てることがすすめられます。
4.薄着スタイルでさわやかに
皮膚からの熱の出入りには衣服が関係します。暑いときには軽装にし、素材も吸湿性や通気性のよいものにしましょう。屋外で、直射日光がある場合には帽子を着用するとよいでしょう。防具をつけるスポーツでは、休憩中に衣服をゆるめ、できるだけ熱を逃がしましょう。
5.体調不良は事故のもと
体調が悪いと体温調節能力も低下し、熱中症につながります。疲労、睡眠不足、発熱、かぜ、下痢など、体調の悪いときには無理に運動をしないことです。また、体力の低い人、肥満の人、暑さになれていない人、熱中症を起こしたことがある人などは暑さに弱いので注意が必要です。学校で起きた熱中症死亡事故の7割は肥満の人に起きており、肥満の人は特に注意しなければなりません。
参考文献
- Ⅴ運動の基礎科学 厚生労働省
- 安部孝 琉子友男編著 これからの健康とスポーツの科学 第4版 暑熱環境で運動パフォーマンスを落とさない方法 151p 講談社