高齢者のICT利活用の状況
公開日:2019年8月 9日 10時00分
更新日:2024年2月14日 13時51分
現代の生活に欠かせないインターネット
現代を生きる人々の生活に欠かせない技術に、インターネットが挙げられます。パソコンやスマートフォンなどの情報端末機器を用いてインターネットを利用することで、様々な情報を得たり、家族や友人、知人と連絡を取り合ったりすることは日常生活において身近になっています。インターネットの利用は高齢者にとっても例外ではなくなってきています。
インターネット利用状況1)
総務省がインターネットの利用状況を調査した「平成30年(2018年)通信利用動向調査の結果」(令和元年(2019年)公表)をみてみましょう。
通信利用動向調査の結果によると、調査対象となっている6歳~80歳以上全体のインターネット利用状況は79.8%となっています。平成13年(2001年)の調査では46.3%で、その後も増加傾向が続き、平成25年(2013年)以降は80%以上の人がインターネットを利用しているという結果になりました(図1、表1)。
利用割合 | |
---|---|
平成13年 | 46.3 |
平成14年 | 57.8 |
平成15年 | 64.3 |
平成16年 | 66.0 |
平成17年 | 70.8 |
平成18年 | 72.6 |
平成19年 | 73.0 |
平成20年 | 75.3 |
平成21年 | 78.0 |
平成22年 | 78.2 |
平成23年 | 79.1 |
平成24年 | 79.5 |
平成25年 | 82.8 |
平成26年 | 82.8 |
平成27年 | 83.0 |
平成28年 | 83.5 |
平成29年 | 80.9 |
平成30年(n=40,664) | 79.8 |
次に平成25年(2013年)から平成29年(2017年)の5年間の年齢階別にインターネットの利用状況をみていくと、13歳~59歳までの年齢階層では、平成25年(2013年)からインターネットの利用率が90%を超えていて、横ばいの状態をキープして今に至っています。これは、インターネット利用が世の中に浸透していることを顕著に表しています(図2、表2)。
平成26年(n=38,110) | 平成27年(n=33,525) | 平成28年(n=40,297) | 平成29年(n=38,630) | 平成30年(n=40,664) | |
---|---|---|---|---|---|
6~12歳 | 71.6 | 74.8 | 82.6 | 73.6 | 67.1 |
13~19歳 | 97.8 | 98.2 | 98.4 | 96.9 | 96.6 |
20~29歳 | 99.2 | 99.0 | 99.2 | 98.7 | 98.7 |
30~39歳 | 97.8 | 97.8 | 97.5 | 97.8 | 97.9 |
40~49歳 | 96.6 | 96.5 | 96.7 | 96.8 | 96.7 |
50~59歳 | 91.3 | 91.4 | 93.0 | 92.4 | 93.0 |
60~69歳 | 75.2 | 76.6 | 75.7 | 73.6 | 76.6 |
70~79歳 | 50.2 | 53.5 | 53.6 | 46.7 | 51.0 |
80歳以上 | 21.2 | 20.2 | 23.4 | 20.1 | 21.5 |
高齢者のインターネット利用動向1)
高齢者のインターネット利用状況はどうでしょうか。
図2、表2のとおり平成26年(2014年)から平成30年(2018年)の5年間では、60代で75%前後、70代では50%前後、80代では20%前後で推移しています。
また、高齢者の利用端末は比較的パソコンがスマートフォンよりも多くなっていますが、50歳代では7割がスマートフォンを利用していることから、今後高齢者もスマートフォンでのインターネット利用が増えてくると思われます。
また、60歳以上の高齢者の男女別では60代、70代、80代いずれも男性の方がインターネット利用率が高いという結果になっています。
インターネットの利用目的1)
インターネットは高齢者にも広く利用されていますが、ではどのような目的や用途のためにインターネットを利用しているのでしょうか。
前述の調査結果から、年齢階層別にインターネットの利用目的・用途についてみると、「電子メールの送受信」がほとんど全ての階層で高くなっており、高齢者層でも第1位になっています。これに「無料の地図交通情報提供サービス」、「無料の天気予報の利用」、「ニュースサイトの利用」、「辞書・事典サイトの利用」と続きます。
これは、家族や友人・知人との連絡手段としての利用や、生活に密着した情報を入手するために積極的にインターネットを利用しているということかもしれません。
50代以下の利用目的として多く、高齢者の利用が少ないものに、「SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の利用」や「動画投稿・共有サイトの利用」という項目があります。今後、インターネットを日常的に利用している世代が年齢を重ね次の世代にスライドすれば、高齢期においてSNSや動画投稿・共有サイトの利用が増えていく可能性は十分に考えられます。
インターネットを活用する高齢者
現在80歳を超えてインターネットを活用している女性がいます。ここでは2人紹介しましょう。
一人目の女性は、ミゾイキクコさん(1934年生まれ)です。ミゾイさんはTwitter(ツイッター)というSNS(ソーシャルネットワークサービス)を平成22年(2010年)からはじめ、現在ではミゾイさんのつぶやきをみているフォロワー人数は約91,300人(2019年3月時点)で、ミゾイさんが1日に何十回もTwitterに投稿する人生観を投影した内容は老若男女問わず多くの人々に支持され、影響を与えているといいます(リンク1)。
二人目の女性は、80歳を過ぎてからプログラミングの勉強を始めた若宮正子です。最高齢のアプリ開発者として、アップルの会議に、招待された人物でもあります。「マーちゃん」の愛称で呼ばれ、世界的に話題になっている女性です。若宮さんは銀行に就職し定年まで勤め、退職後は母の介護の傍ら、パソコンを勉強。2017年からプログラミングの勉強を始め、スマートフォンのアプリを開発しました(動画)。
動画:Now it is time to get your own wings: 若宮 正子 at TEDxTokyo 2014
ここまで大きな話題にならないにしても、今よりも多くの高齢者が今よりももっと気軽にインターネットを利用する時代は、もうすぐそこまできているのかもしれません。
高齢者はどんな機器を使ってインターネットを利用しているのか
ミゾイキクコさんは、10台以上のタブレット端末などを使ってインターネットを利用しているそうです。一般の高齢者ではどのような機器でインターネットを利用しているのでしょう。これについても調査結果がでています。
調査対象全体としては「スマートフォン」によるインターネット利用が60%近くと一番多く、「パソコン」、「タブレット型端末」、「携帯電話・PHS」と続きます。スマートフォンがインターネット利用に大きく貢献していることが分かります(図3)。
年齢階層別にみると、13歳~59歳までの各年齢層ではスマートフォンの利用が7割を超えています。一方60歳以上の年齢層になるとパソコンの利用がスマートフォンよりも多いという結果になっています(図4)。
60歳以上の人がインターネットをスマートフォンやタブレット端末よりパソコンを利用している背景には、パソコンやタブレット型端末に比べ、スマートフォン液晶画面や操作部分の大きさ、その操作性などにおいて、高齢者にとってはまだまだ馴染みが薄く、使いづらさがあるということなのかもしれません。
しかしながら、いくらインターネットを「使う」ことができたとしても、そこには個人情報の漏洩などの脅威があります。インターネットの利用者には、「安全な利用」やそこで得た情報のうちどの情報を信じるのかという「取捨選択する能力」が求められています2)。
高齢者であっても同様です。この点に関してきちんと理解した上で、インターネットを利用・活用する生活を楽しみましょう。