自律訓練法の健康効果とは
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年2月 1日 18時24分
自律訓練法とは
自律訓練法は、1932年にドイツの精神科医シュルツ(Schultz, J. H.)によって体系化されたもので、シュルツによると「中性催眠状態を得るための生理的合理的訓練法であり、心身全般の変換をもたらすものである」と述べられています。
不眠、食欲不振、便秘や下痢など様々な症状が現れることがありますが、これは自律神経系の働きが悪くなったために起こります。自律訓練法は、自己催眠により意識的にリラックス状態をつくり、自律神経のバランスを回復させる最も基本的な治療法として精神科や心療内科で導入されています。
自律訓練法を行う際には、次の手順を踏み指定された状態になります。
- トイレは済ませておく。
- ベルト、めがね、時計、ネックレスなどは外し、きつい下着などは緩めておきます。
- 髪をうしろで束ねている場合にはほどきます。
- 部屋は暗くし、雑音の少ない落ち着ける場所をつくります。
行う際は仰向けに寝た状態か、椅子に腰かけた状態になります。寝た状態で行う場合には床などの硬い場所ではなく、布団やマットなどリラックスできる場所にします。
一方で自律訓練法を行っても意味がないとされる禁忌症、非適応症があります1)。
- 治療意欲がない者
- 自律訓練法の練習中の徴候や練習そのものを十分に監視できないとき
- 急性精神病や統合失調症的反応の激しいとき
- 知的能力がかなり劣っている患者
- 5歳以下の子ども
です。
自律訓練法の健康効果とは
一般的に自律訓練法では以下のような効果が期待されます。効果に個人差はありますが、精神、身体活動が安定することが主な効果として行われます。
自律訓練法の効果
- 疲労の回復
- 穏やかな気持ちの獲得
- 自己統制力の増加による衝動的行動の減少
- 仕事や勉強の能率の向上
- 身体的な痛みや精神的な苦痛の緩和
- 向上心の増加
自律訓練法の公式やコツ
自律訓練法では、軽く目を閉じた状態で決まった言語(言語公式)を唱えます。言語公式は声を出さずに心の中でくり返すようにします。
自律訓練法の公式
- 背景公式:「気持ちが落ち着いている」(図)
- 第1公式:「右腕が重たい→左腕が重たい→両脚が重たい」
- 第2公式:「右手が温かい→左手が温かい→両脚が温かい」
- 第3公式:「心臓が規則正しく打っている」
- 第4公式:「楽に息をしている」
- 第5公式:「お腹が温かい」
- 第6公式:「額が心地よく涼しい」
以上の7つの言語公式があります。7つすべてできなければ効果がないということではありません。大部分の人が第2公式まで行って効果を実感するとのことです。時間は1回3~5分で毎日2~3回行います。
訓練を終えるときは、最後に「消去動作」を行って自己催眠状態から醒めてください。両手を上げて大きく伸びをしたり、両手を強く握ったり、開いたり、肩や首を大きく回すなど、意識や筋の状態を通常レベルに引き上げるための動作です。ただし入眠前であれば、消去動作はせずにそのまま眠っても大丈夫です。
自律訓練法の副作用
自律訓練法終了後、消去動作を行わないと眠気や倦怠感を感じたり、意識がぼーっとしてしまうことがあります。そのほか、副作用的な反応が生じることを防ぐため、
- 心筋梗塞の患者
- 糖尿病患者で長期間の監視が不可能なとき
- 低血糖様状態の患者
- 退行期精神病反応、迫害妄想、誇大妄想を示す患者
などには自律訓練法は行わないようにします。
自律訓練法はどこでできるか
自律訓練法は基本的には医師の指導の下で行います。そのため自律訓練法を希望する際は、医師からの診察を受ける必要があります。心療内科や精神科のほか、内科、小児科(子どもの場合)、歯科などでもこれまでに自律訓練法を用いた報告があるため、受診してみるとよいでしょう。受診した診療科に自律訓練法を取り入れているところがないときは、紹介してもらえるかどうか聞いてみることもできます。全ての医療機関が自律訓練法を取り入れているわけではないため、事前に相談をしてみるとよいでしょう。
参考文献
- 松岡洋一 心身症における自律訓練法の適用 心身医学 2012 52: 32-37