イービーエム(EBM)エビデンスに基づいた医療とは
公開日:2016年7月25日 01時00分
更新日:2019年2月 1日 16時37分
イービーエム(EBM)とは
イービーエム(EBM)とは、『Evidence-Based Medicine』の頭文字をとったもので、『(科学的)根拠に基づいた医療』とよく訳されています。ここでいう(科学的)根拠(=エビデンス)とは、これまでに行われてきた医学・医療に関する研究成果を指します。1991年に登場した言葉で、北米を中心にして広まり、日本にも90年代後半より浸透してきました。
一般的には、『個々の患者さんの診療にあたり、最近までの研究から得られたデータの中から信頼できるものを見つけ、それに基づいて理に適った診療を行う』ということを意味しています。具体的には医師が次の4つの手順を踏みます。
イービーエム(EBM)の具体的な手順
手順1
診療上生じた疑問を、適切なキーワードを用いながら表現します。例えば、『アルツハイマー型の重度の認知症を患っている高齢者に、塩酸ドナペジル(商品名アリセプト)という薬を投与すると、認知機能が改善するだろうか?』、あるいは『認知症が疑われる高齢者に、放射線を使ったある種の画像検査(FDG-PET)を行うと、アルツハイマー型認知症をどれくらい正確に診断できるか?』のように表現します(リンク1参照)。
手順2
手順1で記載した疑問の解決につながる文献を検索します。例えば、根拠に基づいてきちんと作られたガイドラインや、信頼できるデータをあらかじめまとめているものを見たり、医学論文の巨大なデータベースを検索したりします。
手順3
見いだされた文献を、注意すべきチェックポイントに着目しながら読み、どれくらい信頼できるかを判断します。
手順4
手順3で読んだ文献をもとに、情報を患者さんに提示し、患者さんの考えを伺います。そして診療を行っている環境を振り返り、臨床医としての知識と経験を最大限に発揮して、最善と思われる方法を選択します。
イービーエム(EBM)は「新しいタイプの聴診器」
これまでの医療はどちらかというと個々の臨床医の直観や経験に頼る部分が大きく、診療内容に大きな格差があったかもしれません。
それに対し、イービーエム(EBM)はより最新の、そしてより信頼できるデータに基づいた医療です。このようなことが可能になった背景には、実際に多数の患者さんを対象にした臨床研究などといったエビデンス(根拠に基づく医学)が充実したことが挙げられます。
また、情報通信技術の発達により、巨大なデータの管理や遠隔利用が可能となり、個々の臨床医もエビデンスを入手しやすくなったことも挙げられます。
時に誤解されることがありますが、イービーエムはこれまでの医療を否定するものではありません。これまでの医療をおなじみの"聴診器"に例えるならば、イービーエム(EBM)は医学研究の蓄積や情報通信技術の発達などの成果を組み込んだ、"新しいタイプの聴診器"なのです。