インターネットにおける医療・健康情報の見極め方
公開日:2019年8月 9日 09時00分
更新日:2024年9月 4日 16時49分
インターネットが広く普及し、誰もがさまざまな種類の情報を簡単に発信したり、手軽に手に入れたりすることが容易になりました。医療や健康に関する情報も、その他の情報と同じように容易に手に入れて利用できる時代になりました。しかし、容易に手に入る情報の中には発信者がなんらかの意図をもって書き換えた不適切な情報も含まれます。そこで、インターネットにおける医療や健康に関する情報を利用するにあたり、わたしたちはどのようなことに気をつけていくべきなのでしょうか。
そもそもインターネットの医療・健康情報は信用できるか
自分自身や、家族、親しい友人・知人の健康状態に何かしらの不調やその心配を感じた時など、とにかくいろいろな情報が欲しいものです。インターネットの検索サイトを使って病名や気になる症状を検索することは、誰でも一度はやったことがあるのではないでしょうか。
近年のスマートフォンの普及により、いつどこに居てもどんな時でも、思い立った時にすぐに調べることができるようになりました。
しかし気軽に欲しい情報を調べることができる反面、十分に吟味されていない不確かな情報や、悪意のある誤った情報に触れることがあるのも事実です。
インターネットが普及される以前から、そのような不確かな情報や誤った情報は世の中にたくさんありました。しかし、インターネットが普及した現在においては、インターネット上に公開されている情報量が莫大であるため、不確かな情報に触れる機会がさらに増えました。
そのため、情報の確さを適切に判断せずにインターネットから得た医療・健康情報をうのみに信じ込んで利用してしまい、思わぬトラブルに巻き込まれてしまったり、健康を害してしまったりする恐れがあることは十分に考えられます。
また、情報に触れる人の心理にも注意が必要です。人は芸能人やスポーツ選手などの著名な第三者の経験談や体験談、大学教授や医学博士など権威のある人からの意見を無意識に信用しやすかったりします1)。また、「ビタミンC 1g」と「ビタミンC 1,000mg」では1,000mgの方が量を多く感じたりと、文字や数字を感覚的な印象により錯覚しやすかったりします1)。口コミやレビュー、評価の星の数に流されやすい傾向にあります2)。病気やケガなどで精神的に不安定になっているときに得た情報は、健康な時以上に頼りたくなってしまうものなのかもしれません。
そのため、インターネットの医療・健康情報は信頼できるのか、という問いに対しては、「インターネットで公開されている医療・健康情報のなかには信頼できるものも多数あるが、信頼に値するものかどうかを判断するのは、他の誰でもなく、その情報に触れた自分自身でしかない」という答えになります。
インターネットの医療・健康情報の見極め方3)
インターネットで公開されている医療・健康情報が信頼できるものなのかどうかを見極めにはどうしたらよいのでしょうか。
厚生労働省が運営する「『統合医療』情報発信サイト」では、情報の見極め方についての10か条が示されています。
情報を見極めるための10か条
1.「その根拠は?」とたずねよう
根拠に基づいて考えることを大切にする。
有効であるというその情報は、動物実験ではなく、臨床研究(人に対する研究)で効果が確認されていますか?
2.情報のかたよりをチェックしよう
真実がそのままに伝わっているか、情報が偏っていないかを意識する。
ある治療法の効果について、日ごろのつきあいを気にして「効果がある」と答えた場合や、その治療法の効果を信じて長く通う患者さんにだけ質問し「効果がある」と答えた場合、「効果がある」という情報には偏りがあるのではないでしょうか。そこには「効果なし」と感じ治療に通わなくなった患者さんの情報はありません。
3.数字のトリックに注意しよう
数字の見た目にだまされず、数字に対する期待感や先入観がないかを確認する。
ある治療法について「7割の人に効果あり」と「3割の人に効果なし」の2つの情報があります。どちらも同じことを言っていますが、印象が違います。情報の送り手にとって都合のよいメッセージを出すこともできるのです。
4.出来事の「分母」を意識しよう
成功談や魅力的な情報では、全体のうちどれだけの人のことかを考える。
あるサプリメントの広告に5人の成功体験が紹介されている場合、サプリメントを試した全体の人数が1000人であればその効果は5/1000(=0.005)、100人であれば5/100(=0.05)になります。1つの成功談の裏にはたくさんの失敗があるかもしれないと想像しましょう。
5.いくつかの原因を考えよう
隠れた原因があるかもしれないことに思い至らせる。
「毎朝ジョギングをしたら風邪をひかなくなった」という友人の話を聞いて、「ジョギングのおかげで風邪をひかなくなった」と思うかもしれませんが、マスク着用で外出していたり、手洗いうがいを欠かさなかったのかもしれませんし、十分な睡眠時間を確保していたのかもしれません。原因が何かを思うときには、他にも原因がないかを考えてみましょう。
6.因果関係を見定めよう
ものごとの因果関係を正しく見定める。
例えば、雨乞いをして雨が降ったとして、それは本当に雨乞いの効果なのでしょうか。雨乞いを続けているうちに雨が降ったら、まるで雨乞いの効果のように見えてしまっただけのことです。表面的なできごとをつなぎ合わせ、因果関係があるかのように見せた情報には注意が必要です。
7.比較されていることを確かめよう
科学的な証明に欠かせない「比較」。
比較がない状態での情報は、ただの思い込みかもしれません。病気の原因や治療法など、比較されているか?を確認しましょう。他の方法による場合や、何もしなかった場合のことはわかりません。
8.ネット情報の「うのみ」はやめよう
信頼できるものから怪しいものまで、ネット情報の質はさまざまです。
その情報はどこが出しているものでしょうか。政府機関や大学・研究機関の情報を優先し、サイト運営者の名前や連絡先が示されているか、いつの情報なのか、オリジナルの情報なのかを確認しましょう。
9.情報の出どころを確認しよう
格式が高く感じる出どころの情報であれば等しく信頼できる?
「医師の研究」や「大学教授」「学会発表」といった言葉に影響を受けすぎていませんか?情報を発信している人の所属や資金の出どころにも注目し、都合のよい結果だけが強調されていないかを確認しましょう。学会発表や論文には科学的裏付けがあるか、どのような団体なのか、その団体の資金源はなにかを確認しましょう。
10.物事の両面を見比べよう
利益と危険を比較する。
世の中に出回る情報は、利益(ベネフィット)と危険(リスク)のどちらか一方だけが強調されがちです。たとえば治療法などにはいずれの面も存在することを考える必要があります。とくに医療機関のホームページに掲載されている術前・術後のビフォーアフターの画像や、患者体験談やお客様の声などの、その人の主観に基づく体験談やコメントには注意を払いましょう。
医療・健康情報は、わたしたちに身近なことがらにも関わらず、専門的な側面も大きい情報であることからも、特に正しいかそうでないのか、判断しづらい性格の情報です。
しかし、自分自身の医療・健康について得たさまざまな情報を元に決断しなければならないことが多いのです。たくさんの情報を上記の10か条に照らし合わせ冷静・慎重に見極め、その決断をした自分自身や決断そのものに責任を持つことが求められています。
医療安全支援センターについて
インターネットの医療・健康情報の利用において、万が一のトラブルに遭わないように、専門家に相談することも大切です。
医療に関する心配・相談については、まずはかかりつけの医師に相談することが先決です。しかし、かかりつけ医がいない、見当たらないという場合は日本全国に設置されている「医療安全支援センター」を利用しましょう(リンク)。医療安全支援センターでは、国民の皆様の医療に関する心配や相談をおうかがいしています。