健康長寿ネット

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肺炎の症状

公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年6月12日 11時47分

肺炎かな?と思ったら

 肺炎の症状として代表的なものは、せきや発熱、呼吸困難、くしゃみ、たん、のどの痛み、胸痛などがあります。風邪の症状に似ていますが、肺炎と風邪とのの違いは症状の重さです(表)。

表:肺炎と風邪の違い
 症状期間
風邪 鼻水、くしゃみ、せき、のどの痛み 38℃くらいまで 数日から1週間くらい
肺炎 胸に鋭い痛み、熱、悪寒、息切れ、せき、全身のだるさ、黄色~緑色や鉄さび色のたん、顔や唇が紫色、呼吸困難 38℃以上の高熱 長く続く

せき

 風邪よりも、かなり激しい咳が出ます。細菌性肺炎の場合は、湿った咳が黄色や緑色などの痰とともに出てきます。非定型肺炎の場合は乾いたせきが長く続きますが痰はあまり出ません。非定型肺炎とは、ウイルスより大きく細菌より小さいサイズの病原微生物が原因で起こる肺炎のことで、代表的なものとしてマイコプラズマ肺炎があります。

発熱

 風邪の場合は、おおよそ38度前後で治まりますが、インフルエンザでは39度以上の高熱が出ることがあります。肺炎も高熱が出ますので、一時的に39度や40度の熱が出ます。しかし、高齢者の場合、あまり高い熱が出ないケースもありますので、自己判断で薬を飲んだりすることは避けましょう。

呼吸困難

 肺胞の中に水が溜まると、息が苦しくなり、呼吸困難となることがあります。重症化すると、酸素をうまく取り込むことができず、体全体が酸素不足になり、チアノーゼ(顔や唇が紫色に変色する)になることもあります。また、肺に水が溜まっていなくても、気管や肺に炎症が起きている場合は、上手く空気を吸い込むことが難しくなり、呼吸困難となることもあります。のどのあたりに痰が溜まっている時も、空気の通り道(気道)が狭くなるので、呼吸困難となります。

胸の痛み

 肺の炎症が強くなり、肺の組織を覆っている「胸膜」まで炎症が広がると、胸が強く痛むことがあります(図)。痛みが長く続く時や、呼吸の動きに合わせて痛みの強さが変化する時は、胸膜の炎症が起きているかもしれません。

図1:胸膜を示す図。胸膜は肺の組織を覆っている。胸膜まで炎症が広がると胸が強く痛む

図1:胸膜

画像:Copyright © 生命科学教育シェアリンググループ1)

 その他の肺炎の症状としては、全身の倦怠感、悪寒、などがあげられます。発症している日数は、風邪の場合は数日から1週間くらいですが、肺炎の場合は1週間以上症状が長く続き、入院治療が必要となるケースが多くなります。

肺炎の症状が起こる仕組み

 肺炎は、細菌やウイルスがのどを通過して、肺にある肺胞に侵入し、炎症を起こすことで発症します。肺胞は、酸素と二酸化炭素のガス交換をする役割をしていますので、肺胞で細菌やウイルスが増殖すると、本来の肺胞が持つ「ガス交換」という機能が上手く働かなくなり、呼吸困難や息切れなどの症状を引き起こします。

 一般的に、「風邪」はのどに感染し、細菌やウイルスが増殖して起こる病気です。そのため、咳とともに痰が出るものの、のどのあたりで作られる痰なので、痰の量が多いことはあっても、比較的、出しやすい痰であることが多いです。風邪の時に発熱するのは、私たちの平常時の体温よりも、少し高い体温の方が、免疫機能が働きやすくなるためです。

 一方で「肺炎」は、肺の奥の方で感染し、細菌やウイルスが増殖して起こる病気です。そのため、咳や痰は肺の奥からこれらを排出しようとして起こりますので、強い咳、粘度が高い痰を出そうとします。痰の量も多く、粘度が高いためなかなか吐き出すことが出来ません。肺炎の時に発熱する理由は風邪と同様ですが、より強い免疫力で細菌やウイルスと戦おうとするため、高熱が続くことになります。

図2:かぜはのどで、肺炎は細胞で細菌やウイルスに感染することを示す図。上気道の絵炎症はかぜ、肺の炎症は肺炎である。肺炎は肺の末端にある肺胞が感染して炎症を起こすとガス交換(呼吸)に障害を生じるため、息苦しいと感じる

図2:かぜはのどで、肺炎は肺胞で細菌やウイルスに感染します

画像:Copyright © Ewelina Kowalska / 123RF 写真素材、Larisa Vasileva / 123RF 写真素材 一部改変

気がつきにくい高齢者の肺炎

 肺炎は、平成27年の死亡原因の3位でした。人数にすると、およそ12万人です。その中でおよそ95%が65歳以上の高齢者であるといわれています。その理由はいくつか考えられますが、もっとも分かりやすい理由は、免疫力の低下や、もともと持っている慢性的な疾患の影響です。

高齢者が肺炎で死亡する理由

 もともとの慢性的な疾患があると、免疫力は常に低下気味となります。慢性的な疾患があると、それに対抗すべく、体はより多くのエネルギーなどを必要とします。さらに高齢になると食事などからエネルギーを上手く取り込むことが難しくなり、免疫力にまでエネルギーが行きわたりにくくなります。

 この状態で肺炎を発症させるような細菌やウイルスに感染すると、免疫力が十分に働くことができません。高齢者が肺炎になっても、あまり高い熱を出さない理由もここにあります。人の体を発熱させるには多くのエネルギーを必要としますが、高齢者になるとこの「発熱させる」機能が十分に働かず、免疫力がその機能を十分に発揮するまで、体温を上げることが難しくなるのです。

 その結果、肺炎の原因となる細菌やウイルスなどの病原微生物を、早期に排除することが出来なくなり、周囲の人が気づいた時には、すでに命にかかわる状態になっていることも珍しくありません。

 例えば、呼吸が浅い、呼吸が速い、無口になる、食欲不振が3~4日続くことです。このような変化は、普段の様子を知っている身近な人しか気がつくことは出来ません。高齢者が自分自身で気づくうちは良いのですが、「何だか体調がおかしい」「いつもとは違う」「風邪が治らない」などに気づいたら、肺炎を疑ってみることが必要です。すぐに専門医を受診して、検査を受けましょう。

画像引用元

1)画像は、生命科学教育シェアリンググループコーディネータから文面で胸膜に関する「一歩一歩学ぶ生命科学(人体)」コンテンツの使用許可を得て、掲載しています。
一歩一歩学ぶ生命科学(人体)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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