脊髄小脳変性症の症状
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2019年2月 1日 21時53分
「小脳失調」とは
脊髄小脳変性症の症状は、遺伝性か孤発性かなど、分類によって様々となりますが、ほぼすべての脊髄小脳変性症に出る症状は「小脳失調」と呼ばれるものです。
「小脳」とは、「前頭葉」「側頭葉」などと並ぶ脳の一部であり、側頭葉の下、脳幹の横に位置しています。小脳は役割に応じて大まかに分けて「大脳小脳」「脊髄小脳」「前庭小脳」の三つに分けられます。「大脳小脳」は四肢の運動の調節や言語を、「脊髄小脳」は体幹の運動の調節を、「前庭小脳」では平衡感覚や眼球運動の調節を行います。
これらが障害を受けることで出る具体的な症状は、以下の通りです。
体幹失調・酩酊様歩行(めいていようほこう)
体の中心である体幹のバランスがとりにくくなるため、歩くときに両足を開き、体幹を揺らしながら不安定に歩きます。酔ったようにみえるため、「酩酊様歩行」とも呼ばれます。
小脳性構音障害
発声に必要な筋肉を動かしにくくなるため、酔っぱらったような、とぎれとぎれで不明瞭な会話となります。
また、ゆっくりとした話し方になったり、突然大きな声になる爆発性言語がみられることもあります。
協調運動障害
一つの動作を行うための動作を協調して行うことができなくなるため、バッグを取ろうとしてもとれない、キーボードやピアノなど指の細かい動作ができなくなる、A地点からB地点まで最短で指をさすことができず、ジグザグになってしまうなどの症状が出現します。
小脳性震戦
手や足などが目標に近づけようとすると不規則に震えてしまう症状で、目標に近づくほどふるえが大きくなります。
注視方向性眼振
視線をある方向に固定した時、目の位置を固定できずに左右に震えてしまいます。
脊髄小脳変性症の種類によっての症状
脊髄小脳変性症には様々な種類がありますが、特に特徴的な症状が出るのが、以下の二つとなります。
多系統萎縮症
多系統萎縮症では、小脳症状が起きることで発症しますが、進行すると小脳症状と平行して出る症状が「パーキンソニズム」と「自律神経障害」です。
パーキンソニズムでは、安静にしていても手などが震えてしまったり、体を動かすことができにくい「無動」という状態になります。
自律神経障害では、尿が出にくくなる排尿障害や、立ち上がる際に急激に低血圧となることでふらつきやめまいが起こる起立性低血圧などが起こります。
特に多系統萎縮症の場合に出る症状として注意したいのが、睡眠時に起こる「呼吸障害」です。これは発症早期でも発症しうるもので、窒息や睡眠中の突然死にもつながります。
そのため、早い段階から呼吸についての観察を強化する必要があり、外から酸素を送り込む治療を行う他、症状が深刻な場合には人工呼吸器による呼吸管理を行う場合もあります。
優性遺伝性の脊髄小脳変性症
優性遺伝による脊髄小脳変性症の場合、症状が小脳症状のみに限定されている「純粋小脳型」と、多系統萎縮症でも出ていたパーキンソニズムや、手足のしびれ、感覚の鈍麻といった末梢神経障害、筋肉の緊張が低下してしまう錐体外路症状などを合併する「多系統障害型」に大別され、それぞれに合った治療やリハビリテーションが行われます。