ミネラル成分の銅の働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時36分
更新日:2024年8月28日 17時07分
ミネラル成分の銅とは1)
銅は成人の体内に約70から100mg含まれます。骨、骨格筋に約50%、肝臓中に約10%存在するほか、血液、脳などに存在しています。
ミネラル成分の銅の吸収と働き1)
銅は腸管から吸収されたのち、肝臓へ送られた後、アポセルロプラスミンというたんぱく質と結合して、セルロプラスミンの形で、全身に運ばれ、約10種類の酵素の活性中心に結合して、生体内で様々な働きをします。
また、このセルロプラスミンはヘモグロビン合成に必須の酵素ですので、貧血予防に欠かせないミネラルです。また、マクロファージなどの免疫細胞のエネルギー代謝にかかわるチトクロムCオキシダーゼという酵素の構成成分であるため、免疫力を高める効果もあるほか、赤血球中の、SOD酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、活性酸素を消去する酵素)にも含まれているため、動脈硬化の予防にも効果があります。エネルギー生成や鉄代謝、活性酸素除去などの他、細胞外マトリクスの成熟、神経伝達物質の産生などにも関与しています。
銅の1日の摂取基準1)2)
日本人の食事摂取基準(2020年版)では1日の摂取の推奨量は、18~74歳の男性0.9mg、75歳以上の男性で0.8mg、18歳以上の女性で0.7mgと設定されています。耐容上限量は18歳以上の男女とも7mgです(表1-1、1-2)。
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 0.3 | - |
6~11(月) | - | - | 0.3 | - |
1~2(歳) | 0.3 | 0.3 | - | - |
3~5(歳) | 0.3 | 0.4 | - | - |
6~7(歳) | 0.4 | 0.4 | - | - |
8~9(歳) | 0.4 | 0.5 | - | - |
10~11(歳) | 0.5 | 0.6 | - | - |
12~14(歳) | 0.7 | 0.8 | - | - |
15~17(歳) | 0.8 | 0.9 | - | - |
18~29(歳) | 0.7 | 0.9 | - | 7 |
30~49(歳) | 0.7 | 0.9 | - | 7 |
50~64(歳) | 0.7 | 0.9 | - | 7 |
65~74(歳) | 0.7 | 0.9 | - | 7 |
75以上(歳) | 0.7 | 0.8 | - | 7 |
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 0.3 | - |
6~11(月) | - | - | 0.3 | - |
1~2(歳) | 0.2 | 0.3 | - | - |
3~5(歳) | 0.3 | 0.3 | - | - |
6~7(歳) | 0.4 | 0.4 | - | - |
8~9(歳) | 0.4 | 0.5 | - | - |
10~11(歳) | 0.5 | 0.6 | - | - |
12~14(歳) | 0.6 | 0.8 | - | - |
15~17(歳) | 0.6 | 0.7 | - | - |
18~29(歳) | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
30~49(歳) | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
50~64(歳) | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
65~74(歳) | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
75以上(歳) | 0.6 | 0.7 | - | 7 |
妊婦(付加量) | +0.1 | +0.1 | - | - |
授乳婦(付加量) | +0.5 | +0.6 | - | - |
- 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
- 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。
令和元年国民健康・栄養調査における銅の1日の平均摂取量は1.12mgで、食品群別の摂取量で見ると、穀類からの摂取量が最も多く、次いで豆類、野菜類、魚介類の順で多く摂取されていました。
ミネラル成分の銅が不足するとどうなるか1)
日常の食生活での欠乏はないとされていますが、長期に経腸栄養での栄養管理がされている患者や、人工栄養の未熟児などでは、摂取量不足による欠乏症がみられることがあります。主な症状は、貧血、骨異常、毛髪異常、白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常、成長障害などです。また遺伝的な銅代謝異常であるメンケス病では、血液中や、脳や肝臓の銅が減少し、その結果、知能低下、発育遅延、中枢神経障害などの症状が現れます。
銅の過剰摂取の影響
過剰症は化学薬品の誤飲などによる特殊な急性中毒や、遺伝性のウイルソン病など以外にはほとんど起こりません。ウイルソン病は銅が胆汁中に分泌されず肝臓などに蓄積される遺伝病で、脳神経障害、重度の肝障害、関節障害などを起こします。また、酢などの酸性の食品を、銅鍋などに入れると、銅が溶け出し銅の過剰摂取を引き起こすことがありますので注意が必要です。
近年、銅欠乏が、貧血のほか高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などを引き起こすことが明らかになってきています。一方、銅の過剰摂取が、活性酸素の生成を促進して酸化ストレスの原因となることから、肥満、高血圧、糖尿病、心不全、腎不全を悪化させる要因であると考えられています。銅と生活習慣病との関連については、今後の研究が期待されます。
ミネラル成分の銅を多く含む食品3)4)
ミネラル成分の銅は、魚介類、肉類、豆類に多く含まれています。いかやたこなどの軟体動物やえびなどの甲殻類の血液では、ヘモグロビンの代わりに銅を含むヘモシアニンというたんぱく質が、酸素を運搬しています。そのため、いかやたこには銅が多く含まれています。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品から銅を多く含む食品を表2から表4にまとめました。
食品名 | 銅量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
加工品 干しえび | 5.17 | 大さじ1:6g |
ほたるいか 生 | 3.42 | 1杯:6g |
いいだこ 生 | 2.96 | 1杯:20g |
かき 養殖 生 | 1.04 | 1個(むき身):15g |
大正えび | 0.61 | 1尾:14g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれなど)を除いたものです。
食品名 | 銅量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
うし 肝臓(レバー) 生 | 5.30 | 1人前:100g |
ぶた 肝臓(レバー) 生 | 0.99 | 1人前:100g |
ぶた スモークレバー | 0.92 | 1食分:100g |
うし 心臓(ハツ) 生 | 0.42 | 1人前:100g |
ぶた 心臓(ハツ) 生 | 0.35 | 1人前:100g |
にわとり 心臓(ハツ) 生 | 0.32 | 1個:15~20g |
にわとり 肝臓(レバー) 生 | 0.32 | 1人前:100g |
食品名 | 銅量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
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きな粉 全粒大豆 黄大豆 | 1.12 | 大さじ1:6g |
糸引き納豆 | 0.61 | 1個:30~50g |
蒸し大豆 黄大豆 | 0.51 | 1パック:100g |
挽きわり納豆 | 0.43 | 1個:30~50g |
がんもどき | 0.22 | 1個:95~125g |
油揚げ 生 | 0.22 | 1枚:20~30g |
食品に含まれる成分について
食品に含まれる成分は、
から検索が行えます。食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。
下記のようなさまざまな情報を知ることができます。
- 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
- 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
- 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
- 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能
複数の食品の成分を検索する方法
複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。
- 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
- 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分※です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
- ※灰分:
- 一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
- 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。
参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.