老老介護・認認介護とは
公開日:2019年1月10日 13時49分
更新日:2022年3月22日 10時11分
老老介護・認認介護とは1)2)
老老介護とは、高齢者の介護を高齢者が行うことです。主に65歳以上の高齢の夫婦や親子、兄弟などのどちらかが介護者であり、もう一方が介護される側となるケースを指します。認認介護も同様に、高齢の認知症患者の介護を認知症である高齢の家族が行うことです。
日本は、老年人口と呼ばれる65歳以上の高齢者の割合が25%を超え、4人に1人が高齢者という時代になりました。それに伴い、要介護者は増加し、老老介護・認認介護も増加しています。介護する側の深刻な実態が浮き彫りになっています。
老老介護の実態1)
2016年国民生活基礎調査の結果から、「要介護者等と同居の主な介護者の年齢組合せ別の割合」を見ると、2001年は、65歳以上同士の場合は40.6%、75歳以上同士の場合は18.7%だったのに対し、2016年には、65歳以上同士が54.7%、75歳以上同士が30.2%となっています(図1、表1)。今後も老々介護の割合は増加していくことが予想されます。
年 | 60歳以上同士(%) | 65歳以上同士(%) | 75歳以上同士(%) |
---|---|---|---|
2001年 | 54.4 | 40.6 | 18.7 |
2004年 | 58.1 | 41.1 | 19.6 |
2007年 | 58.9 | 47.6 | 24.9 |
2010年 | 62.7 | 45.9 | 25.5 |
2013年 | 69.0 | 51.2 | 29.0 |
2016年 | 70.3 | 54.7 | 30.2 |
介護者の状況
図2、表2からも分かるように、主な介護者(配偶者、子、子の配偶者、父母、その他親族)は、要介護者等と「同居」しており、その割合は 58.6%で最も多くなっています。次に 要介護者と別居している「事業者」が 13.0%となっています。 要介護者側からみた同居の主な介護者の続柄は、「配偶者」が 25.2%で最も多く、次に「子」が 21.8%、「子の配偶者」が 9.7%となっています。
介護者 | 構成割合(%) |
---|---|
配偶者 | 25.2 |
子 | 21.8 |
子の配偶者 | 9.7 |
父母 | 0.6 |
その他親族 | 1.3 |
別居の家族等 | 12.2 |
事業者 | 13.0 |
その他 | 1.0 |
不詳 | 15.2 |
また、「同居」の主な介護者を性別でみると、男34.0%、女66.0%で女性がが多くなっています(図3、表3)。
また、年齢階級別にみると、男女とも「60~69歳」が28.5%、33.1%と最も多くなっています(図4、表4)。
性別 | 割合 |
---|---|
男 | 34% |
女 | 66% |
年齢階級別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
40歳未満 | 1.7 | 1.8 |
40~49歳 | 6.9 | 7.0 |
50~59歳 | 21.3 | 21.1 |
60~69歳 | 28.5 | 33.1 |
70~79歳 | 16.9 | 25.1 |
80歳以上 | 24.7 | 11.7 |
不詳 | 0 | 0.1 |
老老介護・認認介護の問題1)2)
介護が必要になった時、他人よりも身内に介護をしてもらえることは、介護される側にとって安心でメリットがあるようにも思いますが、問題点もあります。2016年国民生活基礎調査によると、要介護者のいる世帯は、「核家族世帯」が37.9%で最も多く、次に「単独世帯」が 29.0%、「その他の世帯」が18.3%となっています。年次推移をみると、「単独世帯」と「核家族世帯」の割合は上昇傾向であり、「三世代世帯」の割合が低下しています。
その影響から「老老介護」「認認介護」「親子介護」等の問題が、年々深刻化してきています。介護者が高齢ともなると、さらに体力的、精神的負担が大きく、介護者の体力が心配されます。共倒れの状態になることも考えられますし、外出の機会も少なくなり、外部からの刺激が得られないこと等からストレスを抱えてしまい、認知症になるリスクも高まります。
また、例えば夫婦間で、介護者が夫、介護される側が妻になった場合、「家事が困難」という問題が出てくることがあります。妻が要介護者となるまで家事のほとんどを妻にしてもらっていた男性が、突然、炊事、掃除、洗濯、ごみ出し、お金の管理等の用事をしなければならなくなるのです。介護以上に家事の困難さを訴える人が多いというのも、男性介護者の特徴の1つとなっています。
なぜ入浴・排泄・食事介助や移動介助等よりも、家事が困難となるのでしょうか。それはまず、介護保険制度の充実により、介護に関する作業はヘルパーなどの支援を受けることができ、介護者がすべてを行う必要がないからです。入浴や食事、排泄など、介護者一人では負担の大きい作業をデイサービスや訪問介護等の介護サービスを利用しながらこなすことができるようになってきたのです。しかし、家事はそうではありません。ほとんどすべてを、介護者ひとりがこなさなければならないのです。
老老介護・認認介護の原因
なぜ老老介護・認認介護という状況が増えているのでしょうか。高齢化や核家族化が要因であることはいうまでもありませんが、健康寿命にもその要因はあるようです。
平均寿命と健康寿命の延伸
平均寿命が延びていることにより、介護が必要な期間も長くなっています。厚生労働省によると、日常生活が自立している期間である健康寿命も増加の傾向がみられますが、令和元年(2019年)の日本人の平均寿命は、男性81.41年、女性87.45年に対し、健康寿命は、男性72.68年、女性75.38年と、介護が必要となる期間は男性8.73年、女性12.06年になります3)。
また、内閣府の令和元年(2019年)高齢社会白書の平均寿命の将来推計では、今後も、男女とも平均寿命は延び、令和47(2065)年には、男性84.95年、女性91.35年となり、女性は90年を超えると見込まれています。つまり、親の介護が始まったときには子供が高齢期を迎え、老老介護、認認介護の状況になる可能性があります4)。
現行の介護保険制度は「強い」介護者をモデルとしている2)
また、老々介護・認認介護が問題となる原因としては、介護保険制度が想定している介護者が、介護の実状と合っていないということも挙げられます。
想定されている、同居嫁など、同居して介護者となる家族というのは、若くて体力があって、家事も介護もできて、介護に専念できる時間もある、という介護者としてとても「強い」介護者です。これが、家事援助など「軽易」なサービスは不要じゃないか、という発想につながっています。しかし、高齢化により同居嫁の立場も高齢化しており、老老介護が一般化している現在、そのような介護モデルでは適切な介護サービスを行うことが難しくなってきています。
単身や、高齢者のみの世帯にとっては、現在の介護保険サービスだけでなく、配食や見守りといった生活支援サービスが必要となっています。そういったサービスと介護保険サービスを組み合わせることができれば、老老介護・認認介護の問題は軽減されるのではないでしょうか。