前立腺がん末期
公開日:2016年7月25日 17時00分
更新日:2019年6月 4日 10時10分
前立腺がん末期の症状
前立腺がんは初期の段階では自覚症状はほとんどありません。そのため自覚できる症状がみられるころには、既に末期の状態にまで進行していたというケースも多いがんです。前立腺がんは進行に伴い、排尿に異常が表れるようになります。前立腺は尿道と近い位置にあるため、がんが尿道を圧迫することで、排尿時に痛みを感じたり、頻尿や残尿感を自覚したりするようになるのです。また、尿や精液に血が混じることもあります。
前立腺がんの末期には骨転移が高頻度で起こります。前立腺と近い位置にいくつもの骨が存在しているため、早い段階から骨転移を起こしやすいのです。全身の骨の中では、特に腰椎や骨盤に転移しやすく、転移によって強い腰の痛みや、下半身の麻痺が生じることもあります。
前立腺がん末期には、リンパ節や肝臓、肺、脳などへの転移を起こすこともあり、転移したそれぞれの臓器に特徴的な症状を引き起こします。
前立腺がん末期における診断
前立腺がんの診断には、医師による前立腺の触知、直腸にプローブを挿入して行う超音波検査、血液中の前立腺がんの腫瘍マーカーなどが参考となります。
がんの進行度や他臓器への転移の有無を確認するためには、CTやMRIなどの画像診断を用います。骨転移の有無や、骨転移した部位を調べるためには骨シンチグラフィ―で全身の骨をチェックします。
前立腺がん末期の治療
前立腺がんの治療には、がんの外科的な切除、内分泌療法、化学療法、放射線治療、待機療法などがあります。しかし、がんが末期にまで進行した場合、がんを完全に取り除くことは困難であるため、がんの完治を目指す治療ではなく、辛い症状や痛みを緩和するための治療が主体となります。
例えば、脊椎への転移によって骨の痛みや麻痺症状が見られるような場合には、骨セメントの注入を行うことで、症状の改善を図ります。
また、前立腺がんの組織によって尿道がふさがれて排尿困難が生じる場合には、尿道から器具を挿入して、前立腺の肥大した部分を取り除く手術を行うこともあります。がんによる尿道の閉塞に対しては、尿管ステントで尿の通り道を確保したり、直接腎臓から尿を排出する腎ろうで対応したりすることもあります。
末期がん特有の激しい痛みに対しては、痛みの強さに応じて鎮痛剤などを段階的に使用して対応していきます。
前立腺がん末期の予後・ケア
前立腺がんは、他のがんと比べて予後が良好ながんであることが知られています。前立腺がんは全てのがんの中で最も生存率が高く、ステージⅣにおける5年生存率は30%を超えています。もともと前立腺がんは進行が遅いがんであるため、たとえ末期の状態までがんが進行していても、継続的に治療を続けていくことで余命を長く保つことができるケースもあります。
とはいえ、73人に1人が前立腺がんで命を落としているという現実もあります1)ので、末期にまで進行した場合は決して油断できる状況ではないというのも事実です。
前立腺がん末期には、残された余命を苦痛なく、自分らしく過ごすことができるようなケアが中心となります。がんが末期にまで進行した場合、全身に辛い症状や痛みが生じ、気分まで落ち込んでしまうこともあります。これらの身体的・肉体的苦痛は、医師や看護師など緩和ケアの専門家の手を借りて開放することが大切です。緩和ケアはがんにかかったご本人だけでなく、それを支えるご家族も対象となります。療養生活を送る上での悩みや不安などを緩和ケアチームとともに共有し、状況に合わせた支援を受けることがきます。
緩和ケアによって、様々な苦痛を取り除くことは、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を維持・向上させることにもつながります。残された人生を有意義なものとするためにも、積極的な緩和ケアの利用が望まれます。
参考文献
- がん死亡 5)がんで死亡する確率~累積死亡リスク