磁気共鳴機能画像法(fMRI)の仕組み
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 18時26分
磁気共鳴機能画像法とは
磁気共鳴機能画像法(functional magnetic resonance imaging, fMRI)は、MRI装置を使って無害に脳活動を調べる方法です。
MRI装置には磁石の強い力(磁場)が働いていて、中に入った人の頭や体にごく弱い電磁波を当てる仕組みになっています。返ってきた信号を計算することによって、全く人を傷つけないで断面の画像を撮影することが可能です。このMRIでどうして脳活動を調べることができるのか説明します(リンク1参照)。
脳の仕組み
まず、脳の仕組みについて簡単に説明します。脳の表面はいくつもの小さな場所に分けることができます。その中で、例えば「運動野」と呼ばれる場所は手足など体を動かす働きを担当しています。
運動野にもいくつかありますが、「中心溝(ちゅうしんこう)」と呼ばれるシワのすぐ前側には「一次運動野」と呼ばれる場所があり、この場所が侵されると、手足が麻痺してしまうことがあります。脳外科の手術のときには、ここを傷つけないように気をつける必要があります。
ヘモグロビンとMRI信号
さて、私たちの体の血液の中にはヘモグロビンと呼ばれる物質があり、酸素を運ぶ役割を果たしています。酸素を手放した後のヘモグロビンは「脱酸素ヘモグロビン」と呼ばれ、ごく弱い磁石のような性質(磁性)をもっています。この性質のため、MRIの磁場はわずかに乱されて、信号は弱められて返っていきます。
しかし神経細胞が活動すると、その神経細胞に酸素を供給するために、酸素と結びついた「酸素ヘモグロビン」が流入してきます。そのため、磁場を乱していた脱酸素ヘモグロビンが少なくなって、弱められていたMRI信号の強さが回復して強くなります。(図2)
fMRIではこの自然に備わっている仕組みを利用します。手足を動かしているときには一次運動野が働いているので、そこへ酸素ヘモグロビンが流れ込み、MRI信号が強くなります。そこで、たとえば手を握ったりひらいたりしているときのMRI信号と、何もしていないときのMRI信号を比較すれば、一次運動野がどこにあるのか写真のように画像の上に示すことができるのです。
このfMRI検査の原理は日本人物理学者の小川誠二博士が確立しました。そのため小川博士は「fMRIの父」と呼ばれて尊敬されています。