健康長寿ネット

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高齢者が孤立しない社会の実現に向けて

公開日:2025年1月18日 15時00分
更新日:2025年1月18日 15時00分

斉藤 雅茂(さいとう まさしげ)

日本福祉大学社会福祉学部教授


 近年、改めて高齢者の社会的孤立や孤独感への関心が高まっている。2023(令和5)年度の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」によれば、「誰にも看取られることなく、亡くなった後に発見される死(孤立死)」を身近に感じている人は65歳以上高齢者の約半数(48.9%)、一人暮らし高齢者に限定すれば4人に3人程度(73.4%)にも及ぶ。周知のとおり、50歳時未婚率は急増しており、生涯未婚による一人暮らし世帯は今後も増加し、高齢者の社会的孤立はさらなる拡大が見込まれる。また、社会的に孤立した個人だけでなく、「8050・9060問題」と呼ばれるような社会から孤立しがちな世帯も知られており、その専門的な対応が求められている。2024(令和6)年4月には、孤独・孤立対策推進法が施行され、内閣府に孤独・孤立対策推進本部が設置され、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることなどが掲げられている。

 社会的孤立というと、人づきあいがまったくなく、ゴミ屋敷や不衛生な状態にあって、すべての社会的サービスを拒否し、近隣関係でトラブルを起こしているといった極端な状態像が議論されやすいが、そうした状態に該当する人は極めて少ない。また、そこまで極端な状況ではなくても無視できない状態であることが知られている。孤立しがちな状態にあることは、単に他者との交流が乏しいだけでなく、低所得や住環境の劣悪さ、自己効力感の低下や生活上の不安など他の生活課題と密接に関連していること、犯罪の被害と加害の双方に関連していること、自殺のリスク要因になるだけでなく、高齢者の早期死亡や認知症発症などとも関連していることが知られている。英国では社会的孤立や孤独感が国家経済に与える損失が年間320億ポンド(現レートでおよそ6.3兆円)規模にのぼるという推計も発表されている。

 本特集では「孤立した高齢者の生活を支える」をテーマとし、広義の社会的孤立に焦点をあてている。高齢者を対象にした大規模縦断調査であるJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study:日本老年学的評価研究)のデータを基盤にしつつ、日本の高齢者の社会的孤立の動向や問題の所在、対応可能性についてご寄稿いただいた。

筆者

さいとうまさしげ氏の写真。
斉藤 雅茂(さいとう まさしげ)
日本福祉大学社会福祉学部教授
略歴
2009年:上智大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了、博士(社会福祉学)、2012年:日本福祉大学社会福祉学部准教授(〜2022年)、2019年:日本福祉大学健康社会研究センターセンター長、2022年より現職
専門分野
社会福祉学、社会老年学、地域福祉論、公衆衛生学、社会疫学
過去の掲載記事
特集/高齢者の健康格差生成のプロセス:JAGES 縦断研究の結果から(Aging&Health 第27巻第2号)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2025年 第33巻第4号(PDF:4.5MB)(新しいウィンドウが開きます)

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