筋力とは
公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2019年2月 1日 15時37分
筋力とは、筋が収縮するときに生まれる力のことをいいます。筋は関節をまたがって骨に付着し、関節を曲げ伸ばしすることで筋も収縮、弛緩を繰り返します。おもに関節を曲げるときに力を発揮する筋を「屈筋」、関節を伸ばすときに力を発揮する筋を「伸筋」といい、屈筋と伸筋がバランスよく力を発揮することで思い通りに身体を動かすことができます。
筋力と筋肉量(筋肥大)の違い
どれだけ力を発揮できるかを指す「筋力」と、どれだけ筋が大きいかを指す「筋肥大」は異なります。筋力を高めたいのか、筋肥大したいのかでトレーニングの負荷や回数、休憩時間が異なります(表)。
「1RM※」とは、例えばバーベルを1回上げるのが限界の負荷という意味で、例えば5RMであれば5回上げるのが限界の負荷を指します。筋力を高めたい場合、とても大きな負荷で2~3セット行います。その際、セット間は3分程度の休憩をとり、十分に回復できるようにします。
負荷 | 反復回数 | セット数 | セット間の休憩 | |
---|---|---|---|---|
筋力向上 | 90~100% | 1RM~5RM | 2~3セット | 約3分 |
筋肥大 | 60~80% | 10RM~20RM | 3~5セット | 約1分 |
- ※RM:
- RMとは、Repetition Maximumの略で日本語訳は「反復可能最大重量」です。1RMは1回だけ持ち上げられる最大重量のことを指します。
ただし、すべてが上記に当てはまるというわけではなく、低筋力の場合は低負荷であっても筋力の向上がみられます。
筋力増加の目的・意義
年齢、性別に関わらず、適切にトレーニングを行うことで筋力を高めることができます。筋力と健康には高い関連があり、筋力が低下すると「サルコペニア」という状態に陥り日常生活に悪影響をきたします。日常生活活動を自立的に行うためには歩く、身体を支える、物を持ち上げるという動作が必要になりますが、ある程度の筋力があることで不自由なく行うことができます。健康的に、自立的に生活していくために筋力は必要不可欠な要素なのです。
筋力増加のメカニズム
筋力トレーニングを開始して比較的初期における筋力の増加は、筋線維を収縮させる神経系の向上により、より多くの筋線維が収縮することで起こります。つまり、神経から筋への命令がうまく伝わるようになるのです。
次に起こるのが、筋線維1本1本が肥大化する「筋肥大」です。トレーニングで筋に負荷をかけることにより筋線維は部分的に損傷(断裂、破裂等)します。損傷した筋線維は回復期を経て、損傷する前よりも少し太い筋線維へと修復されます。この現象を「超回復」といい、超回復を繰り返すことで筋線維が太くなり、筋力の強化につながります。しかし、トレーニングの頻度が多すぎると超回復が起こる前に損傷を繰り返し、筋力低下を招くオーバートレーニングに陥ってしまうことがあります。
筋力増加のポイント
トレーニングを効果的に行うための3つの原理と5つの原則があります。これらの原理、原則はすべての筋力向上だけでなく心肺機能や柔軟性などあらゆるトレーニングに共通します。今回は筋力増加の目的に当てはめて説明します。
トレーニングを効果的に行うための3つの原理
過負荷(オーバーロード)の原理
筋力を高めるためには適切な負荷をかける必要があります。その人にとって低負荷すぎると筋が損傷するような刺激にはなりません。「きつい」と感じるくらいの負荷をかける必要があります。トレーニングを継続する中で筋力は増加していくため、負荷を徐々に上げていくことも大切です。
特異性の原理
筋力を高めるためには、筋力の増加が期待できるトレーニング内容を選択しなければなりません。目的に合わせてトレーニングの種類を選ぶということが特異性の原理です。筋力増加を目的とする場合は、ある程度の負荷をかけた状態の筋力トレーニングを行う必要があります。
可逆性の原理
トレーニングで筋力が増加したとしても、トレーニングをやめてしまうと筋力は元に戻ってしまいます。継続が大切ということです。
トレーニングを効果的に行うための5つの原則
全面性の原則
トレーニングを行う場合は、全身的にバランスよく行うことが大切です。上半身だけ、または、下半身だけや、一部の部位のみを鍛えることは傷害のリスクを高めることもあります。身体全体の筋バランス等も考慮しながら鍛えていきましょう。
漸進性の原則
筋力が高まるにしたがい、トレーニングの負荷も徐々に(漸進的に)上げていかなければトレーニングの効果は得られにくくなります。過負荷の原理と共通しています。
意識性(自覚性)の原則
トレーニングで鍛えている筋肉の部位を意識しながら行います。「このトレーニングでは〇〇の筋を使っている」と意識しながら使っている筋肉の部位に集中することで、効果を得られやすくなるといわれています。また、トレーニングの傷害の予防にもつながります。
個別性の原則
人によってトレーニングの適切な負荷や頻度等は異なります。自分の年齢や性別、体力・筋力に合わせて負荷を設定することが効果を得るための重要なポイントの1つになります。
反復性の原則
トレーニングは1回行っただけでは効果は得られません。トレーニングを繰り返し、継続的に行うことが大切です。