有料老人ホームとは
公開日:2019年2月12日 09時30分
更新日:2019年6月28日 11時43分
有料老人ホームとは1)
有料老人ホームとは、食事の提供、介護(入浴・排泄など)の提供、洗濯・掃除等の家事の供与、健康管理のうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供している施設とされています。介護保険制度における「特定施設入居者生活介護」として、介護保険の給付の対象となっています。設置に当たっては、都道府県知事へ届出を行うこととされている民間施設で、サービス費用および入居にかかるすべての費用が有料となる高齢者向け住宅です。
年々、有料老人ホームは増えています。急増要因としては、介護保険制度の創設により民間事業者による運営がしやすくなったこと、定員要件の廃止、対象サービスの増加、高齢者向け住まいのニーズの拡大などが挙げられます。
有料老人ホームは、生活が自立している方を対象にする施設や、介護が必要になった方だけを対象にする施設など、それぞれの施設の方針によって対象者が決まっています。
有料老人ホームを選ぶ3つの要素
有料老人ホームは入居者の要望に合わせて、介護サービスはもちろん、生活スタイルなどの質にこだわったり、費用も含めて実にさまざまな形態があります。有料老人ホームを選ぶに当たり、有料老人ホームの種類、権利形態、入居条件の3つの要素を検討する必要があります。
有料老人ホームの種類
有料老人ホームの種類は「介護付有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「健康型有料老人ホーム」の3つの類型に分けられます。
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームは、都道府県から「特定施設入所者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームで、介護サービスの提供を義務付けられています。要介護者3人に対して、介護スタッフが1人以上配置されています。
介護付有料老人ホームは、「一般型特定施設入所者生活介護」(一般型)と「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」(外部サービス利用型)に分かれています。
「一般型」は、ホームのスタッフが「特定施設入居者生活介護」によりサービスを行います。24時間体制で、必要な介護を受けられます。費用も介護度別による定額制なので安心です2)。
一方、「外部サービス利用型」は、生活相談、ケアプランの作成や安否確認などはホームのケアマネージャーやスタッフが行い、実際の介護サービスは外部の事業者(訪問介護事業者、訪問看護事業者、通所介護事業者等)がケアプランに応じた介護サービスを行います。外部サービス利用の場合、外部委託部分が利用した分だけ料金がかかります2)。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、施設によってサービス内容は異なりますが、食事や環境整備等の生活援助サービスを提供する高齢者向けの施設です。介護サービスが必要な要介護者は、自身の選択により地域の訪問介護や訪問看護、デイサービス等の外部介護サービスを利用しながら生活することになります。認知症の方も対応してくれます。
多くの場合は、同法人内に介護サービス事業所が併用されており、入居者が必要な介護サービスを自由に選択することができます。利用したサービスごとに費用を支払うので、要介護度が重くなると費用が高額になる場合があります。介護保険の区分支給限度基準額を超えることもあります。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、食事等の生活援助のサービスを提供する施設です。健康で自立して生活できる方が対象で、介護が必要になった場合は契約を解除して退去しなければなりません。
有料老人ホームの契約形態
高齢者住宅・施設の契約に基づく居住権には様々なものがあります。契約形態により、入居者の権利や義務が異なるため、予め理解しておく必要があります。
利用権方式
利用権方式とは、居室や共用設備等を利用する権利を得る契約で、居住部分と介護や生活支援等のサービス部分の利用契約が一体になっているものです。大半の有料老人ホームで採用されています。利用権方式は、施設と入居者本人の契約であり、入居者が死亡した場合、利用権は終了します。
終身建物賃貸借方式
終身建物賃貸借方式とは、建物賃貸借契約の特別な類型で、事業者は高齢者の居住の安定確保に関する法律の規定に基づいた終身建物賃貸借事業の認可を都道府県知事から受ける必要があります。終身にわたり居住することができ、入居者の死亡をもって契約が終了となります。
建物賃貸方式
建物賃貸方式とは、一般の賃貸住宅と同じように毎月の家賃、管理費、水道光熱費などの相当額を支払う方式です。居住部分と介護等のサービス部分の契約が別々になっているものです。賃貸料の支払いが続くかぎり、利用する権利は続きます。終身建物賃貸借方式とは異なり、入居者の死亡によって契約が終了するということはありません。
有料老人ホームの入居条件
有料老人ホームへ入居する時の介護の状態が基本的に決められています。多くの施設では、概ね60歳、または65歳以上が一般的です。ただし、60歳以下でも入居可能なケースもありますので、検討している施設に問い合わせしてみるとよいでしょう。
介護付き有料老人ホームの入居条件
介護付有料老人ホームは、要介護をもたない高齢者でも入居することができます。介護が必要になった場合には、施設の介護サービスを受けることができるため、安心して生活することができます。
住宅型有料老人ホームの入居条件
住宅型有料老人ホームは、60歳以上、または65歳以上で介護認定を持たない自立の方から要支援・要介護の人まで幅広く受け入れをしています。胃瘻や点滴など医療依存度の高い方や、認知症の方でも入居できる施設も多いため、施設やケアマネージャー、市町村などに相談して確認していく必要があります。
健康型有料老人ホームの入居条件
健康型有料老人ホームは、基本的に60歳以上の方で自立した生活ができる人を対象としているところが多いです。施設によって65歳以上、70歳以上としている施設もあります。
介護保険サービスの利用
施設が「特定施設入居者生活介護」(要介護者を対象)、「介護予防特定施設入居者生活介護」(要支援者を対象)の指定を受けている場合は、入浴、排せつ、食事等の介護等の日常生活上の世話、機能訓練等の介護サービスの費用は介護保険から給付されることになります。また、これらの指定を受けていない場合であっても、個別にケアマネジャーを通じて介護保険によるサービスを利用することができます。
有料老人ホームの費用負担3)
有料老人ホームの利用者の負担は、入居金(前払金)と月額費用があります。選ぶホームのサービス内容、設備、職員体制、立地条件などにより金額は異なります。前払金が0円のところもあれば、数千万円のところもあります。賃料を基準にして算出されるため、首都圏・都心部では高額になるケースが多く見られます。
有料老人ホームの入居金(前払金)には、償却期間が定められており、償却期間が終了する以前に本人が退去した場合は、未償却部分が返還される仕組みとなっています。償却期間や方法はホームによって様々です。
また、有料老人ホームには、クーリングオフ制度が設けられており、入居して3ヵ月以内に何らかの理由で退去する場合は、前払金の全額が返還されます。
有料老人ホームの決め方 4)
有料老人ホームの入所に至るまでのステップには大きく3つ、「事前の調査」、「実地見学」、「契約」があります。
まず事前の調査は、施設のホームページやパンフレット等から、運営方針、スタッフの人数、入居者数、入所費用などを調べましょう。不明な点は問い合わせをするか、事前に施設と連絡をとり、施設を見学させてもらうとよいでしょう。
最寄りの施設の検索は、一般社団法人高齢者住宅協会の「サービス付高齢者向け住宅情報提供システム」があります(リンク)。
リンク:サービス付高齢者向け住宅情報提供システム(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
次に実地見学は、有料老人ホームの場合、体験入居も可能となっています。実地見学におけるチェックポイントとしては、居室は住みやすそうか、食事は美味しそうか、入居者の状況はどうか、介護スタッフは足りているか、施設の立地条件はよいか、料金・サービス内容は希望通りか、介護が必要となった場合はどこで介護を受けるのか、その費用はどうか等、十分確認し失敗のないように選びましょう。
参考文献
- 一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会著:高齢者住まいアドバイザー検定R公式テキスト, 第2版, ブックウェイ, 兵庫県,2018年, P189
- 牛越 博文 (監修):図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本(介護ライブラリー). 初版. 講談社. 2018年, P108