褥瘡(床ずれ)の外用治療
公開日:2017年7月 5日 11時12分
更新日:2019年2月 1日 19時24分
褥瘡とは
褥瘡(じょくそう)とは、寝たきりや知覚障害のある高齢者にできやすく、圧迫による皮膚の潰瘍と定義されます。
褥瘡の分類と治療
褥瘡の治療が難しい理由は、予防、つまり圧迫やずれを除きながら適切な治療を並行しておこなう必要があることです。
褥瘡は大きく浅い褥瘡と深い褥瘡に分けられます。浅い褥瘡は現在では2-3週間で治癒することが殆どになりましたが、脂肪組織や腱や骨まで達するような深い褥瘡は現在においても容易には治癒しません。
深い褥瘡では真皮や皮下脂肪組織が元通りになって治癒するわけでなく、肉芽組織(にくげそしき)と呼ばれる赤い組織が増えることで創の穴埋めをして治癒に至ります(写真)。
褥瘡の外用薬物療法の重要性
深い褥瘡では肉芽組織が増えることによって治癒するため、この組織を大切に育てるような治療が必要です。
肉芽組織は正常の皮膚組織より柔らかく、傷つきやすいために大切に扱わなくてはいけません。また水分を調節する皮膚の外側の層(表皮)がないわけですから、水分の調節が重要です。そのためには肉芽組織に直接触れる外用剤(いわゆる軟膏)や創傷被覆剤の選択がとても大切です。
外用剤は、中に溶けている薬効のある成分(主剤と呼ぶ)とそれを溶かしている基剤と呼ばれるものから成り立ちます。
基剤の違いは簡単にいいますと手にとって触れてみた感触です。軟膏を触った時の水っぽい、べたべたしている、さらさらしているなどの違いはこの基剤の違いによるものです。
皮膚の外側の層である表皮がある場合には問題になりにくく、基剤の違いは、表皮がなく水分調節に敏感な肉芽組織においては重要な要素になります。すなわち基剤の性質は治癒に重要な環境を整えるための重要な水分調節能を持つことになります。近年では創傷被覆材という材料が使われますが、外用剤に比べて効果は十分とはいえません。
これらの外用剤の正しい選択は創の正確な観察と、薬剤に関する知識をもとにおこなわれます。
医師は褥瘡と診断するだけでなく、外力が適切に除去されているか、感染の合併はどうか、さらに肉芽組織の状態はどうかを診断します。そして外用剤に関して知識と経験をもつ薬剤師と相談して適切な外用薬物療法をおこないます。時には薬剤を効果的に作用させるために、悪い組織を除去することやポケット状になった部分を切除することが必要になります。
高齢者の褥瘡で大掛かりな手術治療が容易におこなえることはまれですので、褥瘡に対する外用薬物治療は最も重要と考えられています。
参考文献
- 日本褥瘡学会編集:褥瘡対策の指針:照林社、東京、2002、5-26
- 磯貝善蔵:褥瘡の病態と分類。調剤と情報 13,10-14,2007
- 古田勝経:褥瘡外用療法のヒミツ;薬局別冊、南山堂、東京、2006、25-38