卵巣がん末期
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年6月20日 10時58分
卵巣がん末期の症状
卵巣がんは進行しても明確な自覚症状が表れにくいがんです。そのため、かなりがんが進行してから発見されるというケースも多いようです。
卵巣がんが末期まで進行した場合でも、卵巣がんが膀胱を圧迫して頻尿になったり、腹部の圧迫感を感じたりする程度で、卵巣がん特有の症状が出現するわけではありません。
しかし、がんが他の臓器に転移を起こした場合は、転移先の臓器で様々な症状を引き起こします。卵巣がんは骨や肺、肝臓などに転移しやすいがんですが、例えば、卵巣がんが肺に転移した場合、胸水や呼吸困難などの症状が出現することがあります。
卵巣がんが進行することによって、卵巣の表面に浸潤したがんが腹膜にばらまかれる「腹膜播種」が起こった場合は、腹水の貯留を引き起こし、食欲不振や息切れ、痛みなどの症状によって、一気に体力が奪われてしまうこともあります。
卵巣がん末期における診断
卵巣は他の臓器と比べて腫瘍が発生しやすい臓器であり、良性の腫瘍と卵巣がんの鑑別は非常に困難です。そのため、卵巣がんは、様々な検査の結果を総合的に判断して診断を行います。
超音波診断、CT、MRIなどの画像診断からは、がんの大きさや広がりの程度、他の臓器へのがんの転移の有無などが判定されます。
血液検査における腫瘍マーカーの値も、卵巣がんの進行の程度や治療の効果を判定するために重要な指標となります。
卵巣がんの場合は、卵巣摘出手術によって初めてがんの進行状況が明確になることがあります。がんの浸潤の状況や腹腔内のがんの蔓延状況、他臓器への転移状況のほか、摘出した卵巣の組織検査や腹水・胸水の細胞診によって、正確ながんの状況を把握することが可能になるのです。
卵巣がん末期の治療
卵巣がんが末期にまで進行した場合、手術によって全てのがんを取り除くことは不可能です。しかし、手術に耐えられるだけの体力がある場合は、できるだけがんを取り除いた方ががんの進行を防ぐためには有効です。手術で取り除くことができなかった腫瘍に対しては化学療法によってがんの進行を抑制します。
卵巣がんは抗がん剤などの化学療法が比較的効きやすいがんです。年齢や体力等を考慮の上、手術が適応にならない方に対しては、化学療法を中心に治療を進めていきます。
他のがんの治療に行われている放射線治療は、卵巣がんではほとんど用いられることはありませんが、がんが脳や骨に転移した場合は、転移したがんによる症状を和らげるために放射線治療が行なわれることもあります。
卵巣がん末期の予後・ケア
卵巣がん末期に近い状態であるステージⅣまでがんが進行した場合の5年生存率は10%から20%程度であると言われています。また、卵巣がんは再発しやすいがんであるため、一旦完治したように見えても数年で再発することもあります。再発したがんは初発のがんよりも治療が困難であることがほとんどなので、注意が必要です。
卵巣がんに限らず、がんの末期には「がん性疼痛」と呼ばれる激しい痛みや、全身に転移したがんによってもたらされる重篤な症状に悩まされることがほとんどです。今後の療養生活への不安や死に対する恐怖など、精神的な苦痛を感じることも多くなるでしょう。
こうした様々な苦痛を和らげるため、がん治療の現場では「緩和ケア」が積極的に取り入れられています。緩和ケアとは、病気に伴う身体的・精神的な苦痛を和らげるケアのことを言います。がんにかかったご本人やそのご家族は、安心して療養生活を送ることができるように、緩和ケアの専門家の支援をいつでも受けることが可能です。緩和ケアを上手に利用してがん末期の苦痛を開放することで、QOL(Quality Of Life:クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の維持・向上を図り、がん末期においても自分らしい生活を送ることができるはずです。