サービス付き高齢者向け住宅とは
公開日:2019年2月12日 09時00分
更新日:2022年2月 9日 14時13分
高齢者住まい法1)
2011年5月に改正された「高齢者住まい法(高齢者の住居の安定確保に関する法律)」では、居住空間だけではなく、一定のサービスも提供する高齢者住宅を整備するという方針が立てられました。具体的には、これまでの高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)制度を廃止し、サービス付き高齢者向け住宅の登録制度(※有料老人ホームも登録可)が創設されました。
サービス付き高齢者向け住宅とは2)
サービス付き高齢者向け住宅とは、「高齢者住まい法」の改正により創設されたもので、2011年から登録がスタートしました。サービス付き高齢者向け住宅は、介護・医療と連携し、高齢者の住まいの安定を確保するため、バリアフリー構造となっています。高齢者単身または高齢夫婦世帯が安心して居住できる賃貸等の住宅です。略して「サ高住(さこうじゅう)」と呼ばれていることが多いです。
これは、国土交通省と厚生労働省が連携して、高齢者の住まいの安心を確保する取り組みが強化されて始まった制度です。「サービス付き高齢者向け住宅」には、介護保険と連携し、日常生活や介護に不安を抱く「高齢単身または高齢夫婦のみ世帯」が、住み慣れた地域で安心して暮らすことができるように、という目的があります。
サービス付き高齢者向け住宅は、株式会社・医療法人・社会福祉法人など様々な法人や会社が創設しています。高齢化に伴い需要が高まっていることから年々増加傾向にあります。
新たに創設された制度に一本化された背景とは
新たに創設された「サービス付き高齢者向け住宅」の制度に一本化された背景は、各施設の所管の窓口が分かりづらかったこと、また、既存3施設に対する床面積やバリアフリー化などの問題点が指摘されていた点等が挙げられます。創設されたサービス付き高齢者向け住宅は、これらの問題点が改善されたものです。
サービス付き高齢者向け住宅登録制度の概要3)
登録対象
賃貸住宅もしくは有料老人ホームが基準を満たして都道府県に登録することになります。
登録基準
サービス付き高齢者向け住宅として登録された施設は、以下の規模や設備、サービス等に関する基準を満たしていることになります。
規模・設備の基準
- サービス付き高齢者向け住宅の居室面積は原則25㎡以上であること。ただし、居間、食堂、台所その他共同利用スペースに十分な面積を有する場合は、18㎡以上。
- 各専用部分に台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室が設置されていること。
- 廊下幅、段差解消、手すり設置等でバリアフリー構造であること。
登録事業者の義務
- 提供するサービス等の登録事項の情報開示
- 入居者に対する契約前の説明
- 誇大広告の禁止
行政による指導監督
住宅管理や生活支援サービス付きに関する行政の指導監督(報告徴収、立入検査、改善命令等)が行われる。
サービスに関する基準
サービス付き高齢者向け住宅は、全ての施設でケアの専門家が日中建物に常駐し、少なくとも状況把握と生活相談サービスを提供します。
また、食事の提供、清掃や洗濯の家事援助や緊急通報及び安否確認サービス等も行います。
基本的には、身体介護が必須ではありません。必要な場合は、外部の事業所からの派遣で、身体介護を受けることができます。しかし、8割の施設では介護サービス事業所を併設しているため、訪問介護や通所介護などを施設にいながら受けることができます。
また、サービス付き高齢者向け住宅の人員基準は以下のいずれかの者が日中常駐していることが基準となります。
- 社会福祉法人・医療法人・指定居宅介護サービス事業者の職員
- 医師
- 看護師
- 介護福祉士
- 介護支援専門員
- ヘルパー2級以上の資格を有する者
契約に関する基準
- 賃貸借契約等の居住の安定が図られた契約であること。
- 前払い家賃などの返還ルール及び保全措置が講じられていること。
- 敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと。
サービス付き高齢者向け住宅の入居基準4)
サービス付き高齢者向け住宅の入居基準は60歳以上の高齢者、または要介護(要支援)認定を受けている40歳以上の方が対象となります。
サービス付き高齢者向け住宅のサービス内容4)5)
状況把握(安全確認)サービス
定期的な居室への訪問やセンサー設置により見守りなど、安否確認のタイミングや方法は事業所によって様々です。
生活相談サービス
「電球を取り換えて欲しい」などの困りごとや、サービスの相談・手配、家族への連絡代行など、生活全般のサポートをします。
この他、食事の提供、入浴等の介護、調理等の家事、健康の維持増進などのサービスが提供されています。一般社団法人高齢者住宅推進機構が取りまとめた調査結果によると、2017年8月末の時点では、状況把握や生活相談サービスは100%、食事の提供も95.9%の施設で行われているようです3)。
サービス付き高齢者向け住宅の費用負担6)
サービス付き高齢者向け住宅は、初期費用(敷金・礼金など)と月額費用がかかります。
2017度に株式会社野村総合研究所が行った実態調査によると、「一般型」のサービス付き高齢者向け住宅の平均利用料金総額(家賃、共益費、基本サービス相当額、食費、水道光熱費)※1は約14万円(そのうち家賃は約6万円)となっています7)。
「介護型」のサービス付き高齢者向け住宅においては、費用が高くなる傾向があるようです。「一般型」と比較すると、家賃相当額も含めて合計10万円以上の違いがあります。
※1 利用料金総額は、月払いの利用料金および入居時費用を、償却期間をもとに月額換算して加えて算出。
サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用(2015年4月から)8)9)
住所地特例とは
介護保険は、市区町村が保険者となり、制度が運営されています。介護保険制度は、原則として「居住している市区町村を保険者」として介護保険に加入する仕組みとなります。
しかし、介護保険の施設入所者を一律に施設所在地の市区町村の被保険者にしてしまうと、介護保険施設が集中している市区町村の介護保険給付金が増加してしまい、介護保険施設が少ない市区町村との間に不均衡が生じてしまいます。こういった状況を解消するために作られたのが、「住所地特例」の制度です。つまり、特例として住所地特例対象施設※2に入所する場合は、住民票を移しても、移す前の市区町村が引き続き保険者となります。
- ※2 住所地特例対象施設:
- 住所地特例対象施設とは、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホームのことです。
今までは、賃貸借方式のサービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームに該当しても住所地特例の対象外でしたが、所在市町村の負担及びその他の有料老人ホームとの均衡を考慮し、住所地特例の対象となりました。
参考文献
- 一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会著:高齢者住まいアドバイザー検定R公式テキスト, 第2版, ブックウェイ, 兵庫県,2018年, P174,P175