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膵がん末期

公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2019年6月20日 09時47分

膵がん末期の症状

 膵がんには、早期の段階で自覚できるような症状はほとんどありません。そのため、膵がんの存在に気が付いた時には、既にがん末期の状態であるケースも少なくありません。

 膵がんは進行して末期の状態になると、著しい体重低下が起こることがほとんどです。膵がんによって膵臓が正常に機能しなくなると膵液の分泌が障害されるため、栄養の吸収ができなくなってしまいます。さらに、膵臓のがんが十二指腸や大腸などの消化器官を圧迫することで、食欲の低下をきたすこともあり、これも体重の低下につながります。

 膵がんが膵臓の持つ内分泌機能を低下させると、血糖コントロールを行うインスリンの分泌が悪くなるため、糖尿病を併発したり、もともと糖尿病の既往がある方は病状が悪化したりします。

 また、膵がんによって膵臓が大きくなると膵臓に炎症が起こり、背中や腰に痛みが起こります。がんが胆管を詰まらせた場合には、黄疸などが生じることもあります。

 膵がん末期の状態になると、がんは様々な臓器へ転移し、転移した臓器に特有の症状を引き起こします。膵がんが最も転移を起こしやすいのは肝臓ですが、肝臓で転移がんが進行すると倦怠感や黄疸など、肝機能の低下による症状が見られるようになります。

膵がん末期における診断

 膵がんの診断には造影CT、超音波内視鏡検査、MR胆管膵管描出法などが用いられます。これらの画像診断は病変の位置や広がりなどを確認するのに役立ちます。

 血液検査からは、膵臓から分泌されるアミラーゼ、エラスターゼ1、リパーゼ、トリプシンなどの酵素の値、胆道から分泌される酵素であるALP、γGTPの値が診断上の参考になります。腫瘍マーカーの値は膵がんの治療経過を観察する目的でも用いられています。

膵がん末期の治療

 膵がんが末期の状態になると、がんを外科的に切除することは困難です。そのため、治療としては化学療法か放射線治療が主体となっていきます。しかし、これらの効果も非常に限定的で、完全にがん細胞を取り除くまでには至りません。そのため化学療法や放射線治療は、がんによる痛みの緩和や、がんの進行を少しでも遅らせて延命を図る目的で用いられることがほとんどです。

 膵がん末期の状態では、膵臓のがんが周囲に浸潤して機能不全を起こしてしまうため、それぞれの症状に一つずつ対処していくことも必要となります。例えば、十二指腸ががんで圧迫されて食べたものが通過できなくなった場合に胃と小腸をつなぐバイパスを増設したり、胆管ががんで圧迫されて胆汁の流れが悪くなった場合は胆道ドレナージを行ったりします。

 また、転移した膵がんが転移先の臓器で引き起こす様々な症状に対しても、個別に対処を行っていきます。

膵がん末期の予後・ケア

 膵がんは、罹患率と死亡率がほぼ同じと言われるほど予後が悪いがんです。それは、膵がんが早期発見しづらいがんであり、早期の段階から転移を起こしやすいがんであるということが関係しています。膵がんの場合は、発見された時点で既に末期の状態にまで進行していることが多いため、発見と同時に余命宣告をされるということも珍しくありません。

 膵がんのように進行が早く、予後不良ながんにかかった方にとっては、緩和ケアは非常に重要な役割を持ちます。緩和ケアとは、がん特有の辛い症状や痛みといった身体的苦痛と、ご本人やご家族の不安や恐怖といった精神的苦痛の両方を取り除くために行われるさまざまなケアのことを指します。緩和ケアを活用することで本来の自分らしさを取り戻し、療養生活の質を高めることができるはずです。緩和ケアは、入院中だけでなく、通院や在宅療養でも受けることが可能です。専門家で構成された緩和ケアチームの力を借りることは、がん末期の状態にあっても自分らしさを失わず、穏やかな日常を送る手助けともなるでしょう。

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