虚血性心疾患のケア
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年5月29日 09時51分
日本人の死因第2位の心疾患
厚生労働省の平成27年度人口動態調査によると、日本人の死因の第2位が「心疾患」となっており、その多くが急性心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患によるものとされています。虚血性心疾患の中でも特に生命に直結するリスクが高いのが「急性心筋梗塞」です。全部で4つある虚血性心疾患のうち、急性心筋梗塞だけで1年間に死者は3万7,222人、他の3疾患の合計で3万4,451人となっています。
また、急性心筋梗塞を発症した患者さんのうち、13%の方が病院への搬送途中に死亡しており、発症から30日以内の院内死亡率は6~7%となっています。
よって、虚血性心疾患の既往がある場合には、「急性心筋梗塞を発症しない」ことが大切となります。
心疾患全体の患者数
こうしてみると、「虚血性心疾患の発症=死に直結してしまう」というイメージをもってしまいがちですが、厚生労働省の平成26年度患者調査の概況において、心疾患を抱えている患者さんの数は172万9000人と推測されています。
この調査結果から、心疾患と上手に付き合いながら生活されている方も一定数いらっしゃる、ということがいえます。
虚血性心疾患の予後を左右する治療開始までの時間とは
虚血性心疾患、特に急性心筋梗塞の場合、重要となるのが「いかに迅速に治療を開始できるか」という点です。一般的に、急性心筋梗塞を発症後、90分以内に再還流治療(血行再建術)を行うことが理想とされています。発症後いかに早く医療機関を受診できるかが、予後を大きく左右するのです。
虚血性心疾患の看護・ケア
虚血性心疾患を発症した方にとって、一番重要となるのが「いかに再発を防ぐか」という点です。再発を予防、あるいは再発時にあたって注意したいポイントをまとめてみました。
冠動脈の狭窄部の治療を検討する
狭心症を起こしている場合、冠動脈の一部が狭窄あるいは閉塞しやすい状態であるということが言えます。今後さらに症状が悪化して急性心筋梗塞を発症する前に、主治医とよく相談をして、狭窄あるいは閉塞している部分に対して再灌流療法を行うことを検討します。
生活習慣の改善を心がける
虚血性心疾患を発症したということは、今回発症した部分以外の血管も狭窄かあるいは閉塞してしまっている可能性があります。そのため、今までの生活習慣を見直し、これ以上血管を詰まらせないための対策を取る必要があります。
具体的な改善ポイントとして、以下があげられます。
虚血性心疾患の食事のポイント
医師から指示された摂取カロリーおよび塩分制限を守り、1日3食、バランスの良い食事を心がけます。特に糖尿病、脂質異常症の持病がある方は、カロリーや糖分、脂質の量に注意します。BMIが25以上の肥満である場合には、体に負荷をかけない程度のダイエットを行うことも大切となります。
虚血性心疾患の運動のポイント
生活習慣の改善としてよくあげられる「運動」ですが、運動は過度に行うことで心臓の負担を増やし、かえって再発を促してしまう可能性があります。そのため、運動を生活に取り入れる場合には必ず事前に主治医に相談をし、体に負荷をかけない程度の運動量を事前に把握しておく必要があります。
症状が増悪したらすぐに医療機関を受診する
狭心症の症状がしばらく安定していたにも関わらず、突然増悪した場合や、発作時に使用する薬を使っても症状が改善しない場合には、狭心症ではなく急性心筋梗塞を発症していることが考えられます。
目安として、普段は数分で収まる症状が15分以上継続し、収まらない場合には急性心筋梗塞を疑います。急性心筋梗塞は発症後いかに早く医療機関を受診し、適切な処置を受けるかによって予後が大きく変動します。そのため、「症状が増悪したらすぐに医療機関を受診する」ということは、常に意識しておきましょう。
また、症状の増悪によって患者さん本人が対応できなくなることも考えられるため、周囲の方も「増悪する危険性がある」ということを把握し、対処方法や医療機関へすぐに搬送できる体制を整えておくことも、大切です。