脊髄小脳変性症の診断
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 21時52分
脊髄小脳変性症の診断のために行われる検査
脊髄小脳変性症は、原因がはっきりしているものを除いた、運動失調を主要とする神経変性疾患の総称です。
そのため、脊髄小脳変性症という診断の他に、脊髄小脳変性症の中でもどの病気なのかを同時に判別する必要があります。
診断のために行われる主な検査は、以下の通りです。
病歴
脊髄小脳変性症の主症状は「小脳失調」ですが、脊髄小脳変性症以外にも小脳失調を起こす病気があるため、それらと区別するために、今までの病歴を調査します。
例えば高血圧や脳梗塞の既往がある場合は、小脳や脳幹に梗塞ができることでも小脳症状は出るため、そういった小脳症状が出現する病気を発症しやすいかどうかを見極めるためにも、病歴は大切です。
また、遺伝性脊髄小脳変性症の鑑別のために、家族の中で脊髄小脳変性症と診断された人がいないかについての情報も、重要となります。
神経学的な診察
脊髄小脳変性症は神経変性疾患のため、神経学的な診察も重要です。
神経学的な診察とは、意図的に起こすことができないからだの反射や反応をみたり、麻痺など神経症状が出現していないかどうかをみていくものです。
特に、脊髄小脳変性症では「小脳失調」「パーキンソン症状」「麻痺や感覚鈍麻」が出現しやすいことから、これらが起こっていないかを神経学的な診察にてみていきます。
画像検査
画像検査には、おおまかにCT、MRI、そして脳血流シンチグラフィーなどがあげられます。
CT
レントゲンによって撮影するもので、頭を輪切り上にした写真をとることができます。
MRI
磁力を用いた撮影方法で、通常30分ほどの時間がかかります。CTよりも精度がよいため、CT上ではわかりにくい軽度の委縮も見つけやすくなります。
検査に時間がかかるため、予約なしですぐに撮影できるCTに比べて、MRIは予約を入れてから検査を受けるまで時間がかかることも珍しくありません。
脳血流シンチグラフィー
特殊なCTと薬剤を用いて、脳の血流を撮影する検査です。薬剤は検査を行う直前に注射にて行います。
PET
がんの検査にも使われるもので、糖分の代謝機能をみることができます。
脊髄小脳変性症を発症している場合、画像にて小脳の委縮を認めることが多く、疾患によっては小脳以外にも脳幹や大脳皮質全体が委縮している場合もあります。
また、PETにて小脳を中心に糖代謝が低下も認め、脳血流シンチグラフィーでは小脳などに血流量の低下がみられます。
遺伝子検査
家族歴にて脊髄小脳変性症を認める場合、遺伝性脊髄小脳変性症かどうか、またどの種類に属しているのかを調べるために、遺伝子検査を行います。
遺伝子検査にて陽性だった場合、血縁の方も同じく発症する可能性があることがわかるため、検査については本人および家族に十分な説明と同意が不可欠です。
また、発症した遺伝性脊髄小脳変性症によって、異常がみられる染色体も異なることがわかっていますが、詳しい発症機序についてはわかっていません。
これらの検査の結果、総合的に脊髄小脳変性と診断されます。