肺炎とは
公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2019年2月 1日 21時26分
肺炎とは、肺に炎症を起こす病気のことを指します。この炎症は、細菌やウイルスなどによって起こります。細菌やウイルスは、鼻や口から侵入し、のどを経由して肺の中に入り込みます(図)。健康な人は、この細菌やウイルスをのどでブロック出来ますが、風邪をひいたり免疫力が落ちている時は、細菌やウイルスがのどや気管を通りぬけて肺まで侵入し、炎症を起こします。この状態を肺炎といいます。
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高齢者に多い肺炎による死亡
肺炎は、日本人の死亡原因の第3位です(1位は悪性腫瘍(がん)、2位は心疾患)。肺炎治療に関してはさまざまなお薬が開発されていますが、肺炎は死亡原因の順位を徐々にあげてきています。特に65歳を超えると、肺炎による死亡者が増えてきます(表)。
年齢 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | 第4位 | 第5位 |
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総数 | 悪性新生物 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 老衰 |
0歳 | 先天奇形等 | 呼吸障害等 | 乳幼児突然死症候群 | 不慮の事故 | 出血性障害等 |
1~4 | 先天奇形等 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 肺炎 | 心疾患 |
5~9 | 悪性新生物 | 不慮の事故 | 先天奇形等 | その他の新生物 | 心疾患 |
10~14 | 悪性新生物 | 自殺 | 不慮の事故 | 心疾患 | 先天奇形等 |
15~19 | 自殺 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 心疾患 | 先天奇形等 |
20~24 | 自殺 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
25~29 | 自殺 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
30~34 | 自殺 | 悪性新生物 | 不慮の事故 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
35~39 | 自殺 | 悪性新生物 | 心疾患 | 不慮の事故 | 脳血管疾患 |
40~44 | 悪性新生物 | 自殺 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 不慮の事故 |
45~49 | 悪性新生物 | 自殺 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 不慮の事故 |
50~54 | 悪性新生物 | 心疾患 | 自殺 | 脳血管疾患 | 肝疾患 |
55~59 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 自殺 | 不慮の事故 |
60~64 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 自殺 | 不慮の事故 |
65~69 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 肺炎 | 不慮の事故 |
70~74 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 肺炎 | 不慮の事故 |
75~79 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 肺炎 | 不慮の事故 |
80~84 | 悪性新生物 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 不慮の事故 |
85~89 | 悪性新生物 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 老衰 |
90~94 | 心疾患 | 悪性新生物 | 肺炎 | 老衰 | 脳血管疾患 |
95~99 | 老衰 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 悪性新生物 |
100歳以上 | 老衰 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 悪性新生物 |
注 :乳児(0歳)の死因については乳児死因簡単分類を使用している。
死因名は次のように省略
- 心疾患←心疾患(高血圧性を除く)
- 先天奇形等←先天奇形、変形及び染色体異常
- 呼吸障害等←周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害
- 出血性障害等←胎児及び新生児の出血性障害及び血液障害
(厚生労働省 平成26年 人口動態統計 月報年計)
肺炎にかかると、咳や痰が出て、ぜいぜいと声を出しながら息をしたり(喘鳴)、呼吸をするのが苦しくなります(呼吸苦)。また、発熱や食欲低下、脱水症状が起こることもあります。肺炎が重篤化すると、呼吸困難になり、場合によっては人工呼吸器によって呼吸を助ける処置が必要になります。
特に高齢者の場合、あまり目立った症状がなく、気がつくと重篤な状態になっていることがあります。いつもより元気がなかったり、食事の量が減る(食欲不振)など、肺炎だとは分からない症状が目立つことで、発見が遅れることもあるため、注意が必要です。
高齢者に肺炎による死亡が多いのはなぜか
高齢者が肺炎にかかると重症化しやすい理由は、もともと持っている慢性疾患が原因であると考えられます。たとえば、慢性気管支炎、気管支ぜんそく、肺気腫、肺線維症など、呼吸器の疾患がある人は、通常でも気道や肺が炎症を起こしている状態のため、肺炎のウイルスが侵入すると感染しやすい状態にあります。
また、肺炎になると慢性疾患も悪化し、呼吸困難に陥りやすくなります。さらに、全身疾患である腎不全や肝硬変、糖尿病など、内臓の慢性疾患を持っている場合も、免疫力が弱くなっている場合があり、細菌やウイルスに感染しやすくなっているため、肺炎にかかりやすいというリスクを持っています。
命にかかわる高齢者の肺炎を予防するために
高齢者が肺炎にかかると命に関わる可能性がありますので、普段から肺炎にかからないように気をつけることが大切です。肺炎に対する一番の予防策は、細菌やウイルスを肺の中に入れないことです。
肺炎に対する予防策
肺炎の予防策は特別なことではなく、日常生活の中で少し気を付ければ良いことがあります。
- 外出時にはマスクをして、細菌やウイルスを体の中に入れない
- 外から帰ったら、手洗いとうがいをして、細菌やウイルスを洗い流す
- タバコを吸っている人は、禁煙する
特に、タバコを吸う習慣のある人は、禁煙することが一番の効果的な方法です。長年、タバコを吸い続けている人の肺は、肺炎以外の病気(がんや慢性呼吸器疾患であるCOPD)にもなりやすくなります。タバコの煙を吸い込むことによって、肺の中は常に炎症を起こしているからです。