オーバートレーニング症候群とは
公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2024年9月13日 14時53分
オーバートレーニング症候群とは
スポーツ活動などによって生じた生理的な疲労、精神的な疲労が十分に回復しないまま積み重なり、常に疲労を感じる慢性疲労状態となることです1)。
スポーツでは日常生活で行う活動よりも負荷の大きい運動を行い、トレーニングの効果をあげていますが、トレーニング後の疲労の回復が不十分であったり、十分な栄養と休養を得ていなかったりした場合は、競技成績の低下やトレーニング効果が低下することがみられます1)。オーバートレーニング症候群は慢性的な疲労状態であり、一気に激しい運動を行うことで疲労が起こるオーバーワークの状態とは違います2)。
オーバートレーニング症候群の症状は、段階的に進んでいき、初期は日常生活上での問題はなく、競技での成績低下がみられるようになります。トレーニングの負荷が大きくなると、身体が思うように動かず疲労を感じるようになります。だんだんと軽い負荷のトレーニングでも身体が思うように動かなくなってきて辛く感じ、疲れやすくなります。やがては、日常生活においても易疲労性、全身倦怠感、睡眠障害、食欲低下、体重減少、集中力の低下、安静時心拍数の増加、血圧の上昇、運動後の血圧が回復する時間の遅延などの症状がみられます。さらには、気持ちの落ち込みや活気がなくなるなど、精神的な症状までみられるようになります2)。
オーバートレーニング症候群の診断
貧血や感染症などの病気にかかっていないのに、安静時心拍数の増加、安静時血圧の上昇、運動後の血圧の回復の遅れなどがみられ、競技成績の低下、または最大パワーの減少がみられると、オーバートレーニング症候群と診断されます。
オーバートレーニング症候群の治療
オーバートレーニング症候群の治療は、トレーニングを控えて身体をゆっくりと休め、バランスの良い食事を摂ることです。ビタミンB群やビタミンCを摂るとよいといわれています。症状が重くなると回復にかかる時間も長くなるため、早期発見・早期治療が大切です。起床時の疲労感がなくなるまで休養が必要となります2)。
オーバートレーニング症候群の早期発見
オーバートレーニング症候群の早期発見には起床時の心拍数のチェックが有効です。疲労症状が高まるとともに起床時の心拍数の増加がみられます。起床時の心拍数が1分間に10拍以上増加している場合はオーバー症候群の疑いがあります。
身体に現れるサインとしては、筋肉痛や疲労がなかなか回復しない、風邪などの感染症にかかりやすくなる、安静時の血圧が上昇する、意欲が低下する、食欲低下、寝つきが悪くなる、イライラする、抑うつなどがみられます2)。
起床時の心拍数や血圧の日々の変化を捉えることはオーバートレーニング症候群の早期発見に役立ちます。心理的プロフィールテスト(POMS)※1、心理的競技能力診断検査(DIPCA3)※2、体協競技意欲検査(TSMI)※3などの心理テストも早期発見に有効とされています1)。
- ※1 心理的プロフィールテスト(POMS):
- 心理的プロフィールテストとは、過去1週間の6つの気分の状態(緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱)から最近の気分の状態を把握するテストのこと。
- ※2 心理的競技能力診断検査(DIPCA3):
- 心理的競技能力診断検査とは、5つの因子と12の尺度からスポーツ選手の試合場面に必要な精神力を把握することのできるテストのこと。
- ※3 体協競技意欲検査(TSMI):
- 体協議意欲検査とは、スポーツ選手の競技へのやる気を評価して、メンタルトレーニングやコーチングへの応用を目的としたテストのこと。
オーバートレーニング症候群の予防
オーバートレーニング症候群は肉体的・精神的なストレスが慢性的にかかることによって脳の視床下部-下垂体系が機能不全となり、脳下垂体から分泌されるホルモンのバランスが崩れて起こると考えられています2)。
急激な負荷のトレーニングや休息・栄養・睡眠が不十分であること、過密なスケジュール、過度の精神的なストレスなどが要因となって起こります2)。トレーニングは無理をせず、体調の悪い時はトレーニングメニューの変更や負荷を軽くする、トレーニング時間を短くする、トレーニングを中止するなどして対応し、栄養をしっかり摂って休養することが大切です。普段から頑張り過ぎず、無理せずに適度な休憩と栄養補給を心がけ、運動と休養と栄養のバランスを保ってトレーニングを行うことが重要です。ストレスを溜めすぎないように適宜、発散することも大切です。
参考文献
- オーバートレーニング症候群 厚生労働省e-ヘルスネット
- オーバートレーニングの予防 町田市立総合体育館 健康コラムvol.57