自分たちの地域を創る、支え合う、守る!
公開日:2022年6月23日 09時00分
更新日:2024年8月13日 16時39分
飯島 勝矢(いいじま かつや)
東京大学高齢社会総合研究機構機構長
東京大学未来ビジョン研究センター教授
こちらの記事は下記より転載しました。
世界に例のない少子高齢化が進んでいる中で、急激な人口構成の変化に対応し、医療・介護を含む社会保障、居住環境、社会的インフラ、就業形態、そして住民同士のつながり(自助・互助も含む)をはじめとした「地域コミュニティのあり方」を再考し、社会システム全体を組み替える必要性が目前に迫っている。
「長生きを喜べる長寿社会」の実現に向けて、わが国は大きな分岐点に立っている。行政下の公的財源だけによるヘルスケア施策にはある程度の限界も来ており、住民活力を中心とした自助・互助の地域づくりを再構築する必要がある。そのためには、住民自身への再認識を促し、モデル性の高い主体的な住民活動の風土づくりも必要であり、産学官民協働によるパラダイム転換も求められる。
また、経済活動・地域活動への参加を促すことによって高齢者も「社会の支え手」とする新しい社会システムを追い求めたい。これらを具体的に推進するためには、個々の高齢者の課題でもあると同時に、その手前の世代にも当てはまる話なのかもしれない。さらには、すべての住民を抱えたコミュニティそのものが抱えている大きな課題と言っても過言ではない。
その意味では、1人ひとりの「個」に対して何を改めて伝え、意識変容や行動変容に移っていただくのか、そして同時に、住民が生活している各自治体およびその地域において、いわゆる「受け皿」として多様な選択肢が存在するまちづくりをどう具現化していくのか、そのまちづくりを産学官民協働によりどうリデザインしていくのか、まだまだ課題は山積している。
これらを実現していくにあたり、特に高齢期における活躍しながら輝ける場、たとえ弱っても地域とつながり続けられる場、お互いに支え合える地域内の関係性、自己実現(生きがい)にもつながる地域なども必要である。わが国が新たなステージに入るために、新旧のエビデンスを十分踏まえたうえで、「まちぐるみでの包括的アプローチ」をいかに有効的に持続可能な形で達成するのかが鍵になるのであろう。それらを実現し各地域に根づくことができれば、最終的にはわれわれが追い求める「長生きを喜べる長寿社会」につながると確信している。
筆者
- 飯島 勝矢(いいじま かつや)
- 東京大学高齢社会総合研究機構機構長
東京大学未来ビジョン研究センター教授 - 略歴
- 1990年 東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、1997年 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座助手・同講師、2002年 米国スタンフォード大学医学部研究員、2005年 東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座講師、2011年 東京大学高齢社会総合研究機構准教授、2016年 東京大学高齢社会総合研究機構教授、2020年より現職
- 専門分野
- 老年医学、高齢者医療、総合老年学(ジェロントロジー)
- 過去の掲載記事
転載元
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