メディカルグリッド
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 18時26分
コンピュータを利用した画像診断医療の進歩
コンピュータやインターネットが家庭にも普及する時代になり、身近な家電製品や文房具のように使われています。
医療の分野でも、多くの医療器機にコンピュータが組みこまれて、診断や治療の高精度化や安全管理に役立っています。その中でも、特にコンピュータが活躍する分野が、CTやMRI、超音波などを中心とした画像医療の分野です。
近年では、画像診断装置が進歩し体の内部を1ミリ以下の分解能で3次元的に映像化できるようになりましたが、精度が上昇した分、さまざまな画像を作り出すためにコンピュータが行う計算の量が非常に大きくなりました。特に、MRIを使って脳の働きを調べる検査(fMRI)(リンク1、2参照)では、撮影して得られた何千枚もの画像を元にして複雑な計算を行いますので、これまでの方法では脳が活動している様子を映像化する(脳機能マップ)ために、数十分以上かかりました。
脳の働きを映像として捉えて(可視化)、実際の診療に役立てるためには、もっと早く脳機能マップを取りだせるようにする必要があります。
グリッド計算技術を応用した脳機能診断システム「メディカルグリッド」
その解決方法として、国立長寿医療研究センターではグリッド計算技術を応用した脳機能診断システムが開発されています。
グリッドとは英語で「格子」という意味ですが、あたかも格子のように多数のコンピュータをつなげ、ひとつの大きなコンピュータのように活用する新しい技術で、特に複雑な計算が一瞬にして出来る能力を備えています。このようなグリッド技術を用いれば、コンセントにプラグを差せばいつでも電気が使えるのと同じように、いつでもどこでも、即座に高精度の脳機能診断ができるようになります。
このような診療システムを「メディカルグリッド」と呼びます。(図)
脳の働きは非常に複雑ですので、どのような画像計算の方法を行って脳機能マップを作るかによって、脳の働きの何が見えてくるかが少しずつ変わってきます。
メディカルグリッドにより、さまざまな画像計算方法で同時に調べれば、脳の働きについてより正確な判断が即時にできます。さらには、fMRIだけでなく、脳磁図や脳波の検査データと組み合わせて、これまでの方法では分からなかった脳活動について知ることが出来るかもしれません。
このようなグリッド計算技術によって、医療経費を削減することも可能となります。コンピュータの技術は日夜進歩していますから、たびたび新しいシステムとソフトウェアに交換しなければなりません。しかし、メディカルグリッドを使えれば、計算拠点のシステムだけを更新すればよいので、非常に経済的です。
高齢化社会において、認知症の早期診断が大変重要な課題になっていますが、メディカルグリッドを応用した脳活動の検査はこれに大いに役立てられるはずです。