筋肉痛の予防と治す方法
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2021年2月24日 13時46分
筋肉痛になる原因
もともと、筋肉痛になる原因は、激しい運動をすると疲労物質である乳酸が溜まって筋肉痛が起こるという考え方がされていましたが、最近では、乳酸は疲労物質そのものではないこと、乳酸は運動を行っていない安静時にもつくられており、乳酸そのものが筋肉痛の原因になるわけではないことがいわれています1)。
筋肉痛が生じやすいのは、筋肉が引き伸ばされながら大きな力を出す(伸張性収縮)を繰り返した時です。例えば、スクワット運動時に膝を伸ばしていく際のハムストリングス(太ももの裏の筋肉)や、下り坂を降りる際の大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)や下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)、ダンベル運動時に肘をゆっくりと伸ばす際の上腕二頭筋(上腕の力こぶ部分の筋肉)などです1)2)。
このように、筋肉が収縮する方向とは反対の方向に引き伸ばされながらも、ブレーキをかけるために大きな張力が生じる伸張性収縮では、筋繊維や周囲の結合組織が断裂して微細な傷がつきやすくなります。筋繊維や周囲の結合組織が傷つくことで筋の破壊が進んで炎症が起こります。痛みや腫れを引き起こす炎症メディエーター※1やサイトカインが産生されることにより、筋肉痛を引き起こすと考えられています2)。
- ※1 炎症メディエーター:
- 炎症メディエータ―とは、損傷した組織や炎症部位で産生された痛みを起こす刺激物質(発痛物質)のこと。
筋肉痛が遅れてくる原因
伸張性収縮後の筋肉痛は運動をした翌日以降に痛みがみられ、運動後3~7日程度で痛みは徐々に治まります。運動をしてから遅れて筋肉痛がみられるので遅発性筋肉痛と呼ばれています2)。
遅発性筋肉痛は、伸張性収縮によって産生される発痛物質のブラジキニンが筋膜にある受容体に作用して神経成長因子(NGF)の産生を高め、痛みを感じる受容器に働く過程を経て、痛みを感じることで起こるとされています。運動を行ってから筋肉痛を生じるまでにはこれらの過程があるため、時間差が生じ、遅れて筋肉痛が出てくると考えられています3)。
筋肉痛を治す方法
筋肉に生じた微細な傷の修復過程で筋肉痛の痛みは起こっているので、傷ついた筋組織の回復を促すために、ストレッチや軽いマッサージ、軽い運動、ぬるめのお湯での入浴などの血行を促すことを行いましょう。バランスの良い食事と十分な休養をとり、身体が回復する働きを促すことも大切です。筋肉痛がみられる部位の強い痛みや腫れなどがみられる場合は、冷却・安静・圧迫・挙上の炎症を鎮めるための対処を行いましょう。
筋肉痛の予防
運動習慣を持ち筋肉を使う
筋肉に負荷がかかり断裂して損傷することで筋肉痛は起こります。筋繊維は、筋肉を使わなければ細くなり、少しの負荷でも損傷しやすくなります。日頃から全身を動かす有酸素運動を行って筋肉をよく使い、全身の血行を良くするようにしましょう。
バランスのとれた食事と休養
筋繊維を太くして傷つきにくい筋肉をつくるために、筋肉をつくる材料となる良質なタンパク質を含め、バランスのとれた食事と質のよい睡眠をとり、レジスタンス運動などの筋力トレーニングも取り入れて筋繊維を太く発達させるようにしましょう。
運動前の準備運動
筋肉が硬く縮んだ状態では、筋収縮時に断裂しやすくなるため、運動前はストレッチや軽い体操などのウォーミングアップを行い、血流を改善して筋肉の柔軟性を促すようにしましょう。
運動負荷は段階的に
運動は、いきなり激しい運動を行うと筋肉へ急激な負荷がかかり、筋肉が傷つきやすくなります。軽い運動強度のものから始め、徐々に負荷をあげていくようにしましょう。無理をしないことも重要です。
運動後の整理運動
運動後もストレッチや軽い運動などのクーリングダウンを行って血流を促し、疲労を溜めないようにしましょう。運動後に筋肉が熱を持っている場合はアイシングなどで冷却するようにしましょう。
参考文献
- 八田秀雄 乳酸を活かしたスポーツトレーニング 講談社 2001 136-138
- 小山なつ 痛みと鎮痛の基礎知識 下 2010 技術評論社 29-32