オーラルフレイル対策で食の楽しみをいつまでも
公開日:2023年1月13日 09時00分
更新日:2024年8月13日 16時19分
菊谷 武(きくたに たけし)
日本歯科大学教授
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長
こちらの記事は下記より転載しました。
食べることは、生きるために必要な行為である。私たちは、生きるために体の活動を支えるエネルギーと体をつくるたんぱく質などを欠かすことなく摂る必要がある。同時に、食べることは、私たちにとって、かけがえのない喜びであるともいえる。食べることは生活の一部であり、食べることにまつわるさまざまな思い出を家族や友人と共有している。
加齢とともに、足腰に衰えが出るように、食べる機能も衰える。食べられなくなればそれは死を表すことになることから、食べる機能の衰えは、他の身体機能に比較して遅く訪れ、そしてゆっくりと進むと考えられる。それゆえ、その衰えに気づきにくく、気づいた時にはすこし手遅れとなる。いつまでも健康でいられるために、いつまでもおいしく口から食べ続けるために、口腔機能の低下の予兆であるオーラルフレイルに気づき対応することが肝要である。
口腔機能の変化は、食事時間の延長や食事の際の食べこぼしやむせこみなどで表れてくる。これらは、一般に知られている口腔体操の実施や友人や家族との会話、食事を楽しむことなどを積極的に実践することで改善が可能であると思われる。
食事を楽しみたいという意欲は、歯科への定期受診を促し、わずかな歯の不具合を感じた際にも、早期の歯科受診につながる。また、一方で、不具合のある義歯の長期使用や不具合を抱えながらの状態は、見た目の問題や友人との"食べる力"の差から、外出の機会や外食を避ける原因につながると考えられる。この口腔の問題から発した社会性の欠如は、運動量の低下を招き、空腹感の欠如、食事が楽しめないなど、負のサイクルに陥ることになる。
最近の研究では、口腔機能の低下すなわちオーラルフレイルと死亡リスク、フレイル、サルコペニアの発症、要介護状態の発症などとの関連が明らかになっている。そして、地域におけるさまざまな取り組みの実践例も報告されている。
オーラルフレイル対策は、健康長寿の達成になくてはならない取り組みと確信している。
筆者
- 菊谷 武(きくたに たけし)
- 日本歯科大学教授
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長 - 略歴
- 1988年 日本歯科大学歯学部卒業、2001年 日本歯科大学附属病院口腔介護・リハビリテーションセンターセンター長、2005年 日本歯科大学助教授、2010年より日本歯科大学教授 2012年より東京医科大学兼任教授、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長
- 専門分野
- 摂食嚥下リハビリテーション、老年歯科学
- 過去の掲載記事
転載元
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