生活機能と個人・環境因子のアプローチ
公開日:2023年7月14日 09時00分
更新日:2024年8月13日 15時56分
藤原 佳典 (ふじわら よしのり)
東京都健康長寿医療センター研究所副所長
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本特集は、「弱っても安心して活き活き過ごせるまちづくり」と題して企画した。具体的には、認知症やフレイル、要介護状態になっても安心して過ごせるまち・地域コミュニティをどう実現していくかという命題に切り込みたい。
認知症、フレイル、要介護状態のいずれにも共通する概念は生活機能の低下である。
例えば、フレイルについて生活機能が低下し、のちにADL(基本的日常生活動作)障害を起こしやすい前障害状態(pre-disability state)と捉えた「生活機能モデル」と称する視点がある。「生活機能モデル」とは、2001年に世界保健機関(WHO)が発表した国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)における「心身機能・身体構造(生命レベル)」「活動(生活レベル)」「参加(人生レベル)」の3つの次元の機能を包括した広義の生活機能を指標としている。その上で、高齢期の健康は生活機能レベルに依拠するという考え方に基づき、生活機能の低下からフレイルを捉えようとするモデルである。すなわち、フレイルとは、加齢とともに個人因子である生活習慣病(脳卒中、心疾患、がん、糖尿病、ロコモティブシンドロームなど)の発症・重症化および、老年症候群等によるさまざまな心身機能の低下(運動機能低下、低栄養、口腔機能低下、認知機能低下等)やそれらを修飾する環境因子を含めた社会的な諸要因の影響が加わり、自立した生活を送るための基礎となる生活機能が低下し、要介護状態となる危険性が高くなっている状態と捉えることができる。その生活機能の動態は低下への一方向性の変化を呈するのみならず可能な限り予防・維持もしくは改善することも含まれている。
したがって、フレイルの予防・維持・改善という点では、フレイルでない状態からフレイルへの移行を可能な限り先送りすることが「フレイルの予防・維持」、逆にフレイルを軽快することが「フレイルの改善」と定義することができると考えられる。
予防・維持・改善の手立ての2つの柱は、上述の個人因子と環境因子からのアプローチである。
そこで、本企画では、高齢者の心身機能の変化・健康問題、社会的孤立などの複合的な課題や高齢者を取り巻く地域社会の課題を明らかにし、かつ、それらの問題解決の方策について、地域の実例や産官学民連携の取り組みを交えて論じていただいた。
筆者
- 藤原 佳典(ふじわら よしのり)
- 東京都健康長寿医療センター研究所副所長
- 略歴
- 1993年:京都大学病院老年科、1994年:兵庫県立尼崎病院内科、1996年:東京都立大学都市研究所、2000年:京都大学大学院医学研究科修了、医学博士、東京都老人総合研究所地域保健部門、2011年:東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム研究部長、2020年より東京都介護予防・フレイル予防推進支援センターセンター長(併任)、2023年より現職
- 専門分野
- 公衆衛生学、老年医学、老年社会科学
- 過去の掲載記事
転載元
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