脊髄小脳変性症の原因
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 21時53分
脊髄小脳変性症の原因とは
脊髄小脳変性症は、大きくわけて二つに分類されます。
それが、「遺伝性脊髄小脳変性症」と「孤発性脊髄小脳変性症」です。まれにそれ以外の「痙性対麻痺」および「そのほかの原因によるもの」がみられますが、ごく少数となります。割合でいうと、遺伝性の方は約29%、孤発性の方が約67%、痙生対麻痺などが約4%となります。
そのため、今回は「遺伝性脊髄小脳変性症」か「孤発性脊髄小脳変性症」の二つを主に取り上げます。脊髄小脳変性症自体完全に解明されておらず、現在でも研究がすすめられているのですが、少しずつ原因となる遺伝子や発症した方に共通してみられる物質などが明らかになっており、さらなる研究および原因の解明、予防策の開発がまたれています。特に、「ミトコンドリア病」と「プリオン病」は臨床症状がよく似ているため、誤って脊髄小脳変性症として診断されてしまうことがあるのですが、これら二つの病気は発生機序が異なっており、脊髄小脳変性症の一部として扱われていないため、注意が必要です。
遺伝性脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症のうち約3割をしめるのが、「遺伝性脊髄小脳変性症」です。
遺伝には、「優性遺伝」と「劣性遺伝」がありますが、遺伝性脊髄小脳変性症の場合、「優性遺伝」による割合が高く、その対比は劣性遺伝を1とすると、優性遺伝は15となっています。また、稀に性染色体であるX染色体遺伝性のものがあります。
この比率は日本での調査結果ですが、欧米ではこの比率が大きく異なっており、なぜ地域や人種によって差があるのかについては、いまだ解明されていません。
優性遺伝で起こる脊髄小脳変性症は、2011年現在、32型まで報告されています。
これらは遺伝子の中の染色体の一部に通常と異なる情報があることがわかっており、それぞれの疾患の一部と関連する染色体は次の通りです。
- SCA-1 第6番染色体
- SCA-2 第12番染色体
- SCA-3(マシャド・ジョセフ病) 第14番染色体
- SCA-6 第19番染色体
- SCA-7 第3番染色体
優性遺伝で起こる遺伝性脊髄小脳変性症のうち、特に発症頻度が高いのが「SCA-3(マシャド・ジョセフ病)」であり、次いで「SCA-6」となります。
このように同じ遺伝性脊髄小脳疾患であっても、関連する染色体は異なっており、疾患によって発症年齢や臨床症状、発病する割合なども違います。
現在、脊髄小脳変性症の研究は進んでいますが、遺伝による発病を阻止できるような病態の解明には至っていません。
孤発性脊髄小脳変性症
孤発性脊髄小脳変性症は、全体のうち約7割を占めており、その大部分は「多系統筋萎縮」と呼ばれるものです。
遺伝性脊髄小脳変性症とは違い、遺伝によって発症するものではないため、血縁の中で孤発性脊髄小脳変性症を発症した方がいたとしても、自分が発症する確立は極めて低くなります。
孤発性脊髄小脳変性症のほとんどを占める多系統筋萎縮では、脳細胞の一部に「グリア」と呼ばれる通常ではみられない物質が確認できますが、なぜグリアが作られ、小脳や脳幹が委縮し、多系統筋萎縮を発症するかは解明されておらず、今後の研究による解明が急がれています。