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第3回 秀吉のサンマ健康法

公開日:2019年5月28日 09時00分
更新日:2019年5月28日 09時42分

永山 久夫(ながやま ひさお)

食文化史研究家
綜合長寿食研究所所長


青魚に多い健康アブラ

 老いない健康体をつくる食材として、いま注目されているのが、サンマやイワシ、サバ、マグロなどの青魚。

 豊富なタンパク質に加えて、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの老化を防ぐ健康アブラが脚光を浴びているのだ。

 DHAEPAも必須脂肪酸であり、若さを保ちながら長生きするためには欠かせない。DHAは、脳の若さを保つために重要で、記憶力や計算能力の強化に役立つ。

 EPAは、血液がかたまるのを抑えたり、血液中の中性脂肪を減らす作用などで、血液をサラサラにしてくれる。コレステロールを調整する働きもあり、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病の予防や改善にも期待されており、DHAと同様にがんの発生を少なくする作用があることも報告されている。

 脂ののった旬のサンマには、抗酸化パワーで老化防止に役立つビタミンEや、脳の若さを保つ葉酸もたっぷり。

 サンマには、味をよくするアミノ酸として、調味料によく用いられている。グルタミン酸も豊富で、塩焼きしたときなどの美味さを生み出している。

図:サンマを好んで食べる豊臣秀吉の様子を表す図。当時大名が下魚であるサンマを口にすることはなかったが、農民出身である秀吉は美味しさだけではなく、食べると体力のつく成分を豊富に含んでいることを熟知していたとされる。

秀吉はサンマの健康効果を知っていた  

 戦国時代、旬のサンマの味のよさと健康効果をよく知っていたのが豊臣秀吉(1536~98)だ。

 秀吉というと、貧農のこせがれでありながら、大胆にも武士社会にとび込んで、ついには織田信長なきあとの天下とりに挑戦し、みごとに成功した、日本一の出世男だ。

 子どもの頃には、貧しい家計を助けるために、泥田のドジョウをとり、町に出て売ったり、自分でも食べたりして育ったと伝えられ、安価なイワシやサンマなども好んでいる。

 サンマなどは下魚であり、大名クラスになると、めったに口にはせず、宴席の料理に用いられるのは、タイやハモ、サケ、アユ、それにアワビやタコなどの高級魚が中心だった。

 ところが、農民出身の秀吉はちがっていた。サンマは美味なだけでなく、食べると体力のつく成分を豊富に含んでいることを熟知していたのである。

 側室の茶々(淀どの)が病気になったとき、回復するための体力がつくからサイリ(サンマの古名)を送った、という実に愛情のこもった秀吉直筆の手紙が兵庫県豊岡市で発見され、話題になっていると読売新聞(2017年7月8日)が報じている。

 秀吉は他の武士の2倍も3倍も頭を酷使して戦い、ついには天下をとったが、晩年は過労がたたって病気がちとなり、63歳で死去。しかし、当時の平均寿命は40歳くらいのものであり、63歳は長命といってよい。サンマなどに含まれているDHAEPAの効果だったのかもしれない。

(2017年10月発行エイジングアンドヘルスNo.83より転載)

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health No.83

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