健康長寿を実現する運動
公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2022年4月27日 13時28分
高齢者の運動の必要性
年をとると体が弱っていくことは自然の現象です。加齢によって「筋力の低下や活動量の低下、歩行速度の低下、易疲労性、体重減少」のうち3つ以上がみられる場合をフレイルといいます。フレイルは加齢による虚弱を示し、そのまま放置していると身体機能障害を生じ、介護が必要となる状態です。しかし、フレイルの状態であるうちに適切な介入を行うことで健康な状態へと改善し、健康寿命を延ばすことも可能です1)。
加齢による筋肉の衰え(サルコペニア)や骨や関節、筋肉の運動器に障害を抱えている(ロコモティブシンドローム)と、フレイルになりやすくなります。運動やリハビリテーションなどはサルコペニアやロコモティブシンドロームのリスクを低下させ、身体機能の低下、生活機能の低下をきたすフレイルの状態となることを遅らせるのに有効です1)。
運動を行うことで、気分転換やストレスの発散となり、精神的な安定を促すこともできます。ストレッチングや筋力トレーニングは腰痛や膝痛などの運動器のトラブルの改善も期待でき、心肺機能を高める運動によって風邪などの感染症にかかるリスクも低くすることが可能です。また、運動を行うことで体力や体型に自信が持てることによって自己効力感が高まり、生活の質の向上にも役立ちます2)。
生活習慣病予防の運動
運動は、肥満を予防・改善し、血糖値や血圧、血清脂質を良い状態に保つ効果があり、メタボリックシンドローム、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の予防を図ることができます。
厚生労働省の運動施策の推進として、身体活動基準2013では、運動は息が少し弾む程度の中強度の運動(ウォーキングや水泳、ラジオ体操など)を週2回以上、1回30分以上、習慣化するとよいとされています。高齢者に対しては、「ストレッチングや体操を1日10分程度」、「散歩やウォーキングを1日20分程度」、「下肢および体幹部の筋力トレーニングを1週間に2回程度」のいずれかの運動を年齢や身体能力に応じて行うことが推奨されています3)。
フレイル予防の運動
フレイルとなる原因の一つには運動不足があげられ、フレイルで問題となる体力・持久力の低下による易疲労性や食欲の低下による体重減少、筋肉量の減少や筋力低下、バランス能力の低下による歩行速度の低下、活動量の減少は運動を行うことで予防できます。
フレイル予防の運動の種類
フレイルの予防のための運動としては、心肺機能を高め、体力、持久力の向上を促すことのできるウォーキングや水泳、水中歩行などの有酸素運動と、筋肉の柔軟性を高め、関節の動きの改善を促すストレッチング、筋力を強くし、筋肉量の増加が望める筋力トレーニング、転倒予防や歩行速度を高めるためのバランス訓練などがおすすめです1)。
フレイル予防の運動の効果
運動を行うことで血流が改善されて循環がよくなり、内臓の働きもよくなります。活動性が高まることで食欲増進も期待でき、気分の安定にもつながります1)。
運動強度は楽ではないと感じる程度からややきついと感じる程度の運動が適しており、高齢者であっても、個人の状態に合わせて運動負荷や頻度に気をつけて行うことで安全に運動を実施することができ、運動による効果を望むことができます1)。
運動を行うことと合わせて、アミノ酸を摂取することで運動の効果を高めることが言われており、運動と同時に食事内容を見直すことも大切です1)。
健康長寿を実現する運動何をどうしたらよいか(アクティブガイド)3)4)
厚生労働省の健康日本21の健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)では、日々の生活の中で以下のようなことを意識して行い、今よりもプラス10分間身体を多く動かすことが推奨されています。
- 散歩や外出などで外に歩いて出掛けること
- 乗り物を使わずに積極的に歩くこと
- エレベーターやエスカレータの使用を控えて階段の上り下りを行うこと
- 車よりは自転車をこぐ、自転車よりは歩くこと
- 掃除や洗濯などの家事で意識して身体を動かすこと
- ストレッチや筋力トレーニング、運動施設でのトレーニングを行うこと
運動の頻度、時間としては、18~64歳では1日60分以上、65歳以上では1日40分以上、筋力トレーニングやスポーツなどの運動を含めた身体活動を行うことが目標とされています(リンク1参照)。
リンク1:健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド) 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)